総長就任あいさつ
 
中村睦男

中 村 睦 男

 構内の木々も彩りはじめた時節のなか,このたび北海道大学第16代総長に就任いたしました。国立大学の存在意義が社会的に問われている今日にあって,北海道大学が教育および研究の両面にわたって益々活発に活動できる大学であるように,教育と研究の環境づくりに力を尽くしたいと考えております。幸い,私の代より副学長の三人体制および総長補佐と総長室の制度化によって大学の運営体制が整備されますとともに,それぞれのポストに最も適任の方に就いていただき,心強く思っております。
 申すまでもなく,北海道大学の教育研究活動を活性化するのは,教育研究活動を直接担う教官とそれを補佐する職員の個々の創意ある活動であり,また,教育研究活動の組織単位である部局であります。しかし,新しい学問的,社会的需要に応じて大学全体の立場から教育研究の企画調整を行い,既存の部局の枠を超えた新しい教育研究体制を作ることも大学の大きな任務になっております。
 大学院研究科の再編および研究活動の活性化につきましては,この3月にまとめられた情報系に関わる研究科,バイオサイエンスに関わる研究科,創成科学研究機構および情報基盤システムの各検討ワーキンググループの報告を基にして,検討を加えていくつもりでおります。このうち特に,新しい研究領域を創成するために,中長期的な視野で部局横断的な研究を企画立案するための全学的な機構が必要であることは,今回の創成科学研究機構検討ワーキンググループ報告書の指摘するとおりと考えます。また,既存の重点化した大学院では,重点化の実質を高めるための方策について,とりわけ文系での法科大学院(ロースクール)やビジネススクールなどの高度職業人養成のための大学院の新設を,さらに検討していかなければならないと考えます。
 基幹総合大学としての大学院教育の充実にとって,特に本学の地理的環境を考えますと,全学教育および学部専門教育を通じて,専門的知識や技術の習得はもとより,主体的かつ総合的な人格の形成をはかり,全人的な教養を身につけた人材の養成が是非とも必要なことであります。したがいまして,学部初年次の全学教育では,今年度から整備されたコアカリキュラムを円滑に実施することによって,すべての専門教育に必須の教養教育を行ない,さらに一般教育演習や論文指導などによる少人数教育によって,学生の科学的思考力と表現能力を高めることは,極めて重要な課題であると考えます。教養部廃止後の全学教育実施体制を一層強化するために,責任部局はもとより全学の教官の皆さまのご協力をお願いいたします。また,少子化が進むなかで基礎学力と意欲のある学生を本学に迎えるためには,本学の研究と教育を魅力的な内容にしなければならないことはもとよりですが,さらに,本学での研究と教育の内容を高校生によく知ってもらえるように,高校との連携を強める努力を重ねる必要があります。そして,就学相談,健康相談,就職相談など学生生活の日常に対する懇切な援助体制の強化は,教育を充実するうえで不可欠の課題であると考えております。
 当面取り組まなければならない最大の課題は,法人化問題であります。この3月に新たに設けられた法人化問題検討ワーキンググループで精力的に検討しているところであります。国立大学の法人化問題は,現在,その枠組みの検討が山場にさしかかっています。ワーキンググループでは,本学の基本的な設置形態をはじめ,法人化する場合には,「学問の自由」を原則として,本学の一層の発展の基礎となるよう,運営体制,目標評価,人事制度,財務などの制度設計についても,鋭意検討を重ねております。これからも,法人化の制度枠組みを本学が意図する改革の方向に近づけるため,最大限の努力を行っていく所存です。
 本年は,北海道大学の創基125周年を迎える記念すべき年にあたります。125周年の記念事業を行うための様々な準備や募金に尽力くださっている教職員の皆さまのご苦労に心から感謝申し上げます。125周年を記念しますことは,125年の歴史を踏まえ,その成果を未来へ受け継ぎ発展させることに他なりません。これからの4年間が北海道大学の新たな発展の幕開けになりますよう,全学の教職員の皆さまのご協力をお願いいたします。

 
略   歴
 
生 年 月 日昭和14年2月7日
本  籍  地北海道
昭和36年3月北海道大学法学部法律学科卒業
昭和38年3月北海道大学大学院法学研究科公法専攻修士課程修了
昭和38年4月北海道大学法学部助手
昭和45年7月北海道大学法学部助教授
昭和48年9月法学博士(北海道大学)
昭和49年7月北海道大学法学部教授
昭和59年12月北海道大学評議員
昭和63年12月
昭和63年12月北海道大学法学部長
平成2年12月
平成9年4月北海道大学副学長
平成11年3月
平成12年4月北海道大学大学院法学研究科教授
平成13年4月北海道大学大学院法学研究科附属高等法政教育研究センター教授
平成13年5月北海道大学総長
(専門分野)憲法