サステナビリティ・ウィーク2015を振り返って
サステナビリティ・ウィーク2015 実行委員長
国際担当理事・副学長 上田 一郎 |
持続可能な社会の実現に向けた教育研究の推進週間として2007年に開始した北海道大学サステナビリティ・ウィーク事業は,今年で第9回を迎えました。中核期間である10月24日(土)から11月8日(日)の16日間に12企画が,その前後数週間に20企画が開催されました。国際シンポジウム,市民講座,ワークショップ,展示,企画コンペ,映画上映など,32の多様な企画を通じて持続可能な社会の実現を目指した情報発信,議論,学び,人的ネットワークづくりが行われました。
2014年の開催期間は4ヶ月間におよび,サステナビリティ・マンス(Sustainability Months:サステナビリティ月間)と化していましたが,2015年は新たな企画が加わり開催が8〜12月と5ヶ月の長期にわたりました。もはや,サステナビリティ・シーズンと呼ぶ方がふさわしいほど1年の半分は,人類の重要な課題について何かしらの企画を行っている状況となりました。
国連:新たな持続可能な開発のための2030アジェンダの採択
2015年9月25日〜27日に国際連合では持続可能な開発サミットが開催され,「私たちの世界を転換する:持続可能な開発のための2030年アジェンダ」が193の国連加盟国全会一致で採択されました。この新たなアジェンダは各国に対し,2016年から15年間で17個の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に取り組むよう呼びかけると同時に,「あらゆる人の貢献が必要となる」と訴えています。大学そして教職員や学生も例外ではありません。こういった国際社会の要請に応え得る時宜にかなったテーマを今年のサステナビリティ・ウィークは掲げて実施しました。
開催テーマ「札幌サステイナビリティ宣言2008を再確認する」
「大学が持続可能な社会実現のための原動力になる」という決意を盛り込んだ「札幌サステイナビリティ宣言」を改めて認識し直すというのが今年のテーマでした。本宣言は,本学が重要な役割を果たして2008年に札幌で開催したG8大学サミットで,世界の主要な27大学が採択したものです。以来,7年ぶりに日本開催となる2016年5月のG7サミット開催を目前に,持続可能な社会実現のための大学の役割を複数の企画において改めて議論しました。
社会と共に教育し,社会と共に研究する大学へ
多数の学長が集まった「北海道−フィンランド・ジョイントシンポジウム」「日本−インドネシア学長会議」では,前者は北極域,後者は当該国における自然環境と社会環境の持続性に,大学は大きな責任を負っていること,そして,その責任を果たす上で大学間や産学間の連携が有益であることが確認されました。
大学が位置する地域社会に焦点を当てた「サステイナブルキャンパス国際シンポジウム2015」では,大学のキャンパスというハードとそこで展開される教育研究というソフトを活かすことによって,地域社会の環境負荷低減や新しい社会サービスの開発に貢献し得ること,そのためには自治体,産業界,アカデミアの関係者によるチームが不可欠であるとの認識が共有されました。
「WHO研究協力センター指定記念講演会」「ようこそ!ヘルスサイエンスの世界へ」「同性パートナーシップ制度導入を考える」などの複数の企画では,一人ひとりが健やかに人間らしく生きられる社会を目指して取り組んでいる研究の成果を,市民に向けて発信しました。
これらから分かることは,山口佳三総長のモットーである「社会と共に教育し,社会と共に研究する大学」の姿を追求することこそ,持続可能な社会へと変革を促す原動力となろうとする大学の姿だということです。
学生によるイニシアチブ
今年の特徴の一つに,意欲的な学生による新企画が挙げられます。価値あるアイデアを広げる「TEDxHokkaidoU」,社会企業の起業アイデアの国際コンペ「ハルト・プライズ北海道大学予選」など,学生がイニシアチブを発揮して持続可能な社会のあり方を議論する場を形成しました。
他にも,留学生と日本人学生が司会を務めたインターネット・フォーラム「GiFT - Global Issues for Tomorrow-」では,YouTube上で世界から267人の大学生や高校生などが参加しました。彼らは,山口総長や研究者からのビデオメッセージに触発され,世界の課題解決に向けた意欲やアイデアをチャットで交換しました。
2016年に向けて
サステナビリティ・ウィークは,2016年に10年目という節目を迎えます。これまで,サステナビリティ・ウィーク実行委員会では,Sustainability(持続可能性)という概念を,自然環境,社会環境,経済発展の枠組みにとどまらず,安寧(Well-being)や社会的包摂(social inclusion)を含む広い視野で捉えてきました。国連のSDGsの目標群を眺めれば,我々の視界が世界を先取りしていたことは一目瞭然です。
「北海道大学近未来戦略150」で「世界の課題解決への貢献」を掲げる本学は,この歩みを止めることなく変革の原動力であり続けます。次回は2016年10月22日〜11月6日を中心に開催する予定です。2016年5月に開催されるG7サミットなど国際社会の動きとともに地域のニーズも捉え,社会と共に教育,研究していきますので,皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
持続可能な社会の実現へ向けて,学術成果を世界の人々と共有することが出来る「オープンアクセス」と,北海道大学学術成果コレクション(HUSCAP)についてのポスター展示を開催しました。
展示では,「オープンアクセスからオープンサイエンスへ」をテーマに,オープンアクセスの現状とHUSCAPでの取り組み,オープンサイエンスの意義や展望について説明しました。さらに,現在HUSCAPで公開されている本学の学術成果とその意義について,本学教員にインタビューし,内容を公開しました。HUSCAPで公開されている多様な学術成果と教育研究成果を,誰もが読むことが出来るオープンアクセスの現状や,論文だけではなく研究データも一緒にオープン化するオープンサイエンスの意義や展望について広く周知することが出来ました。
附属図書館では,今後も本学のオープンアクセスやオープンサイエンスを実現するためにHUSCAPについての理解を深める取り組みを進めていきます。
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 展示したオリジナルブックカバーやしおり |
展示の様子 |
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10月20日(火)・21日(水) 会場:国際本部2階中講義室(217)
ワークショップ 国際交流のスキル
―教養・学部・修士学生のための国際コミュニケーション―
