北大再発見

CAMPUS TOUR




G ポプラ並木の先輩後輩
[長生きしてね]


 北大といえばポプラ並木,とは一体いつ,誰に教わったのであろう。
 一般に北大のポプラ並木として知られているのは,理学部の北西側,農場に沿って北に伸びる全長250mほどの並木のことである。クラーク博士像と並んで,旅行ガイドブックには必ずと言っていいほど紹介されており,春から秋にかけてはひっきりなしに観光客が訪れる。
 岩沢健蔵氏の『北大歴史散歩』(北大図書刊行会)には,この「有名なポプラ並木」に関するおもしろいエピソードが紹介されている。1982年に観光記念タバコのパッケージにポプラ並木を使うという話が持ち上がった。「国有財産(人の胸の高さで直径10cm以上の樹木は国有財産なのだそうだ)であるポプラ並木を市販商品の,しかも有害説喧しいタバコのパッケージに使うとはいかがなものか」と大学事務局で議論になった。結局は諾否の返事が出ないまま商品は出回ってしまったらしいが,一般にはポプラ並木の図柄は好評だったという。
 ポプラ(正式にはセイヨウハコヤナギ)が北海道にやって来たのは明治の中頃,アメリカから防風林用に種子が輸入されたのが最初とされる。北大ポプラ並木の最初のポプラは1903年に植えられた。ただし,並木と呼べるほど立派なものになったのは1912年,当時の林学科の実習生によって45本が植栽されてからであり,その後,1959年の台風による倒木被害,補植を経て現在の51本のポプラ並木となったといわれる。
 しかし残念ながら,ポプラ並木は1970年から現在に至るまで老朽化による倒木,落木の危険が大きいとして立ち入り禁止となっている。
[早く大きくなーれ]
先に引いた『北大歴史散歩』によれば,ポプラの寿命は60年から70年だそうだから,並木のポプラは見た目は若々しく見えても実はすでによぼよぼの老木のはずだというわけである。
 ところで,最近このポプラ並木に代わる新しい「北大のシンボル」となるべく「平成ポプラ並木」が誕生した。昨年の10月に行われた記念植樹は創基125周年記念事業の一環である。
 新ポプラ並木は,旧ポプラ並木から農場を隔てて500mほど北に位置する。場所の選定には様々な条件が考慮された。まず,ポプラは大きくなる木なので,広大で平坦な田園風景が適していること,人や車が並木の中を往来できること,並木の延長上に寮歌「都ぞ弥生」で「手稲の嶺 黄昏こめぬ」と歌われた手稲山が眺望できること,そして広大な田園の中に新旧の並木が眺望できることなどであった。
 並木は最終的には全長約300m,幅16mとなる予定である。今回の植栽では現在ある他の樹木を考慮して70本のポプラの若木が植えられたが,この若木は旧ポプラ並木から採取した枝を農学部演習林の苗圃で挿し木育成したもので,親木と同じ遺伝子を持つ,いわば「クローン」ポプラである。
 植樹には大学関係者の他,市民も参加,一本一本の苗木を植えながら,新たな「北大のシンボル」の未来を思い描いた。およそ20年後には,成木となった背高のっぽのポプラ並木が我々を迎えてくれるはずである。

(浜 井 祐三子:言語文化部講師)