平成28年の年頭にあたり,北海道大学の教職員,学生・大学院生の皆さん,そして様々な形で北海道大学の活動をご支援くださっている皆さんに,新年のご挨拶を申し上げます。
私達は,今年4月より国立大学法人として,第3期中期目標期間を迎えようとしています。来年度に向けて,昨年末には,平成28年度政府予算案が閣議決定されました。国立大学法人に関わる事項としては,まず,運営費交付金については前年度同額の1兆945億円が確保されました。第1期・第2期中期目標期間を通して実施されてきた一定率の減額は,一旦止まった形となりました。また,科学研究費補助金も前年同額となっています。
しかしながら,第3期中期目標期間では,組織再編などに積極的に取り組む大学に対する運営費交付金のメリハリある配分,機能強化を促すための補助金の改革等を実施するため,次のような適正化・再配分ルールを設定することが謳われています。すなわち,本年度に国立大学の機能強化のために重点配分された308億円に対して,3つの重点支援区分毎に機能強化促進係数(本学の場合には1.6%)を適用して財源を確保し,今後2分の1程度の額を教育研究活動の機能強化のための改革等に取り組む大学に重点配分として,運営費交付金内で再配分する。残りの財源を活用して,新設の補助金として,教育研究活動の機能強化や大学経営の基盤強化を含む組織改革に必要な初期投資費用を支援する,とあります。
さらに,個別大学に通知された予算の内訳を見ますと,第3期に向けた新たな方針が浮かび上がってきます。これまで,文部科学省に概算要求として申請してきた経費は,一括して大学の機能強化経費とされ,各大学の機能強化としての位置づけが問われることになりました。予算提示の内訳も,個別事項ごとの提示ではなく,位置づけごとの予算付けとなっています。これは,第2期中期目標期間に設けられた改革加速期間から,すでにその方向性が明らかになってきていましたが,もはや個別の部局の将来計画のみでの予算獲得は不可能であり,大学として知恵を出し合うことが問われます。このため,第3期中期目標期間では,大学執行部と各部局との定期的な意見交換の機会を設ける必要があると考えています。それぞれの部局のご協力と積極的な提案をお願いします。
さて,ここで,本学のこの1年の歩みを振り返りたいと思います。まず,研究推進の面では,3月末に,北キャンパスエリアに「フード&メディカルイノベーション国際拠点」が竣工し,その中で「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」に採択された「食と健康の達人」をはじめとした「食と健康」に関する大型産学官協働研究開発が開始されました。これは,本学における産業創出を目標とする産学官協働のモデル事業であります。また,これと呼応して,創成研究機構から分離して,産学・地域協働推進機構を4月1日に立ち上げました。これによって,前者においては先端融合研究を,後者においては産業創出産学協働研究の推進を図る体制としました。そして,この機構を地域との協働を進めるための拠点として,活動を開始しました。立ち上げ2年目となる今年には,より地域に浸透した機構として機能させていきたいと思います。また,4月1日には,国内外における北極域研究の推進拠点となることを目指して,創成研究機構内に「北極域研究センター」を設置しました。同センターでは,国立極地研究所とJAMSTEC(海洋研究開発機構)との協働体制を構築し,新たな活動資金をも獲得して,今年からは本格的な活動が始まります。
昨年は,文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援(SGU)」事業である「Hokkaidoユニバーサルキャンパス・イニシアチブ」構想の本格始動の年でもありました。このSGU事業において,基本となる4つの教育改革プランについては,今年も着実にその進展を図る必要があります。
まず,最初のプランであるNITOBE教育システムについては,新渡戸カレッジが初めての最終学年を迎え,4年間の留学実績等の確実な成果が問われます。今年は,同窓会支援による新たな海外インターンシップも始まりますが,各学部における留学先確保など,学部からの支援も必要となっています。新渡戸スクールの方は2年目に入り,留学生の活躍もありますが,各学院,研究科でのさらなる浸透が必須と思われます。ここでも,各部局のご協力をお願いします。
次に,異分野連携による「国際大学院」群の新設については,医理工学院,国際感染症学院,国際食資源学院の3つの学院が,平成29年度の開設に向けて準備中です。そして,新たな国際連携研究教育局(GI-CoRE)のプラットホームとして,ソフトマター国際連携研究教育院の設置と,ビッグデータとサイバーセキュリティの分野融合研究拠点設置の予算措置がなされました。SGU事業としては,8つの国際大学院等の設置を目標としています。皆さんからの,さらなる挑戦を待ち望みます。
そして,ラーニング・サテライト,サマー・インスティテュートの展開については,準備段階であるトップコラボ事業の成果の下,今年が本格試行の年となります。各部局の積極的な参加を期待しています。
平成28年度には,これらの活動をより機動的に推進するために,国際連携機構を創設して,創成研究機構,高等教育推進機構,産学・地域協働推進機構と共に,4機構体制を構築し,本学の研究,教育,社会貢献及び国際化の更なる飛躍を図りたいと思います。
ここで,昨年1年間を振り返って,改めて国立大学法人を取り巻く社会に目を転じますと,一昨年12月に出された中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の一体的改革について」をめぐっては,昨年1月に文部科学大臣より出された「高大接続改革実行プラン」が高大接続システム改革会議において議論され,「中間まとめ」を経て,今年度末には「最終報告」が策定される予定となっています。「中間まとめ」を受けて,国立大学協会は,「最終報告」に向けての提言を出し,実効性ある改革が実現されるよう,今後の議論・検討に積極的に参画する用意のあることを表明しています。これに対しましても,皆さんの建設的なご意見を頂戴したいと思います。
冒頭にも述べましたが,平成28年度は,第3期中期目標期間の初年度であります。第3期中期目標期間は,国立大学法人にとりまして試練の時,激動の期間であると予想されます。これに対して,本学の全構成員が共に,知恵を出し合って望みたいと思います。皆さんの良き批判・良き知恵を頂けますよう,よろしくお願いいたします。
最後になりましたが,平成28年が北海道大学の将来に向けての,さらなる踏み出しの年となることを祈念しますとともに,教職員並びに学生・大学院生の皆さんにとって実り多い年であることを心より願い,新年の挨拶とさせていただきます。
新年交礼会の様子 1月4日(月),山口総長の年頭の挨拶とともに,新年交礼会が始まりました。会場となった百年記念会館大会議室には,役員,部局長等が大勢集まりました。 |
![]() 乾杯の発声をする三上 隆理事・副学長 |