主催:北方生物圏フィールド科学センター/実施責任者:北方生物圏フィールド科学センター 教授 荒木 肇
平成27年度外国人招聘教授のシルバーナ・ニコラ先生(イタリア・トリノ大学)は,現在国際園芸学会の副会長で,多数の国際教育や共同研究プロジェクトを手がけています。ニコラ先生の経験をもとにして,学部生や大学院生向けに国際交流のスキル,特にコミュニケーションに関するワークショップを開催しました。受講生の受講動機としては,「外国語の基本は英語である」「英語でのコミュニケーション能力をつけたい」「将来は海外で仕事をしたい」等の声が聞かれました。
ニコラ先生は17歳で初めて外国に行き,28歳時に国際会議で報告し,本格的な英語の勉強は30歳を超えてからだったと自己紹介されました。その後,4つの問いかけ(@なぜ第二外国語を学ぶのか?A今後のキャリアにどのような海外体験が有効か?Bどのような環境が必要か?C海外で種々の体験をする機会はあるか?)をし,受講生と意見交換をしました。受講生からは,「外国語は英語が基本」「海外旅行の経験はあるが,それではコミュケーションがとれるようにはならない。目的を持った海外体験が必要」「リスニングを鍛えたい」「大学間や研究室交流等を活用して国際経験を積みたい」等の回答がありました。
ニコラ先生からは,@できる限り英語を使う機会を多くすること(例えば留学生との気軽なセミナー等)A海外に行くチャンスがあれば積極的に活用することB海外で体験をするための支援サイトがあることの3つの説明がありました。最後に,ネルソン・マンデラ氏の「文字を使うと頭で理解できる。そして相手の言葉を使うと心が通じる」という言葉を解説し,ワークショップを終了しました。
 ニコラ先生の講演の様子 |
 ワークショップの様子 |
10月22日(木) 会場:国際本部2階中講義室(217)
ワークショップ 国際交流のスキル ―博士学生と研究者のための国際交流スキル―
主催:北方生物圏フィールド科学センター/実施責任者:北方生物圏フィールド科学センター 教授 荒木 肇
平成27年度外国人招聘教授のシルバーナ・ニコラ先生(イタリア・トリノ大学)を講師にワークショップを開催しました。
受講者の多くはポスドク研究者で,今後の海外活動の一助にしたいとの希望が述べられました。ニコラ先生は,学生向けワークショップと同様に自己紹介された後,英語での国際交流の意義を説明されました。
英語は研究発表の手法であり,多くの自然科学論文は英語で執筆・報告されます。一方,技術普及書は自国の言語が使用されることが一般的で,これと対立的に考えることを避けたいと助言されました。また,英語は知識伝達の道具であり,学生指導,講義やセミナー等がなされると指摘されました。特にヨーロッパでは,多数の外国人学生が研究室に多く在籍しており,ニコラ先生の研究室では実験マニュアル書は全て英語にしたと説明されました。英語は相互理解の道具であり,外国人学生やスタッフとの交流,プロジェクト研究の相談や企画等が英語でなされる経験も話されました。さらに,研究者の国際交流ではその他10項目(「寛容性」「適応性」「個人の自律性」「精神力」「理解力」「積極的に聞くこと」「論旨の明瞭性」「異国文化の理解」「交友関係」「相手との協働」)も重要であると解説されました。
受講した研究者との交流では「自身の研究室では海外研究者との交流が少なく,できればバックグラウンドの異なる研究者との交流を希望する」「ニコラ先生のような方と日常的に話をし,海外共同研究へのモチベ−ションを高めたい」などの意見が出されました。
このワークショップを通じて,参加したポスドク研究者は専門分野以外の研究者や教員との交流を求めていることがわかり,外国人招聘教員が自身の大学のことを話題にしてポスドク研究者と交流する取組は有益だと感じました。
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ワークショップの様子 |
10月27日(火) 会場:学術交流会館小講堂,第二会議室
女性研究者の持続的な活躍を目指して〜研究人材の多様化と研究者支援のあり方〜
主催:人材育成本部女性研究者支援室/実施責任者:人材育成本部女性研究者支援室 特任准教授 長堀紀子
10月27日(火),女性研究者支援室主催のシンポジウム「女性研究者の持続的な活躍を目指して〜研究人材の多様化と研究者支援のあり方〜」を開催しました。本シンポジウムは,平成25年度から実施中の文部科学省科学技術人材育成費補助事業「女性研究者研究活動支援事業(拠点型)」を総括するものとして開催しました。
基調講演では,はじめに,国立研究開発法人科学技術振興機構プログラムオフィサーを務める山村康子氏より「女性研究者を取り巻く環境と政策等について」をお話しいただきました。女性研究者を取り巻く環境の国際比較,各種調査データや国内大学における取り組みのベストプラクティスの紹介,並びに今後の政策の方向性等が示されました。
次に,名古屋大学男女共同参画推進センター長の束村博子教授・副理事より「女性の活躍で大学を活性化〜名古屋大学の取り組みを中心に〜」と題してお話しいただきました。女性研究者の活躍推進を大学戦略として位置付け,トップダウンで取り組むことの重要性並びに大学の価値向上へもたらすインパクトについて,名古屋大学を事例に示されました。
パネルディスカッションでは基調講演のお二方に加え,金沢大学の池本良子教授,室蘭工業大学の貞許礼子特任教授,本学の望月恒子副学長を交えて,3大学の具体的な取り組み紹介に続き,大学以外の機関との連携における効果や課題について話し合った他,今後の研究者支援の方向性や政策的意義等について幅広く議論しました。
シンポジウムには学内外から40名強の参加者が集まり,質疑応答等の活発な議論が行われました。今後も女性研究者支援室では,多様なバックグラウンドをもつ研究者が活躍し定着できる研究環境の構築や,ダイバーシティ推進に向けた意識改革を進めて参ります。
 基調講演の様子 |
 質疑応答の様子 |
10月29日(木)・30日(金) 会場:学術交流会館小講堂
第8回セラミド研究会学術集会
主催:セラミド研究会/共催:さっぽろヘルスイノベーション“Smart-H”/
実施責任者:先端生命科学研究院附属次世代ポストゲノム研究センター 特任教授 五十嵐靖之
第8回セラミド研究会学術集会を10月29日(木)・30日(金)の2日間開催しました。全体の参加者約140名のうち,大学や企業研究所から100名,学内からは学生20名を含む約40名が参加し,活発な討論が繰り広げられました。
今回の海外招待講演では,皮膚バリア機構研究の第一人者であるカリフォルニア大学サンフランシスコ校のYoshikazu Uchida博士と,毛髪成長とスフィンゴ脂質に関する研究をしている韓国清洲大学校のYoung Moon Lee教授に講演いただきました。そして,ランチョンセミナーでは,S1P受容体の構造解析に関して,テネシー大学のGabor Tigyi教授に講演いただきました。また,JSC Award受賞講演は,中部大学の芋川玄爾先生がセラミドと皮膚バリアの30年間の研究をまとめて話され,聴衆に感銘を与えました。
