〇年ほど前、北大に赴任して最も印象的だったのはキャンパスの美しさである。今でもなお、昼食を終えて緑の美しい中央通りを研究室に戻るとき、鮮やかな黄色に染められた銀杏並木の下を歩くとき、真っ白な雪に覆われた中央ローンを眺めながら登校するときなど、この大学で過ごすことのできる幸せを感じることが稀ではない。

 
う一つ驚いたのは観光客の多さである。私の母校は全国有数の醜悪なキャンパスを誇る九州の某大学であるが、観光客など薬にしたくとも見あたらなかった。世論調査を行ったわけではないが、北大が日本で最も観光客に人気のある大学の一つであることは間違いないであろう。

 
大が観光名所となった理由はいろいろと考えられるが、その大きな要因がキャンパスそれ自体がもつ魅力にあることは疑いない。緑あふれる風景、広々とした空間、風格ある建物など、日本には珍しい、整然と美しい景観が観光客を引きつけてやまないのではなかろうか。そしてこのことは学習・研究環境が優れていることを同時に意味しており、個人的には悪いことではないと思う。

 
っとも、現状を維持することは容易ではない。教育研究を充実させるためには新たな施設を建築する必要があるし、場合によっては貴重な木々を伐採することも求められる。しかし、放置すればキャンパスの「乱開発」が進みかねない。最近日本の都市景観の無秩序・乱雑さが改めて指摘されている。北大がその轍を踏まないことは、観光客だけではなく、ここで生活を送るすべての人にとっても関心事たるべきではないだろうか。







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