役員便り  ※今号は,特定事項(新渡戸スクール)を担当する役員以外の副学長である山下正兼教授に寄稿していただきました。

副学長 吉見  宏

新渡戸スクール:1年を振り返って

副学長 山下 正兼 (やました まさかね)

 本学では「NITOBE 教育システム(New Initiative in Teaching Opportunities for Best Education)」に基づく学部生対象の新渡戸カレッジと大学院生対象の新渡戸スクールを実施し,グローバル人材の育成を図っています。新渡戸スクールでは,各研究科等で習得する専門性を活かす「+αの力(3+1の力)」を獲得させることで,世界の課題解決に貢献できる人材の育成を目指しています。
 新渡戸スクールの開校から1年が経過した現時点で,これまでの成果,問題点,及びその解決策について紹介させていただきます。

主な成果

1.主に修士課程の学生が対象の基礎プログラム(定員60名)に対し,117名の応募があり,64名が入校した。
2.主要4科目の授業アンケートにおいて,多くの学生が満足したと回答した(春ターム73%,夏ターム87%,秋ターム71%,冬ターム93%)。
3.「3+1の力」の獲得状況に関する学生の自己評価が上昇し,適性能力診断[SEQ:Student Emotional Intelligence Quotient]でも,それが確認された。
4.英語科目履修者の多くは英語力が上がったと自己評価し(春・夏ターム85%,秋・冬ターム100%),また入校時に比べてスクール生のTOEICスコアが平均で55点上昇した。
5.アンケートの自由記述では,「専門性の異なる学生との交流は貴重な経験だった」「チーム活動に必須の技能や英語力を得ることができた」「メンターとの交流は役立った」など,スクールの意図を評価する声が多数寄せられた。

主な問題点と解決策

1.大学院とスクールでの学習の両立が困難であるとの理由で7名の辞退者があった。これを踏まえ,柔軟な履修を可能とするカリキュラムの改訂を実施した(春〜秋タームの必修科目を春タームのみ必修とした)。
2.運営組織が縦割りで多層構造のため,迅速な対応が困難であった。そこで,副校長/教頭が参加する会議を週に1回定期的に開催し,諸問題に迅速に対応することとした。
3.来年度からの基礎プログラムの定員倍増や上級プログラムの開講に向けて,全学支援体制をさらに強化する必要がある。その第一歩として,全大学院から選出されている教務専門委員会委員に入校者選抜とアドバイザー業務を担当していただくこととした。
4.カレッジや同窓会との連携を強化する必要がある。スクール生がカレッジ・フェロー講演会に参加することを推奨,スクール生がTAとしてカレッジ生の教育を支援,スクール生の教育支援にあたるメンターを同窓会が推薦,などの方策で連携を強化する。
5.修士課程を主対象とする基礎プログラム科目は1年で終了するため,修士2年生への対応が困難である。スクールの目的は各大学院で習得する専門性を活かす力を獲得させることなので,スクール科目8単位の取得とポートフォリオに基づく「3+1の力」の評価により,修士号の取得を前提とせず,1年で基礎プログラムを修了させるのが望ましい。これは学生の就職活動にも有利に働くと期待される。

 新渡戸スクールを実際に運営して修正すべき点がいくつか見つかりました。基本構想に示された理想と現実のギャップを埋めるため,迅速に対応しましたが,まだ不完全な部分があります。来年度からは基礎プログラムの定員が2倍になり,新たに博士課程学生の上級プログラムも開始します。これまで以上に全学的な協力が必要です。今後も新渡戸スクールに対して,ご理解とご協力を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。

3+1の力
 「能力更新力」,「組織形成力」,「社会還元力」と,基盤となる「専門職倫理」
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