国内招待講演では,皮膚のアシルセラミドに関する酵素系の研究(薬学研究院 木原章雄教授),真菌エンドセラミダーゼに関する研究(九州大学 伊東 信先生),上皮-間充織変換での脂質の役割(九州大学 池ノ内順一先生),ノンターゲットリピドミクスの開発の将来展望と現状(理化学研究所 有田 誠博士),SM小腸吸収機構(株式会社明治 藤森雅史先生)などの5題と,さらに一般演題17題の講演がなされました。また,第6回JSC Awardには本学薬学研究院の木原教授,JSC若手賞には先端生命科学研究院の酒井祥太特任助教が選ばれました。
初日夕方にアスペンホテルで開催された懇親会には50名以上が参加し,情報交換や共同研究の話し合いが積極的に行われました。次回は来年10月末に東京ユビキタス協創広場CANVASで開催されます。また,この会の講演や討論の詳細については,食品化学新聞のセラミド特集号(11月26日号)で詳しく報道されました。
 講演会の様子 |
 質疑応答の様子 |
 JSC賞を受賞した木原教授の様子(右側) |
11月3日(火・祝) 会場:保健科学研究院
ようこそ!ヘルスサイエンスの世界へ
主催:保健科学研究院/実施責任者:保健科学研究院 教授 浅賀忠義
保健科学研究院の公開講座は,「ようこそ!ヘルスサイエンスの世界へ」というテーマのもと,4名の講師が専門分野の紹介を行い,66名が参加しました。
第1限目は,青柳道子講師が「最後まで住み慣れた家で過ごすために」と題して,高齢者になっても病気があっても,自宅で暮らし続けられることを支えるケアについて講演しました。第2限目は,石津明洋教授が「病原菌と戦う好中球の必殺技−好中球細胞外トラップ」と題して,病原菌と戦う好中球について,好中球の細胞外トラップによる殺菌メカニズムとその障害について解説しました。第3限目は,八田達夫教授と岸上博俊助教が「超高齢化社会へ向けた車いすデザインの提案」と題し,超高齢化社会への突入による車いす利用の増加に伴い,今よりもっと楽に座れて動きやすい車いすを提案しました。
講演者は,サステナビリティ・ウィーク2015のテーマである「札幌サステイナビリティ宣言2008を再確認する」から,「大学は持続可能な社会実現のための原動力になること」をキーワードとして,保健科学の視点から講演しました。参加者からは概ね好評を博し,様々な質問が出て,各講師はわかりやすく丁寧に解説を行いました。今後も毎年,時代を反映するようなテーマや,興味を持って参加いただけるようなテーマを設定し,同じ時期に公開講座を開催していく予定です。
 伊達広行研究院長の挨拶の様子 |
 八田教授による講演の様子 |
11月3日(火・祝) 会場:学術交流会館第一会議室
脆弱な巨大炭素貯蔵庫―熱帯泥炭林―を監視する 温暖化緩和のために
主催:農学研究院/共催:環境省環境研究総合推進費(2-1504),Wetlandセミナー/
後援:JapanFlux,日本泥炭地学会/実施責任者:農学研究院 教授 平野高司
農学研究院では,環境省の平成27年度環境研究総合推進費によって,研究プロジェクト「ボルネオの熱帯泥炭林における炭素動態の広域評価システムの開発」(課題番号:2−1504)を行っています。今回は,研究プロジェクトの成果を一般市民に向けてアウトリーチするイベントと位置付けました。共同研究を実施するプロジェクトメンバー(国立環境研究所,宇宙航空研究開発機構)を招き,市民セミナー「脆弱な巨大炭素貯蔵庫−熱帯泥炭林−を監視する」と題して開催しました。
発表者5名が各々担当する熱帯泥炭に関する研究課題について,質疑応答を含めて各30分間,これまでの研究成果や今後の研究課題について紹介しました。参加者は全体で54名(留学生7名含む)でしたが,本学の学部生と大学院生,大学関係者,一般市民など幅広い方々に参加いただきました。イベント終了後に実施したアンケートでは,34名から回答があり,「基本的・基礎的な説明からしていただけたのでわかりやすく,問題点がはっきりして良かった。一般向けでわかりやすかった」などの回答が多くみられ,94%の方が「非常に良かった,良かった」と評価する高い満足度が得られました。発表内容に関しても,94%の方が「とても易しい,易しい,適切」と回答し,研究成果や活動内容をわかりやすく参加者に説明できたと認識しています。
参加者の中には「今回のように市民向けに研究の先端の現状を紹介する機会を多く企画して欲しい」という声があり,共催・後援をいただいた機関・団体からも,このようなアウトリーチ活動を続けて欲しいとの要望を受けています。今後とも市民向けのアウトリーチの機会を積極的に活用し,研究の進捗状況や活動報告をわかりやすく広報するよう務めていきます。
 受付の様子 |
 講演の様子 |
11月6日(金) 会場:農学研究院大講堂
臭いものに蓋をしない?:「フン」をめぐる文化論や技術論
―アフリカやアジアの事例から―
主催:工学研究院/共催:総合地球環境学研究所/実施責任者:工学研究院 教授 船水尚行
し尿や家畜糞,廃棄物は,私たちのすぐ身の回りにあります。その扱いを誤れば衛生や環境を損ねる汚染問題となりますし,それを上手に活用できれば暮らしに役立つ有用な資源となります。とはいえ,日常の暮らしの中でし尿や家畜糞は,私たちの意識の外に押し出されてきたように感じています。
このセミナーでは,し尿や家畜糞への向き合い方を日本やアジア,アフリカの事例を参照しながら,その認識や文化・社会との関わり,食料生産などの資源利用,環境負荷の低減など複数の観点から考えることを試みました。
セミナーではまず,「ヒンドゥー教における牛糞の儀礼的意味と利用」と題した講演を小磯 学先生(神戸山手大学)が行い,インドにおける牛糞について議論しました。次に,農学の観点から岩渕和則教授(農学研究院)が「循環社会と糞尿利用」という題名で講演を行い,バイオガスや堆肥としての糞尿利用を取り上げました。そして,宮嵜英寿先生(総合地球環境学研究所)は「西アフリカ・内陸半乾燥地の地域開発支援に家畜糞を活かす」という講演で,牧畜民と農民の家畜糞を介した共生関係について議論しました。最後に,船水尚行教授(工学研究院)が「糞便を工学的に見る」と題した講演を行い,糞便の価値を高める技術とその西アフリカでの適用例を議論しました。最後の総合討論では多くの質問が出され,活発な議論が行われました。
 岩渕教授による講演会の様子 |
 講演に耳を傾ける聴衆の様子 |
11月6日(金) 会場:国際本部1階大講義室
留学希望者向けセミナー ―SD on Campus―
主催:国際本部/実施責任者:文学研究科 教授 瀬名波栄潤
昨年に引き続き,留学希望者向けセミナーを実施しました。参加大学は,アメリカ・ポートランド州立大学,インドネシア・ガジャマダ大学,ベトナム・ベトナム国家大学ホーチミン校,ナイジェリア・エボニ州立大学の4大学でした。学生の目線での情報提供を目的に,発表者を北海道大学短期留学プログラム(HUSTEP)で交換留学している留学生に依頼しました。
