1975年水産学部卒業
鈴木 祥市
Suzuki Syouichi
研究船淡青丸船長
(文部科学省技術官) |
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地球に初めて生命を生みだし育んできた母なる海。そこには陸地以上にダイナミックな世界が広がっています。仮に海水を取り除いたとしたら、その地表は噴煙や火山灰で一杯になるでしょう。日本海溝の1万km近い海底には魚、ウミ蜘蛛、イソギンチャクなどが生息し、海流は、表面では風に従い深層では圧力差で動きます。また、過去に海面が180mも下降した痕跡もあり、産卵から成魚までの過程が不明な魚類も多数います。近年、地球環境の研究をすすめる上で、海の研究の重要性がますます高まっています。しかし海は宇宙と同様に広大であり容易に人が到達することができません。そこで、海洋研究船の多種多様な観測作業が大切な役割を果たすのです。
私が働いている東京大学海洋研究所には淡青丸(610トン)と白鳳丸(3991トン)という二隻の研究船があり、研究海域は日本の沿岸から遠洋、極域までに渡ります。洋上での観測作業は常に自然条件に制限され、限られた船内の機材、設備と人材を有効に使う知恵が必要です。乗組員は船の運航はもちろん、観測作業の支援・主体者として、研究目的を理解し機材や観測手法を確認してその場での最善の作業を検証します。 研究者が持ち込む機材や観測手法が機能することが成否を決めるからです。変化する自然条件のなかで観測作業を完遂するために乗組員は合理的に自然を探求する眼と頭脳と知識が必要です。多少口幅ったい言い方ですが困難な状況でも知恵と工夫で観測作業をこなす技術者集団がいてこその研究船であり、自己研鑽された志のある人材こそが研究船の最高の財産なのです。運命共同体である研究船においては人材に勝る宝はありません。これからも北海道大学から一人でも多くの海の研究者が生まれ海洋の研究が発展することを期待します。
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1995年獣医学部卒業
小林 万里
Kobayashi Mari
特定非営利活動(NPO)法人
北の海の動物センターコーディネーター
博士(獣医学) |
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世界は海で繋がっており、そして大地は海に支えられている。
2002年3月にNPO法人「北の海の動物センター」を設立して、1年が過ぎようとしています。この法人はq海に関わる調査・研究、w
海洋生態系保全案の立案、e 啓蒙普及の3つの柱で活動をしています。調査・研究の中心である北方四島および周辺海域は第2次世界大戦後、日露間で領土問題の係争地域であったため、約半世紀にわたって研究者すら立ち入れない”世界最後の秘境“とされてきました。査証(ビザ)なしで日露両国民がお互いを訪問する「ビザなし交流」の門戸が、1999年より各種専門家にも開かれたため、長年の課題であった調査が可能になりました。その結果、「北方四島」海域は世界有数の生物多様性に富む海域であると共に今なお未開発の原生的海洋生態系が維持されており、陸上には莫大な海の生物資源を自ら持ち込むサケ科魚類(河川の魚)が高密度に自然産卵しており、原生的で「手つかず」の生態系が維持されていることがわかってきています。
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2002年「択捉島生態系専門家交流」
訪問団員 |
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当団体の最終目標は、「北方四島」を中心に北海道沿岸・極東ロシアを含めて、「人間」「動物」「環境」をキーワードに海の生態系を考え、21世紀の人間生活のあり方を模索していくところにあります。
私が「北方四島」に携わってから現在興味を持っていることは、どこに「動物」がいるのかということではなく、どうしてここに「動物」がいるのか、と言うことです。言い換えれば、「生物」同士の繋がり=生態系を知りたいのです。もう一つは「海」です。人間にとってはアプローチしにくい領域にも拘わらず、これまで人間は海の中の多くを利用してきました。これからの「海」のあり方を考えていくことが必須であると思っています。当団体の活動がその突破口になることを望んでやみません。
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