訃報
名誉教授 井 上 修 次 氏(享年91歳)
井 上 修 次 氏
 名誉教授理学博士,農学博士 井上修次氏は,平成12年3月2日午後7時20分頃,心不全のため逝去されました。
 ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,明治42年8月22日千葉県に生まれ,昭和7年3月東京帝国大学理学部地理学科を卒業,引続き同大学大学院(人文地理学専攻)に進み,昭和11年3月同大学院を退学後,ただちに陸軍士官学校の教授となり,終戦を迎えるまで同校に在職し,その間,法政大学の教授および明治大学,東京商科大学予科の各講師ならびに文部省資源科学研究所嘱託,文部省国定教科書編纂(師範学校教科書編纂)委員を歴任した。
 昭和21年5月内務省地理調査所に勤務し,昭和22年4月から5年間にわたり連合軍総司令部の天然資源局企画政策部に迎えられ技術顧問として天然資源の総合調査研究に従事した。
 昭和23年1月駒沢大学地理学科の講師となり同24年4月主任教授となったのち,北海道大学の招請をうけ,昭和27年4月文学部の教授に任ぜられた。爾来,昭和48年4月1日北海道大学を停年により退官されるまでの21年間,教養部・文学部において人文地理学を,また大学院文学研究科において社会学特殊講義を講ぜられその該博深奥な学識をもって,多くの学生の指導と研究者の育成にあたられた。
 同人は,人文地理学の諸研究とりわけ人口・地割および集落の研究に従事し,これらの分野における優れた研究成果を日本地理学界の機関誌「地理学評論」誌を中心に数多く発表し,学界の発展に寄与するところ大であった。研究分野は広汎多岐にわたり,独自の計測法を導入した地理学,野外調査を重視した農村地理学,人口地理学・集落地理学・地誌学・歴史地理学・地図学・地理学原論等に及んでいる。また,1964年ロンドンで開催の第20回国際地理学会議における「日本と集落測定」の研究発表は,参加各国の識者から多くの賞讃を受けるとともにその特異な方法に大きな関心が寄せられた。同人は,昭和36年3月「斜面傾度の測定に基づく日本山地起伏の研究」により東京大学から理学博士の学位を,昭和37年2月「地割の形成と展開」により北海道大学から農学博士の学位をそれぞれ授与されている。
 同人の最も精力を傾倒してきた独自の地理学理論に基づく人文地理学ないし,歴史地理学的研究は同人が東京帝国大学入学以来半世紀におよぶ研究の継続蓄積によるものであり,昭和48年4月1日北海道大学を停年により退官,駒沢大学教授として2年間勤務した後も,引続き資料の蒐集調査に努められた。
 以上のように,同氏は,学界・教育会において多大の貢献をなし,その功績はまことに顕著でありました。
 ここに,井上修次名誉教授のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
 なお,同氏の生前の意向により,今回掲載するに至りました。
 
(文学研究科・文学部)