イベントでは,各大学がサスティナブル・ディベロップメント(SD;持続可能な開発)についてどのような教育を行い,学生が授業や授業外でSDにどのように関わっているかを発表してもらい,それぞれの特徴的な取り組みが紹介されました。また,イベント後半ではナイジェリアの伝統的なダンスが披露されました。
本イベントは今回で8度目の開催ですが,参加した学生に実施したアンケートでは「様々な国の大学の話を聞けて良かった」「海外の大学を生で感じられた」などの回答が見られました。また,発表した留学生も自らの大学を直接アピールできる貴重な機会ととらえて十分な準備を重ね,当日も満足感を抱いていたようでした。参加学生のアンケートでは,来年度に講演してほしい大学の希望についても聴取することができたので,可能な限り希望を取り入れていきたいと考えています。
 上田一郎国際本部長からの冒頭挨拶 |
 講演者への表彰状贈呈式の模様 |
 主催者と講演者の集合写真 |
11月7日(土) 会場:歯学部講堂
お口の健康と歯科医療 その1―患者サイドに立った知識の浸透―
主催:歯学研究科/実施責任者:歯学研究科 講師 有馬太郎
歯学研究科では,11月7日(土)午前9時30分から午後1時まで歯学部講堂にて,市民公開特別講座「お口の健康と歯科医療 その1」を開催しました。
本講座はサステナビリティ・ウィークとの共催であり,歯学研究科としては8つ目の企画でした。食事を楽しくするために必要なお口の健康と,問題が発生した場合の対処法・治療法について紹介することを目的として,一般の方でも十分理解できるわかりやすい言葉で4名の講師が講演を行いました。
はじめに,歯学研究科長・歯学部長の横山敦郎教授から開会の挨拶があり,次いで北海道大学病院の兼平 孝講師から「食の歴史」について,歯学研究科の松沢祐介助教から「歯の再殖」についての講演が行われました。また,一般社団法人北海道歯科衛生士会・札幌北楡病院歯科衛生士の原田晴子氏より「歯磨きのタイミング」について,最後に,歯学研究科の有馬太郎講師から「顎関節症」についての講演が行われました。
また,同講座は国立大学フェスタの行事及び道民カレッジ連携講座としての開催でもありました。当日は少し風が強く,イチョウ並木の観光客も少なかったために観光がてらに参加される方は少なかったのですが,計25名の方が参加されました。参加者の中には,インターネットで3年前に本講座を知って以来,毎年恵庭から来てくださる方もいて感謝するばかりです。
本研究科では,今後も研究成果の地域社会への還元の一環として,道民カレッジ等に参加し,市民公開特別講座を企画・実施する予定です。また,サステナビリティ・ウィークにも持続的に話題を提供して参ります。
 兼平講師による講演の様子 |
 原田歯科衛生士による講演の様子 |
11月7日(土) 会場:人文・社会科学総合教育研究棟W409室
研究倫理国際ワークショップ ―教育方法とその有効性の検証―
主催:文学研究科応用倫理研究教育センター/ 共催:サンクトペテルブルグ国立大学,ブカレスト大学/
実施責任者:文学研究科 准教授 眞嶋俊造
11月7日(土)に開催した本ワークショップでは,大学間交流協定校であるロシア・サンクトペテルブルグ国立大学,並びにルーマニア・ブカレスト大学より研究者を招へいし,各国における研究倫理教育の現状と課題についての国際比較を行いました。また,本学並びに両協定校において実施された,研究倫理教育実践報告を通じた研究倫理教育の取り組みや教育手法の有効性について検証を行いました。
第1部は「研究倫理教育の最近の動向」と題し,日本と各国における現状を検討しました。我が国における研究倫理教育の現状は十分ではありませんが,他2国と比較するとより多角的かつ有効な取り組みが実施されていることが明らかになりました。特に,日本と他2国との大きな違いの一つは,研究不正を行った場合の社会からの制裁だけではなく,同僚や研究者コミュニティからの扱われ方にあることがわかりました。
第2部は「教材の有効性の検証」と題し,本学並びに両協定校において実施された研究倫理教育実践報告を通じた研究倫理教育の取り組み,また教育手法の有効性について検証しました。現状ではそれぞれの機関において全学的に標準化された研究倫理教育が行われていないが,その取り組みがそれぞれの方法で進められていることが明らかになりました。
第3部では活発なディスカッションを通し,講演者間のみならずフロアを交えた参加者の間で議論を深めることができました。本ワークショップで得られた新しい知見と成果は,本学と両協定校だけではなく,日本,ロシア,ルーマニア,さらに他の国々における研究倫理推進を進めるにあたって大きな示唆を与えるものでした。具体的には,社会における研究者の地位や位置づけ,研究者が研究に携わる専門職業人であるという意識と認知による研究活動に対する研究者の姿勢,また,研究不正に対する社会からの反応に違いがあることがわかりました。また,研究倫理教育を推進していくためには研究者を研究に携わる専門職業人としてとらえ,研究倫理教育を専門職倫理教育として実施する必要性が明らかになりました。本学と両協定校を軸とし,国際的な研究倫理教育のネットワークを世界展開するための共同研究のシーズを得ることができました。
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講演の様子 |
11月7日(土)・8日(日) 会場:学術交流会館講堂
国際シンポジウム 地域社会へ与える考古学の影響
―ポストコロニアル時代の考古学と先住民コミュニティ―
主催:アイヌ・先住民研究センター/共催:観光学高等研究センター/後援:世界考古学会議WAC-8京都実行委員会/
実施責任者:アイヌ・先住民研究センター 教授 加藤博文
本シンポジウムでは,持続可能な発展に具体的に貢献する手法として,考古学や文化遺産研究が先住民族を含む地域社会に対してどのような貢献が可能なのかについて,ブリティッシュ・コロンビア大学,サイモンフレーザー大学,国立台湾大学,ウプサラ大学,アバディーン大学から研究者を招き,北海道内の2つの自治体での取り組みとの比較検討を行いました。提供された話題は,広く北米,東アジア,北欧,北海道における大学や自治体の地域のアイヌコミュニティとの協業の具体的事例に及び,先住民族を含む地域社会と研究活動のあり方についての今日的な課題を論じる貴重な機会となりました。北東アジア圏に位置し,国内唯一の先住民研究拠点を有する本学でのシンポジウムの開催は,北海道の地が北米と北欧とを繋ぎ,さらに東アジア地域を取り込む国際的な研究交流の結節点として重要な立ち位置を占めていることを改めて提示する結果となり,多くの参加者から高い評価を得ることができました。
