北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーションは,平成24年7月に,文部科学省教育関係共同利用拠点(「フィールドを使った森林環境と生態系保全に関する実践的教育共同利用拠点」)に認定されました。この事業の目標の1つに,他大学演習林(山形大学・筑波大学・信州大学・高知大学・琉球大学)と連携ネットワークを結び,広域かつ多様な森林をカバーした教育プログラムの提供を掲げています。その取り組みの一環として,5大学と連携し,大学や学部・学年を問わず学生が参加できる合同実習「森林フィールド講座」を9月15日(月・祝)〜19日(金)に開催しました。
開催地は,北方生物圏フィールド科学センター和歌山研究林で,全国から18名の学生が参加しました。実習では,南紀熊野地方の森林の特徴とそれを活用するための林業技術,地元集落のくらしなどについて学ぶことを目的としました。基本的には,(1)フィールドで自然を学ぶパート,(2)林業を体験するパート,(3)地元集落のくらしについて学ぶパートの3つの要素を組み合わせ,その成果をグループワークに結びつけました。連携大学からも多くの教職員が参加し,夕食後の時間に各大学の演習林や研究を紹介しました。
フィールドで自然を学ぶパートでは,夜に散策しながらコウモリの声(超音波)を確認する調査,野生動物をトラッキングするための電波発信機を使用したフォックスハンティング,登山しながらの照葉樹林の観察,土壌や渓流の川底にいる生き物探し,森林内に建てられた高さ20mのジャングルジムに登っての高木の枝の調査など,様々なことを学びました。
林業を体験するパートでは,人工林の除伐・枝打ち・樹皮剥きなどの製材体験を行いました。除伐はチェンソーを使わずのこぎりのみで行いましたが,作業の大変さや倒れる木のダイナミックさから「最も印象に残った実習メニュー」として挙げる学生が多数いました。
地元集落のくらしについて学ぶパートでは,和歌山研究林のある平井集落の散策,特産品のゆずを使ったマーマレード作り,炭の製造工程体験を行いました。完成した炭は,性能実験も兼ねバーベキューに使用しました。
また,夕食後にはアカデミックワールドとして,連携大学教職員による研究紹介や演習林紹介を行い,フィールド研究や全国各地の森林植生及び特色について学びました。
最後にグループワークとして,班ごとにプレゼンテーションを行いました。プレゼンテーションは「私を熊野に連れてって」というタイトルで,自分の親しい人を熊野へ連れ出すために説得するという課題であり,各班とも寸劇を交えながらユーモラスな発表を行い,大いに盛り上がり,教職員にも好評でした。
参加学生のアンケートには,「全国の大学生との交流により価値観が広がった」「この経験により森林に関わる進路を選択したくなった」「期待以上の実習だった」など好意的な回答が数多く寄せられ,本講座は盛況のうちに終了しました。
なお,本講座は連携大学との合同で,毎年開催地を移動して行う実習シリーズです。来年度は琉球大学与那フィールドにて,全国大学演習林協議会による「公開森林実習」と同時開催の予定です。来年夏頃の開催を検討していますので,興味がある方は当事業のホームページをご覧ください。
◆ http://forest.fsc.hokudai.ac.jp/~kyoten/