訃報

名誉教授 上山 英一(うえやま えいいち) 氏(享年85歳)

名誉教授 上山 英一 氏  名誉教授 上山英一先生が平成29年1月11日に逝去されました。先生は昭和7年1月に北海道夕張郡角田村にて出生され,同29年3月に北海道大学農学部畜産学科を卒業されました。昭和32年まで北海道立農業試験場宗谷支場にて技術補として勤務された後,北海道大学農学部畜産学科助手に採用されました。昭和36〜38年までアメリカ・ハワイ大学東西センターに留学された後,同39年に北海道大学農学部に新設された附属酪農科学研究施設助教授に就任,同54年には教授に昇任,同研究施設生産部門を担当されました。平成4年同研究施設の廃止決定により,農学部に配置換になり,以降乳生産学研究室を担当され,同7年3月に退職されました。この間,獣医学部の講師を併任され,農学部附属酪農科学研究施設立ち上げ時に尽力されるとともに,同施設長も務められ,教育研究ばかりでなく大学運営にも大きく貢献されました。さらに学外においても札幌大谷短期大学非常勤講師として教育にあたられました。ご退職後の平成7年4月には,北海道大学名誉教授の称号を授与されております。
 研究を通しては,乳牛の栄養・飼養・泌乳に関して多大な成果をあげられ,畜産学と畜産技術の進歩発展に大きく貢献されました。先生の研究業績は乳牛全般に関する広範囲なもので,特に牛乳成分組成の変動とそれに影響を及ぼす要因に関するものが出色でありました。牛乳中の脂肪,無脂固形分及び各種微量成分含量の変動に及ぼす乳期,季節,飼料などの影響を検討し,特に反芻胃内発酵によって産生される揮発性脂肪酸の組成が乳成分組成に関連していることを明らかにされました。また,北海道内の酪農家における乳牛の飼養実態と乳成分組成の関連についての調査・解析などもあわせて行い,酪農生産現場における牛乳成分組成改善に大きく貢献されました。放牧を中心とした草地利用型の牛乳生産に関する研究,乳牛用新飼料資源の飼料価値に関する研究,乳用子牛の育成に関する研究など,乳牛の栄養・飼養の基礎及び応用分野でも多くの成果をあげられました。上山先生は学会活動にも尽力され,日本畜産学会,同北海道支部,北海道畜産学会の評議員,北海道家畜管理研究会の副会長・評議員として,要職を務められました。
 以上のように,上山英一先生は北海道大学助手に採用されて以来,教授としての15年間も含め37年の長きにわたり,教育・研究面で優れた業績をあげられ,学術の発展と後進の指導育成に尽くすとともに,大学の発展に大きく貢献されました。また研究成果の社会還元にも確かな足跡を残されており,そのご功績は誠に大きなものです。後進指導にあたっては常に温かく,余暇の話題も豊富で,張りのある歌声で場を和ませた記憶は数え切れません。先生の長年にわたるご貢献に改めて感謝し,ここに謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

(農学院・農学研究院・農学部)

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