本事業は,8月末から9月上旬に京都において開催される「世界考古学会議京都大会」の関連事業に位置付けられ,世界考古学会議事務局,京都大会現地実行委員会事務局からも討論者の参加があり,今回の議論は引き続き京都での国際会議へと継続されることになりました。海外からの参加者からは,本学に対して今後も海外の研究機関をつなぐハブ的な役割を期待する意見が寄せられました。シンポジウムの他,大学院講義を利用した参加講師と大学院生が議論するラウンドテーブルを実施しましたが,海外の研究者との直接交流は,学生にとって貴重かつ刺激的な経験となりました。学生からは活発な質問もなされ,非常に高い満足度が得られました。
 パネルディスカッションの様子 |
 登壇者の集合写真 |
11月8日(日) 会場:国際本部(インターネット配信)
GiFT2015―Global Issues Forum for Tomorrow―世界の課題解決に向けたフォーラム
主催:北海道大学/実施責任者:国際本部長 上田一郎
11月8日(日),北大生と世界の高校生・大学生がインターネット上で意見交換するフォーラム「GiFT -Global Issues Forum for Tomorrow-」を開催しました。
本フォーラムは,「北海道大学近未来戦略150」で掲げる「世界の課題解決に貢献する北海道大学へ」というテーマのもと,より多くの若者が世界の課題解決に向けて行動するよう促すことを目的とし,サステナビリティ・ウィークの一環として今回で5回目の実施となりました。
本フォーラムでは,持続可能な社会の実現に挑む本学の研究者が「世界の課題解決の方策について何ができるのかを一緒に考えよう」と英語で学生に約10分間のインターネット動画を通して呼び掛けます。本年は「北極圏の気候変動が引き起こす全地球規模の変化に,わたしたちはどのように対応したらよいか」をテーマに,司会進行を日本人学生1名と外国人学生3名が務め,山口佳三総長をはじめ計4名の研究者がプレゼンテーションを行いました。山口総長は,地球規模の問題解決を目指す上で,大学が果たす役割と協働研究の重要性を語りました。これに呼応し,参加者はチャットを通じて世界の課題解決に向けた意欲やアイデアを活発に交換しました。インドネシア,フィリピン,マレーシア,エストニア,スウェーデン,ザンビアなど,世界10ヵ国から267名がフォーラムに参加し,12月24日の時点で動画は2,273回視聴されています。
◆アーカイブ動画
http://sustain.oia.hokudai.ac.jp/gift/year2015.html
講演者と講演タイトル(意訳)
総長 山口佳三
“You and Our Issues”(あなたと私たちの課題)
地球環境科学研究院 教授 杉本敦子
“Co-design Research for Better Life on Permafrost and Global Environment”
(永久凍土周辺の環境問題と住民への教育)
北極域研究センター長 教授 齊藤誠一
“Explore Phytoplankton from Space for the Arctic Marine Ecosystem”
(衛星で捉えた海中プランクトンの移動と北極域の生態系の変化予測)
工学研究院 教授 瀬戸口剛
“Desirable Urban Design for Winter Cities”(稚内駅の再建を例とした自然環境と調和する都市設計)
 協働研究について講演をする山口総長 |
 司会を務めた北大生 |
11月10日(火)〜12日(木) 会場:百年記念会館,創成研究機構
北海道大学―フィンランド ジョイントシンポジウム
主催:北海道大学/共催:ラップランド大学,オウル大学/実施責任者:国際本部国際交流課 課長 清水和子
11月10日(火)〜12日(木)に,「北海道大学−フィンランド ジョイントシンポジウム」を開催しました。本シンポジウムは,サステナビリティ・ウィーク中の企画として,オウル大学とラップランド大学との共催により開催したものであり,オウル大学,ラップランド大学,本学を中心に約80名の参加がありました。
今年度のテーマは,「北極域の持続可能性に貢献する大学の役割」とし,初日に開催したオープニングセッションでは,山口佳三総長の開会挨拶の後,北極域研究センターの齊藤誠一センター長より基調講演がありました。続いて,上田一郎理事・副学長,オウル大学のヨウコ・ニイニマキ学長,ラップランド大学のマウリ・ユラコトラ学長,東フィンランド大学のユッカ・モンコネン学長,ヘルシンキ大学のアンナ・マウラネン副学長,北極圏大学のカリ・ライネ副学長による,各大学の取り組み内容の紹介が行われました。
その後,本学ヘルシンキオフィスの成田吉弘所長をモデレータとしたパネルディスカッションにて,参加者を含めた活発な議論が行われました。開催期間中には,この他に「北極域における海洋・海事」「北極域における人口」をテーマとした分科会及び「北極域での資源開発」「北方圏における学術コンソーシアム」に関するセミナーが開催され,幅広い分野での議論が行われました。
これまでも本学はフィンランドと活発な交流を進めてきましたが,このシンポジウムにおいて,さらなる関係強化への期待が双方から表されました。
 パネルディスカッションの様子 |
 講演の様子 |
 シンポジウム参加者の集合写真 |
11月10日(火) 会場:フロンティア応用科学研究棟鈴木章ホール
次世代コージェネレーションシステム公開シンポジウム
〜コージェネレーションネットワークの普及に向けて〜
主催:工学研究院エネルギー変換システム研究室/ 実施責任者:工学研究院 教授 近久武美
本行事は,平成25年4月から3年にわたって行われてきた環境研究総合推進費研究委託業務「コジェネレーションネットワーク構築のためのCO2削減・経済性・政策シナリオ解析」の研究成果を,北海道内の企業・行政・一般市民に対し広く発信することを目的として開きました。
この委託研究は,北海道地域におけるコジェネレーションの普及促進によるエネルギーシステムの低炭素化と地域経済の活性化を目指すもので,需要家サイドに分散配置されたコジェネレーションのネットワーク化,及びその実現に有効な政策的手法を提案するものです。
シンポジウム前半では,一般財団法人電力中央研究所,一般財団法人コジェネレーション・エネルギー高度利用センター,札幌市よりお招きした3名の講師の方々に,日本・北海道のエネルギー情勢の現状と課題,コジェネレーション普及の現状と今後の取組,札幌市におけるエネルギーシステム低炭素化のための取組についてご講演いただきました。後半は,工学研究院の近久武美教授よりコジェネレーションのネットワーク化によるCO2排出量削減効果と経済波及効果について,経済学研究科の吉田文和名誉教授,外山洋一教授より海外調査の成果と政策的手法について,それぞれ研究成果を報告しました。
参加者は120名程度と当初の予定を上回り,講演後には活発な質疑が行われ,予定の時間を10分以上超えて盛況のうちに終了しました。今後はプロジェクト成果を取りまとめて委託研究を完成させると共に,提案実現に向けて社会への発信を続けていきたいと考えています。
 近久教授による講演の様子 |
 札幌市 櫨山和哉氏による講演の様子 |
