国立大学法人においても,第2期中期目標期間(平成22〜27年度)から使われ,国立大学法人評価委員会による「共通の観点」による評価対象となっています。本学においては,平成27年に「国立大学法人北海道大学コンプライアンス基本規程」を制定し,関係規定を運用しています。これは,第3期中期目標期間についても同様で,「法令遵守(コンプライアンス)に関する体制及び規程等の整備・運用状況」が評価確認事項例となっています。
最近では,国立大学法人法の改正にともない,大学運営の一部を説明する際に「コンプライアンス」のほかに,「ガバナンス」や「内部統制」という言葉がよく使われています。
まず,この3つは何が違うのか,どの様に関係しているかについて,できるだけ簡単に,皆様と共有したいと思います。
「ガバナンス」は,一般に「管理」や「統治」などに訳されていますが,大学においては,概ね意思決定に係る様々な組織構造や明示・黙示を含むその過程全般の意味と理解した方が良いと思います。言うなれば国立大学法人における意思決定の組織構造の一つであると理解できます。
「内部統制」は,金融庁の企業会計審議会が公表している「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」に定義の記述があります。そこには,「内部統制とは,基本的に,業務の有効性及び効率性,財務報告の信頼性,事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために,業務に組み込まれ,組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいい」とあり,その目的の一つとして「事業活動に関わる法令等の遵守」という言葉が入っています。
「コンプライアンス」は,単純に「既存のルールに従う」という意味だけではなく,社会的要請に応えていくという倫理的な要素も組み合わせたものと理解する必要があります。本学のコンプライアンス基本規程でも,コンプライアンスとは「法令,本学の諸規則又は教育研究及び診療に係る固有の倫理その他の規範に違反し,又は違反するおそれのある事実をいう」としています。

民間企業などでコンプライアンス違反が発生した場合,行政からの処罰や処分を受けることはもちろん,一般の人々からすると,その会社は内部統制も効いていない,したがって企業統治がないというイメージが広がり,消費者や取引先からの信用がなくなり,株主からの信用もなくなります。当然良い人材も採用できなくなります。これは企業にとっては大きな損失です。そのため,問題を起こして罰せられるよりも,日頃からコンプライアンス対策の充実を図っていくことになります。
本学においても役職員がコンプライアンスに取り組むということは,「本学の価値を高める取り組み」「本学の信頼性を世に広める取り組み」であると捉えるべきと考えれば良いのです。このため,コンプライアンス体制の構築と確実な運用を図っていくことが必要です。その際,リスクを徹底的に洗い出し,具体化し,それへの対策を講じていくこと,期待したシステムの機能が果たされているか定期的にチェック,モニタリングしていくことが重要なポイントです。
今後は,コンプライアンス教育として,@コンプライアンスの重要性,Aコンプライアンスが大学運営にプラスになること,B役職員が一人ひとりの振る舞いを中心に,本学の職群に応じた,階層別の研修,外部専門家による講習会,eラーニングの活用などを効果的なタイミングで実施すると同時に,監事と連携して内部監査も実施していきます。
本学は,道内外において約6億6千uの土地を所有しているほか,船舶も所有しています。札幌キャンパスには多くの人々が訪れ,総合博物館では7月のリニューアル後,既に10万人を超える人々が訪れています。この豊かな自然のもと,学生が自由に学び,国際的な教育と最先端の研究を進めているという特徴ある大学です。この北大の風土を絶やすことはできません。不適切経理,情報セキュリティの問題を乗り越え,皆様方のお力で進めていきましょう。