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スラブ研究センター市民講座
「稚内2000:タンカー油流出事故にどう備えるか」を開催

 
 オホーツク海のサハリン北東部大陸棚では昨年7月から石油開発が始まっています。氷に覆われない6ヶ月間だけ生産が行われ,10万t級のタンカーが10日に1度の頻度で宗谷海峡を通過しています。ナホトカ号事故の経験から,万が一タンカー事故によって原油が流出すれば,わずか42kmの幅しかない海峡の北海道側を汚染させる可能性があります。しかし,これまでのところ地元ではほとんど危機管理体制が進んでいませんでした。
 そこで,ロシア・極東地域を研究対象のひとつにしているスラブ研究センターでは,石油開発と防災対策の現実を知ってもらうために,本年11月25日に稚内北星学園大学で市民講座を開催しました。
市民講座開催風景
市民講座開催風景

 参加者は130名にものぼり,地元の関心の深さを物語っています。とくに,海上保安庁,気象庁,自衛隊等の国の出先機関,北海道の出先機関,稚内市,漁業関係者,自治会からの参加が目立ちました。稚内はサハリンと至近距離にあり,経済交流も活発で,サハリン沖の石油・天然ガス開発による後方支援基地としての経済的な利益に期待しています。当初,環境面を強調しすぎると,開発に影響を及ぼし,地元にマイナスになるのではないかという懸念がありました。しかし,漁業や観光はオホーツク沿岸地域にとって最も重要な産業であり,そのことが地域住民の関心を呼んだものと思われます。「地域の自然は地域住民の手で守る」という市民意識が醸成されれば,大学と地域住民とのインタラクションも深まることでしょう。
 後援をいただきました稚内海上保安部,宗谷支庁,稚内市,稚内北星学園大学にお礼申し上げます。
 
(スラブ研究センター)