11月13日(金) 会場:フロンティア応用科学研究棟鈴木章ホール
情報科学研究科/北海道産官学研究フォーラム 特別セミナー
社会インフラのスマートエイジングとアセットマネージメントを追求する学際研究
主催:北海道産官学研究フォーラム/共催:情報科学研究科,Digital北海道研究会,地理情報システム学会,産学官CIM・GIS研究会/
後援:日本写真測量学会北海道支部,建設コンサルタンツ協会北海道支部,土木学会北海道支部,精密工学会北海道支部,
北海道GIS技術研究会/実施責任者:情報科学研究科 教授 金井 理
本セミナーは,近年日本の社会的課題の一つとして認識されてきた,「橋梁・トンネル・港湾設備等の社会基盤施設の急激な老朽化」に対処するための様々な技術や取り組みについて,一般市民や学外のエンジニアへ横断的に紹介しようと,今年度初めて開催したセミナーです。工学研究院,情報科学研究科,文学研究科,公共政策大学院から多分野の研究者が集まり,また企業エンジニアも含めて,今後の社会実装に向けた産学官の連携を図ることを目的として開催しました。
このセミナーは,建設コンサルタンツ協会の継続教育(CPD)プログラムにも登録いただき,当日は道内の土木建設関係の民間企業,コンサルタント,官庁などから合計55名の聴講者が参加しました。発表は,コンクリート構造物の信頼性の予測技術,画像処理による橋梁の健全性計測,維持管理情報の長期間保存のための国際標準,維持管理におけるCIM・GISの先端的活用事例などについて,様々な観点から5件ありました。
本学の多岐にわたる研究科において,社会インフラのスマートエイジングやアセットマネジメントを目指した,色々な観点での研究がなされていることが良く理解でき,今後の産学官連携研究の実施に向けた人的ネットワークを作る上で大変有意義な機会となりました。本学には,この分野に関連する研究に携わる多くの研究者が潜在的にいることを確認できたため,来年度もサステナビリティ・ウィーク行事として,同様のセミナーを企画することを確認しました。
 公共政策大学院 高松 泰特任教授による講演の様子 |
 工学研究院 横田 弘教授による講演の様子 |
11月15日(日) 会場:札幌グランドホテル別館2階グランドホール
2015北の縄文フォーラム ―縄文文化の魅力と価値について―
主催:北海道環境生活部くらし安全局文化・スポーツ課縄文世界遺産推進室/共催:北海道大学/
実施責任者:アイヌ・先住民研究センター 教授 加藤博文
世界遺産登録を目指している北海道の縄文文化の素晴らしさや魅力を,多くの方々に知っていただくと共に理解を深めていただくため,「縄文文化の魅力と価値」をテーマに公開フォーラムを開催しました。本フォーラムは,平成21年度から毎年開催しています。
今年度は,北海道庁の縄文世界遺産推進室と本学の共催という形で,本学の大学間交流協定締結校であるイギリスのイースト・アングリア大学日本学研究センター長のサイモン・ケイナー博士を基調公演の講師に招き,「海外から見た縄文文化の魅力について」と題して,海外の目線から縄文文化のもつ世界史的価値,現代に至る日本文化の魅力についてお話しいただきました。ケイナー博士は,イギリスを代表する日本文化研究者として広く知られる存在であり,大英博物館において好評を得た「縄文土偶展」の企画責任者でもあります。
基調講演に続いて行われたパネルディスカッションでは,「縄文文化の価値とその活用」をテーマに,北海道の縄文遺跡群の特徴と可能性について,大学教授や関係自治体職員等をパネリストとし,考古学の現場やまちづくりの観点,観光資源としての活用の可能性など幅広いディスカッションが行われました。
参加者は,札幌市内の方が大勢を占めていましたが,道内のその他の市町村,また道外からも出席いただき,237名と例年より多くの参加者を得ることができ,このテーマについての市民の関心の高さを改めて確認することができました。今後とも,本フォーラムに寄せられたご意見をもとに,北海道の縄文遺跡群の世界遺産登録を目指し,「縄文文化の魅力と価値」を,道内はもとより国内,海外へ発信してまいります。
 講演会の様子 |
 パネルディスカッションの様子 |
11月21日(土)〜23日(月・祝) 会場:クラーク会館大講堂
CLARK THEATER 2015―Lead―
主催:北大映画館プロジェクト/実施責任者:教育学部2年 曽束芽吹
クラーク会館講堂にて,学生や市民に開放した期間限定映画館「CLARK THEATER 2015」を開催しました。当イベントは平成18年に始まり,10周年になります。本学に常設映画館を作ることを目標に,その過程の一環として毎年開催している「CLARK THEATER」は,北大生を中心とする学生が運営,作品の選定などを行います。
今年はチェコのアニメーション映画やフランス映画,中編日本映画など様々なジャンルの作品を上映しました。また,映画についてより深く知るべく,SF小説家の長谷敏司先生や公立はこだて未来大学複雑系知能学科の松原 仁教授をはじめ,4名の専門家を招いてのトークショーを企画・開催しました。
今年のテーマは,「先頭に立つ」や「案内する」の意味を持つ「Lead(リード)」とし,主に映画界を先導してきた名作SF映画,これから映画産業を担っていくだろう最先端の技術に関する映画などを上映しました。映画の歴史を振り返ると同時に,未来に繋がる可能性を感じていただき,映画の発展や映像技術に関する情報を発信しました。映画を観るという共通の体験を通して世代を超えたコミュニケーションの場を創造し,持続可能な社会実現に貢献するイベントになったと思います。
延べ2,125人もの方々に来場していただき,改めて映画の良さを感じると共に,本学に映画館があることの魅力を伝えることができたと実感しています。今後も,より多くの方に「CLARK THEATER」の魅力,そして私たち映画館プロジェクトの活動を知ってもらい,常設映画館の創設に向け,さらに邁進していきます。
 開演前の会場の様子 |
 トークショーの様子 |
 参加者の集合写真 |
11月21日(土) 会場:人文・社会科学総合教育研究棟W103教室
経済学研究科地域経済経営ネットワーク研究センターシンポジウム
主催:経済学研究科地域経済経営ネットワーク研究センター(REBN)/共催:観光学高等研究センター/
実施責任者:経済学研究科地域経済経営ネットワーク研究センター長 教授 町野和夫
11月21日(土),人文・社会科学総合教育研究棟W103教室において,経済学研究科地域経済経営ネットワーク研究センター(REBN)主催,観光学高等研究センター(CATS)の共催,北海道,札幌市,日本政策投資銀行,北洋銀行,北海道観光振興機構の後援によるシンポジウム「北海道の観光と地域振興―インバウンド観光の先に見えるもの」を開催しました。3連休初日にも関わらず,一般の方々を中心に140名もの参加がありました。
