名誉教授 吉田 仁志(よしだ ひとし) 氏(享年88歳)
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名誉教授 吉田仁志氏は,平成27年12月11日逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。 先生は,昭和2年5月8日北海道上川郡名寄町に生まれ,同28年3月に北海道大学理学部化学科を卒業,引き続き同大学大学院に進学し,同33年7月に同大学理学部化学科助手に任じられました。その後昭和37年5月には同大学理学部助教授,同49年5月に教授に昇任されました。平成3年3月停年により退職,同年4月に北海道大学名誉教授の称号を授与されました。この間,昭和53年から1年間はカナダ国立研究機構において誘導プラズマ発光分析法に関する研究に従事されています。 先生は,永年にわたって分析化学の教育・研究に努められ,水溶液中に存在する微量成分のための高感度,高選択的分析手法の開発と分離化学に関する研究に取り組まれてきました。初期の溶液噴霧発光分光分析法の開発に関する研究から始まり,有機試薬を用いる無機イオンの迅速光度定量に関する研究,その後の細管等速電気泳動,温度滴定,ボルタンメトリーなど研究領域は多岐にわたっています。特に,等速電気泳動法に関する研究では,錯形成やイオン対形成反応によりイオンの有効移動度を精密に制御する方法を開発され,化学的性質が酷似しているためにその分離が極めて困難とされていた14種のランタノイドイオンの一斉分離を達成しています。この成果は分離化学における錯形成平衡適用の典型的成果として外国のテキストにも紹介されるなど国内外から高く評価されるとともに,分析化学の発展に貢献するところ顕著であるとして昭和63年日本分析化学会から学会賞が授与されています。 学内では,入試委員会委員,評議員等を歴任された他,昭和64年1月から2年間教養部長として教養部改革に取り組まれました。学外でも,日本分析化学会北海道支部長等の他,昭和63年には同学会副会長として第37年会を札幌で成功裡に開催しました。 先生はまた,教育・研究を通じて多くの人材を育成され,先生の教えを受けた多くの方々が現在大学や研究所,教育界で活躍しています。 ここに謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。 |