訃報
名誉教授 藤 井 智 瑛 氏(享年78歳)
名誉教授 藤 井 智 瑛 氏
 名誉教授 藤井智瑛氏は,平成13年3月30日午後10時18分,多臓器不全のため逝去されました。
 ここに,生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,大正12年2月19日青森県に生まれ,昭和22年9月東京帝国大学文学部独逸文学科卒業後,同年11月旧制金沢第四高等学校講師を嘱託され,昭和23年4月同高等学校講師,昭和24年6月金沢大学第四高等学校講師兼金沢大学講師,昭和25年3月金沢大学第四高等学校教授兼金沢大学講師,同年同月金沢大学講師,昭和29年11月広島大学皆実分校助教授に昇任,同大学文学部独文学第二講座助教授を経て,昭和38年4月北海道大学文学部助教授に配置換,昭和44年7月教授に昇任,昭和58年4月言語文化部教授に配置換,昭和61年3月31日限り停年により退職,同年4月に北海道大学名誉教授の称号が授与されました。
 先生は,三十有余年の永きにわたり,情熱をもって幾多の学生のドイツ語教育に従事し,研究面では,ドイツ語学に関する深い学識の上に立って,特に,中世高地ドイツ語の研究を専門領域とされ,昭和33年8月から昭和35年10月まで,西ドイツのテュービンゲン大学において古代及び中世高地ドイツ語ドイツ文学について研究を深められた。近年,アメリカを中心とする新しい言語理論の展開により中世ドイツ語研究は,ドイツにおいてもわが国においても地味な分野となりつつあるが,その中にあって,徹底的な資料収集と精密な考察に基づく優れた業績は,貴重な文献としてこの分野の研究の進展に貢献されました。
 また,ドイツ語教育者として,本学においては,主として教養部のドイツ語を担当されましたが,わが国のいわゆる伝統的な文法訳読授業を改善して,学生に,現代ドイツ語の能動的な能力を養成する必要を感じられ,そのため,教授法に,多大の時間とエネルギーを注がれ,本学のドイツ語教育の改善に大きく寄与されました。
 さらに,学部のみならず,中世高地ドイツ語の優れた研究に基づき,昭和40年4月から昭和44年3月まで,本学大学院文学研究科の講義を担当され,本学ただ1人の中世高地ドイツ語専攻者として本学の教育に貢献されました。
 学内においては昭和42年から2年間,学生部委員会委員として熱意をもって学生の指導にあたられました。
 学会活動については,日本独文学会理事として学会の発展のために力を尽くされました。
 このような永年にわたる教育活動,中世高地ドイツ語の研究並びに本学の管理運営に尽力された功績に対して,平成11年の秋の叙勲により,勲三等旭日中綬章が授与されました。
 ここに先生のご冥福を心からお祈り申し上げます。
 
言語文化部