本シンポジウムでは,まず株式会社北海道チャイナワーク及び株式会社プレミアム北海道の社長である張 相律氏と,JTIC. SWISS代表,観光学高等研究センター客員准教授で日本政府認定の「観光カリスマ」である山田桂一郎氏にご講演いただきました。張氏からは「北海道におけるインバウンドビジネスのチャンス」,山田氏からは「世界から選ばれ続ける地域とは」というタイトルで,海外からの観光客(インバウンド)の急拡大を地域の生き残りや発展に繋げていくために,北海道の各地域がそれぞれの地域の魅力を磨き上げ,自らのライフスタイルをより豊かにすることがいかに大事かについて,多くの興味深い事例を交えてお話しいただきました。
シンポジウムの後半では,講師のお二人にCATSの小林英俊客員教授にも加わっていただき,町野和夫REBNセンター長をコーディネーターとするパネルディスカッションを行いました。観光の質を向上させ,地域のライフスタイルをより豊かにするために,業界,行政,地域住民が何をすべきかについて,前半の講演と小林教授の解説を基に,参加者からの質疑応答も含めて充実した議論が交わされました。
 講演の様子 |
 パネルディスカッションの様子 |
11月22日(日) 会場:学術交流会館講堂
同性パートナーシップ制度導入を考える
主催:文学研究科応用倫理研究教育センター/共催:法学研究科附属高等法政教育研究センター,公共政策大学院/
実施責任者:文学研究科 教授 瀬名波栄潤
本フォーラムでは,「同性パートナーシップ制度」の地方都市導入の意義と課題を議論しました。当事者,支援者,弁護士,研究者などが登壇し,人権問題,国内外の動向,地方創生などの観点から,地方自治体における同条例制定を検討し,大学の役割と持続可能な社会作りを来場者と共に議論しました。
同性パートナーシップ制度は,現在最も注目を集める新制度の一つで,地方自治体が一定要件の下で同性カップルを公式承認する制度です。3月には渋谷区で「条例」が制定され,11月5日に「パートナーシップ証明書」を発行,7月には世田谷区パートナーシップ宣誓書提出・受領書発行の報道もありました。法的拘束力はありませんが,性的少数者の基本的人権を擁護,保障するために必要と唱える声や,社会全体の活性化の方策の一つとして利用すべきという考えなど,導入への反応も様々です。
フォーラムでは,3名のパネリストと1名のコメンテータに登壇いただきました。パネリストには,札幌弁護士会所属弁護士で須田布美子法律事務所代表の須田布美子氏,LGBT※支援のための市民グループ「北海道セクシャルマイノリティ協会」創始者であり,明治大学法学部教授で本学名誉教授でもある鈴木 賢氏,国際基督教大学元教授・同ジェンダー研究センター初代センター長で,現在ジェンダー・セクシュアリティ研究理論を参加型学習につなぐ個人事業「ファーメント」代表の田中かず子氏,コメンテータには,地域の自立的発展,地方分権,公民連携を主な関心領域として研究する,公共政策大学院長の石井吉春教授を招きました。司会進行は応用倫理研究教育センター員の瀬名波栄潤教授が務めました。
同性パートナーシップ制度導入を巡り,直近の課題,中長期的目標と戦略など様々な意見を交換し,会場からの質疑も活発でした。開催告知が朝日新聞・毎日新聞・北海道新聞で載り,開催後は北海道新聞で写真付きの報告記事が掲載されました。
※LGBT
レズビアン(Lesbian),ゲイ(Gay),バイセクシャル(Bisexual),トランスジェンダー(Transgender)の頭文字をとった性少数者を表す総称。
 登壇者の集合写真 |
 パネルディスカッションの様子 |
11月28日(土) 会場:附属図書館本館オープンエリア他
第3回国際協力カフェおよびプレイベント
主催:附属図書館(国連寄託図書館)/共催:国際本部/後援:国際協力機構北海道国際センター(JICA北海道),北海道,
札幌国際プラザ,日本国際連合協会北海道本部/ 実施責任者:附属図書館利用支援課 課長 豊田裕昭
11月28日(土),本館オープンエリア(ラーニング・コモンズ)において第3回国際協力カフェ「国連フォーラム スリランカ・スタディ・プログラム報告会:SDGsから考える,セカイの未来 わたしの未来」を開催しました。
国際協力カフェは,附属図書館が北海道で唯一指定されている国連寄託図書館として,国際協力に関わる講師を招き不定期に開催する公開講演会です。第3回の講演者は,学生を含む,国連に関心を持つ有志による任意団体「国連フォーラム」でした。
第1部は,国連機関の活動現場を訪問する「2015 スリランカ・スタディ・プログラム」について,参加学生からの報告でした。続いて第2部は,報告者をファシリテータとした参加者によるグループディスカッションで,ディスカッションのテーマの一つは,国連が9月に採択した持続可能な開発目標(SDGs)でした。
当日の参加者数は,学生・教職員・高校生を含む市民を合わせた46名でした。参加者アンケートからは「自分で考えることの重要さを感じた」といった声が寄せられ,特にディスカッションの満足度の高さがうかがわれました。
今回は,参加者が主体的に参加するディスカッションの場を設けることで,国連や関連機関の取り組みについてより深く考えていただける機会になったと言え,国連寄託図書館の活動として一定の成果をあげました。
なお,プレイベントとして11月10日(火)から28日(土)にかけてSDGsに関する図書展示・パネル展示と,スリランカ・スタディ・プログラムの写真展示を実施しました。
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ディスカッションの様子 |
 参加者の集合写真 |
11月28日(土) 会場:情報教育館3階スタジオ型多目的中講義室
周縁から越える「境界」―日韓演劇人の越境のかたち
主催:メディア・コミュニケーション研究院附属東アジアメディア研究センター/
実施責任者:メディア・コミュニケーション研究院 准教授 玄 武岩
札幌と大阪という地方都市で韓国と日本の演劇交流に取り組む市民を招いて,シンポジウム「周縁から越える『境界』−日韓演劇人の越境のかたち」を開催しました。日本と韓国の関係が政治的に膠着するなか,地道に文化交流を続けてきた人たちの事例を通じて,今後の日韓関係の未来を探ろうと企画したものです。
第1部は,本学教員と外部研究者による対談を行いました。日本植民地時代の朝鮮に生まれたことを「原罪」と意識しながら,終戦後に炭鉱労働や女性問題について多くの著作を発表した森崎和江を取り上げ,彼女の思想から日韓関係の展望を考えました。
第2部は札幌・大阪・ソウルの演劇人によるシンポジウムを行いました。韓国の劇団との共同作業を続けている北海道演劇財団「札幌座」と大阪の「Drama Mission Z號」の活動を映像を交えて紹介し,日韓交流を始めた契機について聞いたうえで,市民による文化交流が両国関係にどのような影響をもたらすのかについて討論しました。参加者は本学教員,学生,一般市民合わせて約40人でした。
