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会計専門職大学院で日本内部監査協会と共催セミナーを開催

 会計専門職大学院(経済学研究科会計情報専攻)では,平成18年度から,一般社団法人日本内部監査協会と共同で,内部監査に関わるセミナーを開催しています。6月3日(水)には,日本内部監査協会の機関誌である「月刊監査研究」の創刊40周年を記念し,学術交流会館小講堂において第8回の共催セミナーを開催しました。
 「リスクマネジメントと内部監査」を全体テーマとし,自然災害や経済・社会環境の変化などに起因する“マクロ”なリスクはもちろん,顧客情報の流出,不正会計,従業員による横領などの“ミクロ”なリスクを含めて,組織におけるリスクマネジメントの有効性を確保するために,内部監査がいかに貢献し得るかについての議論が行われました。
 セミナーでは,第1部として,よつ葉乳業株式会社内部監査室の小山健介氏により,「リスク・プライオリティによりそう内部監査」と題する記念講演が行われました。小山氏は,内部監査に期待される役割はステークホルダーそれぞれに異なり,内部監査にはルール等に「より(一層)沿う監査」であるだけでなく,ステークホルダーの期待に「寄り添う監査」であることも求められているとの考えを示されました。
 第2部では,「内部監査はリスクマネジメントにいかに貢献すべきか?」というテーマの下で,パネル討論会が行われました。パネリストは,芹沢 清氏(中外製薬株式会社監査部長),佐藤正志氏(DCMホールディングス株式会社内部監査室内部監査参与),菊池進一氏(株式会社北海道銀行監査部上席検査役),並びに第1部の講演者でもある小山氏で,進行係は会計専門職大学院の蟹江 章教授が務めました。
 芹沢氏は,有効な「リスクマネジメント監査」が出来るように,内部監査部は,@経営者と特にリスクに対する意見交換をすること,A自社のリスクを知ること,B他社との意見交換や勉強会を通じリスクに敏感になることに常日頃から心がけるべきであると指摘されました。佐藤氏は,会社として地震や津波の発生を想定した対策を取っていたため,東日本大震災に際して,7店舗が浸水被害に遭い約20億円に及ぶ商品被害があったとはいえ,人的被害がなく比較的早期に営業を再開できたことを紹介され,企業にとっての最大の資産は従業員,最大の使命は事業継続であり,これらを護るためにリスクマネジメントが不可欠であると強調されました。菊池氏は,リスクは単独ではなく,幾つものカテゴリーに属するリスクが連鎖して組織にダメージを与えるため,内部監査部門では,@統合的にリスクが管理されているか,Aリスクが可視化されているか,Bリスクマネジメントが経営戦略と整合しているかについてモニタリングしていくことが必要であるとの見解を示されました。小山氏は,法や規準の改定,経営環境の変化,リスク認識の変遷などは絶えず続くものだが,経営者をはじめとするステークホルダーとのコミュニケーションによって,内部監査に対する期待やニーズをタイムリーに捉える努力が必要であるとの考えを述べられました。
 今回のセミナーには,内部監査の実務者や本学の学生など,120名を超える参加者があり,リスクマネジメントを支援するために,内部監査がいかに貢献すべきかについて考える良い機会となりました。
 会計専門職大学院では,今後もこうした催しを通じて,地域社会における会計・監査実務の発展に貢献していきたいと考えています。
小山氏の記念講演に耳をかたむける参加者

小山氏の記念講演に耳をかたむける参加者

パネル討論会の様子

パネル討論会の様子

(経済学研究科・経済学部)

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