第T部 教員の総合的業績評価について
第1章 教員の教育,管理運営,社会貢献業績について
はじめに
 大学が自主性を維持しつつ,教育研究水準の維持向上を図るためには,教員が大学の管理運営にかかわることが求められる。これまで,個々の教員の業績評価は,ともすれば研究業績が重視され,教育や管理運営に係る業績は適正に評価されてこなかったが,教員個々の評価は,これらの業績を含め,総合的に行う必要がある。
 こうして,平成10年度の点検評価委員会では,「個々の教員の教育,管理運営,社会貢献に係る業績調査」等が平成11年度の課題とされた。そこで,平成11年度の点検評価委員会は,平成10年度の教員の教育,管理運営,社会貢献に係る業績調査を実施することとし,11月1日から11月19日の期間に,全教員を対象に調査を実施した。
 
調査票の提出状況
 調査は,11月1日に在籍する教員2,147名を対象に行なわれたが,1,684名から回答があった。調査対象期間が平成10年度となっていることから,平成11年4月以降の新規採用者および転入者等を除外すると,提出率は82.9%となる。この数値は,教員業績評価に対する認識が定着するとともに,教員が本調査の実施に高い関心を示した結果といえる。
 
教育評価
(学部教育)
 学部教育の授業負担は,全部局の平均が,科目数で3.00科目,実働単位数で6.82単位である。これに演習・実験等を加えると,全部局の教員の実働単位数は6.47単位となる。一般論として,学部教員1名は,年間平均3科目を担当し,6.5〜7単位弱の授業を実施していることになる。ただし,この数値は,あくまでも全教員の平均値であり,学部によっては,担当総科目数が10科目を超える教員もみられる。
  学部教育の実績:平均値(表へ
 
(大学院教育)
 大学院における学位取得者は,修士・博士を合わせ,2,389名である。この実績に対し,教員1名の大学院教育の授業負担は,全部局の平均が,科目数で1.47科目,実働単位数で5.03単位である。研究科によって違いはあるが,一般論として,大学院教員は,3.93人の大学院生を指導し,5単位前後の授業を実際に実施し,毎年1.44人が修士または博士の学位を取得していることになる。大学院重点化した研究科では,学部教育より多い授業を負担しているところが少なくない。
 また,大学院では,留学生も顕著に増加している。全部局で,700名の留学生が研究指導を受けており,教員1名当たりの留学生指導数の平均は0.42人で,大学院教員の約2名に1名が留学生の指導をしていることになる。
 助手の学部教育・大学院教育に対する貢献については学部によって差があるが,文学部,教育学部,理系・医系の研究科・学部,研究所では,学部学生卒業論文指導,大学院学生の教育指導に対する助手・講師の寄与が大きい。
  大学院教育の実績:平均値,実数値(表へ
 
教育改善に関する業績
 大部分の教員が,教科書執筆,教材の作成などにとどまっており,教育改善に関する著書・論文等の執筆は,一部の学部の一部の教員に限られている。また,FDの企画・運営,FDへの参加もごく少数にとどまっているが,そのなかでは,医学部,工学部,歯学部などの積極的な取り組みが目立つ。FDへの取り組みは,教員の教育能力の開発に大きな意義をもっており,全学的な取り組み,および部局毎のFDの企画・運営・実施などにより,数値を高めることが望まれる。
  教育改善の実績:実数値(表へ
 
管理運営の業績
 全部局の教員を単純平均すると,教員1名は0.65の全学的な委員を負担し,所属部局では1.16の各種委員等を負担している。教授・助教授1名は,少なくとも1つ以上の全学的委員を分担していると考えられるが,とくにスタッフの少ない部局では負担数が多くなっている。また,所属部局等では,教員1名が1つ以上の委員等を分担していることになる。しかし,ここでも部局によって顕著な差が見られる。農学部,医系学部では,管理運営に対する助手の貢献も大きい。カリキュラム改革,入試改革,大学院改革などの動きのなかで,教員の管理運営に要する負担は増加しており,教育研究に無視できない影響をあたえつつある。
  管理運営の実績:平均値(表へ
 
社会貢献の業績
 全部局の教員が就任した審議会,委員会等の総数は,1,051件であるが,部局によって大きな違いがある。国家試験委員は,工学部,歯学部,医学部等が多くなっている。さらに,その他の社会貢献の全部局の平均値が0.31という数値が示すように,教員は,法定の審議会・国家試験委員など以外の貢献を社会から求められており,その負担も増加しつつある。
 学会活動は,全部局の平均では,教員1名が1.33件の役職を負担しており,とくに学会の多い医学部,獣医学部では,負担が顕著になっている。また,医学部,歯学部,獣医学部では,教員全員にわたって,長時間を診療等に費やしている。
  社会貢献の実績:実数値,実数値(表へ
 
社会人学習・入学案内・高校生の体験入学等
 近時,社会人を対象とした各種の公開講座・講演会が実施されており,とくに医学部,工学部,水産学部,それに学部以外の研究所等の出番が増えている。また,多くの部局が,次代をになう高校生に対する積極的な情報提供に取り組んでいる。
 
むすび
 本調査は,日頃表面には出にくい大学教員の多様な活動の一端を明らかにし,個々の教員が,研究のみならず,教育,管理運営,社会貢献の面で果たしている多様な役割を,具体的な数値によって示したものとして大きな意義がある。これらの数値は,同時に,大学が有する人材の豊かさを社会に対して発信することにもなる。
 最後に,本調査は,全国の大学でもほとんど例をみない調査であったが,個々の教員が教育,管理運営,社会貢献において果たしている役割を,自ら確認し,評価し,それを社会に対し説明するための基礎データとして活用することが期待される。
 
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