日韓両国は政治,経済,文化などあらゆる面で歴史的に密接な関係にあった隣国であり,それは今後も変わることはありません。各分野で様々な研究が行われていますが,当研究院では特に文化的側面から両国の関係を考察する企画を今後も続けていく計画です。
 対談の様子 |
 パネルディスカッションの様子 |
11月30日(月)〜12月2日(水) 会場:低温科学研究所3階講堂
低温科学国際シンポジウム
主催:低温科学研究所/実施責任者:低温科学研究所 教授 Ralf Greve
低温科学研究所は,「低温科学国際シンポジウム」を11月30日(月)から12月2日(水)の3日間にわたり,低温科学研究所3階講堂で開催しました。
このシンポジウムは,当研究所の研究テーマである,寒冷圏及び低温環境下における諸現象に関する基礎的・応用的研究に関して,その最新の成果と将来展望について議論することを目的として企画しました。
シンポジウムでは,(1)水及び物質の循環(2)雪氷の新領域科学 (3)環境生物学(4)環オホーツク領域の研究について,英語による4つのセッションを実施しました。
今回の総参加者数は97名(うち,外国人研究者・外国人大学院生等14名)で,ドイツ,米国,スイスからの参加もありました。また,ブレーメン大学,スイス連邦工科大学,アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所等の,海外の大学・研究機関から招聘した7名の研究者から最新の海外研究状況等についても紹介が行われました。
昨今,環境問題においては寒冷圏の地球環境変動での位置づけの重要度が増してきています。そのため,サステイナビリティという観点から本シンポジウムは非常に有意義な会となりました。
 オープニング挨拶の様子 |
 ポスターセッションの様子 |
 参加者の集合写真 |
12月3日(木) 会場:学術交流会館講堂
サステイナブルキャンパス国際シンポジウム2015
主催:サステイナブルキャンパス推進本部,施設部/
実施責任者:サステイナブルキャンパス推進本部 プロジェクトマネージャー 横山 隆
「持続可能な社会実現のためのチーム・ビルディング」をテーマに,大学が社会的役割を果たすためにはどのような戦略と組織づくりを推進すべきか,具体的に議論することを目的としてシンポジウムを実施しました。
基調講演では,「社会的学習の場」というキャンパスの新しい役割と,教職員が周辺の地域社会と関わる価値の2つの視点から,3名の講演者を招聘しました。
米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のジュリー・ニューマン博士からは,世界をリードする一流大学として,またエネルギー負荷の大きい工学系研究重点大学として,MITがサステイナビリティ戦略をどう捉えているのか,そしてケンブリッジ市との連携プロジェクト「エコ・ディストリクト」がどのように推進されているのかを講演いただきました。カナダのブリティッシュコロンビア大学(UBC)は地元バンクーバー市との都市計画における協働事業の実績が多く,キャンパスの環境負荷低減でも連携しています。ジェームス・タンシー教授よりこの点について講演いただきました。名古屋大学は,大学執行部,教職員,建築環境に関わる研究室を巻き込んだキャンパスマネジメントの組織体制が確立していることで知られており,田中英紀特任教授よりその組織づくりと成果について講演いただきました。
基調講演後,パネルディスカッション「世界の課題解決と持続可能な社会構築に向けた大学の体制―札幌サステイナビリティ宣言(G8大学サミット,2008年)以後の北海道大学の取組」を行いました。経済学研究科長の吉見宏教授の司会のもと,三上 隆理事・副学長,川端和重理事・副学長もパネリストとして参加し,教育・研究という大学の“本分”にサステイナビリティ学をどう取り込みうるか議論を行いました。
 ニューマン博士の講演の様子 |
 タンシー教授講演時の会場の様子 |
 パネルディスカッションの様子 |
12月12日(土) 会場:フード&メディカルイノベーション国際拠点
HULT PRIZE@北海道大学 学内コンペティション
主催:Hult Prize Hokkaido Universities' Team/共催:フード&メディカルイノベーション推進本部/
実施責任者:国際広報メディア・観光学院 博士課程2年 Dicko Seydou
12月12日(土),道内初のHult Prize※学内コンペティションを本学で開催しました。総勢17チーム,計61名の学生が参加し,世界を変える社会企業の起業アイデアを競いました。本学の国際的な広報と共に,学生のために研究やアイデア,技術を実用的に使って国内外の社会に貢献できるプラットフォームを作ることを目的に,国際広報メディア・観光学院博士課程のDicko Seydouさん,保健科学院修士課程のKritika Poudelさん,教育学院博士課程の岩佐奈々子さんの3名が中心となって参加資格を得て,今回の開催に至りました。
学年や,国籍など多様な顔ぶれの17チームが参加し,今年度のテーマである世界の密集都市の課題解決のため,水,電力,農法,食料,ナノテクノロジーやゴミ問題など,様々な視点から提案を行いました。審査は,株式会社アミノアップ化学代表取締役会長の小砂憲一氏,在札幌米国総領事館広報・文化交流担当領事のハービー・ビーズリー氏,一般社団法人re:terra代表理事の渡邉さやか氏,株式会社グロービス研究員の小早川鈴加氏,生命科学院の西村紳一郎教授の5名が行いました。約120名の観客が来場して大会を盛り上げました。
優勝は,垂直農法キットを提案したチーム“Awrka”に決定し,第2位に食用ウキクサを提案した“がんばろう環境”が続きました。優勝チームは米国で行われる地区大会に出場します。
今回の開催にあたり,新渡戸スクールの難波美帆特任准教授及び人材育成本部の飯田良親特任教授に多大なるご協力をいただきました。来年度以降もHult Prize大会を開催し,持続可能な社会実現のために,国際的な学生のためのプラットフォームを形成していきたいと考えています。
※Hult Prize(ハルト・プライズ)
クリントン財団が後援し,国際的に急速に評価を高めているビジネス・スクール Hult International Business Schoolが実施する,大学生が世界を変える社会企業の起業アイデアを競う国際大会。起業資金となる優勝賞金100万ドルを目指し,毎年世界中の大学でコンテストが実施される。勝ち抜いたチームは予選を経てニューヨーク開催の決勝に進み,優勝者は国際的なビジネス・リーダーによる起業支援の機会を得る。2016年大会には,日本から本学と上智大学の2校のみが参加資格を得た。
 優勝チームの表彰式の様子 |
 第2位チームの発表の様子 |
 ボランティア学生による受付の様子 |
 参加者と審査員の集合写真 |
※計32企画のうち,11月5日(木)・6日(金)開催の「日本−インドネシア学長会議」及び11月16日(月)開催の「WHO研究協力センター指定記念講演会」は,北大時報12月号に記事を掲載しています。