訃報

名誉教授 長岡 新吉(ながおか しんきち) 氏(享年86歳)

長岡 新吉  氏  名誉教授 長岡新吉氏は,平成27年11月1日にご逝去されました。ここに,同氏の生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,昭和5年4月19日,岩手県盛岡市に生まれ,同28年3月東京大学経済学部卒業,同33年3月東京大学大学院社会科学研究科理論経済学・経済史学専攻博士課程単位取得退学,弘前大学文理学部講師,同助教授を経て,同38年4月北海道大学経済学部に初代学部長山口和雄教授の後任(日本経済史担当)助教授として着任,同45年教授に昇進されました。爾来,平成6年3月の退官まで,30年にわたり経済学部・経済学研究科において日本経済史の研究と教育に携わり,数多くの優れた卒業生を社会に送り出し,大学院門下から優秀な研究者を輩出されました。この間,評議員(2期4年),経済学部長・経済学研究科長など種々の要職を歴任され,本学の発展のために尽くされました。こうした同氏の研究・教育・大学運営への功労を称えて,平成21年春の叙勲で瑞宝中綬章を受章されました。
 同氏は本学において,農学校以来集積されてきた膨大な稀覯史料を駆使し日本資本主義確立期の研究に取り組まれ,その成果は『明治恐慌史序説』(東京大学出版会,1971年)として纏められ,これによって東京大学経済学研究科より経済学博士の学位を授与されました。その後,研究領域は日本経済史の境界を超え,日本の近代化や日本資本主義成立に関する理論的・歴史的分析の枠組みに関する日本資本主義論争そのものへと広がり,『日本資本主義論争の群像』(ミネルヴァ書房1984年)として上梓され,極めて高い評価を受け続けています。また,旧日本帝国の植民地・中国占領地のみならず,新しいヨーロッパ経済史の研究成果をも取り入れた東アジア経済史研究に挑戦され,『世界経済史入門−欧米とアジア』(共編著,ミネルヴァ書房,1992年)を土台に『日本経済と東アジア−戦時と戦後の経済史−』(ミネルヴァ書房,1995年)として結実しました。
 同氏は,その学識のみならず包容力とお人柄をもって,良き指導者として常に本学のみならず北海道全体の多くの後進の研究者育成に尽力され,本学退官後も北海学園大学経済学部教授として後進を支えてこられました。また,学会でも,昭和52年1月から平成9年12月に亘り,社会経済史学会理事として重要な役割を果たされ,わが国の社会経済史学の全国的リーダーの一人として大きな足跡を残されました。
 同氏の長年にわたるご貢献に改めて感謝し,ここに謹んで心よりご冥福をお祈り申し上げます。

(経済学研究科・経済学部)

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