役員便り
先進的な授業改革の取組
理事・副学長 新田 孝彦 (にった たかひこ)
全学的な教育制度改革
本学ではこれまで,授業科目群ごとに統一した成績評価基準の作成と成績分布の公表,GPA(Grade Point Average)制度と履修登録単位数の上限設定,偏った成績分布を示した授業に関する是正策,成績評価に対する異議申し立て制度など,全国の大学に先駆けた教育制度改革を数多く実施してきました。今年度からは,すべての教育課程においてカリキュラムポリシーを作成し,それに基づいた授業科目の階層化(ナンバリング)を実現することで,カリキュラムを可視化し,学生の計画的な学修に役立てるとともに,カリキュラムを不断に見直すPDCAサイクルを回していきます。さらに,学生の国際的流動性を高める方策として,来年度の学部入学者から国際的な標準に合わせてグレードを細分化した新GPA制度を導入し,平成28年度からはそれぞれの教育課程の特質に応じた4学期制も実施することにしています。
制度改革から授業改革へ
しかし,こうした教育制度改革も,個々の授業の質の向上に結びつかなければほとんど意味がありません。現在,授業改革に関する世界の潮流は,「アクティブ・ラーニング」や「反転授業」すなわち「ティーチングからラーニングへ」の方向に進んでいます。これは,大学卒業者に求められる能力や資質が変化し,身につけた知識を利用しつつ,様々な課題を解決するために応用し,あるいは自ら知識を獲得する習慣と技法を身につけることがより重視されるようになったことに対応しています。
本学では,こうした流れに即応し,個々の授業の方略を転換させる一つの方策として,本年度,オープンエデュケーションセンター(OEC)を設置しました。これまでも,オープンコースウェア(OCW)において授業や公開講座の映像資料などを公開し,非常に多くの利用者を獲得してきましたが,授業に活用されることはまれでした。OECでは,「現在進行形のオープン・エデュケーション・リソース」をモットーに,実際に授業に使うための教材開発を支援します。オープン教材を利用して学生が予習をし,教室では教員と学生あるいは学生同士が議論し,問題解決に挑むという,学生主体のラーニングへと転換させるのが狙いです。
将来的には,ここで開発された教材はMOOC(大規模オープン・オンライン講座)として発信し,広く世界から優秀な学生を集めることにも役立つと期待されます。すでに本学では,世界各国でオープンコースウェアを公開する大学が加盟するオープン・エデュケーション・コンソーシアムからの依頼により,工学研究院の先生方が道内教養教育連携実施事業のために作成した教材を,マサチューセッツ工科大学とハーバード大学が設立したedXという国際的なMOOCコンソーシアム上で発信することが決まっています。
道内教養教育連携実施事業
ICTを活用した授業改革の影響は,本学だけにとどまりません。昨年度,道内の国立大学が連携して教養教育を実施する北海道地区国立大学連携教育機構が設立され,2月に締結された単位互換協定に基づいて,この第2学期から,各大学から提供された22科目が他大学に配信されます。遠隔授業システムを利用した授業は,対面授業とは違ったやり方が求められます。担当される先生方には大変なご苦労をおかけしますが,来年度以降は提供数を100科目以上に拡大する予定です。より多くの先生方が参加し,授業改革に積極的に取り組んでくださることを期待しています。
教育改革室では,学生が生き生きと目を輝かせて参加する授業を全学的に作り上げることを目指して,今後も様々な努力を重ねていきます。