本年度の調査(平成16年度後期および平成17年度前期)で,本格的なアンケートの実施は7年目となる。前回から結果の公表は,印刷物を使わずホームページ形式のみになった。これにより,関連する情報へのリンクなど印刷物とは異なる表現ができるため,それを利用してわかりやすくするよう心がけた。
教員の実施率は67%(担当教員数1,424名中実施教員数952名)であり,授業数では,実施率89%(実施授業数1,269)に達する。強い強制力を持たないアンケートとしては高い実施率ではあるが,ここ数年値に大きな変化はない。この制度での可能な上限に到ったものと推測される。実施率を上げるためには,制度の改正が必要であろう。
総合平均の年代別変化をみると,多くの学部で第1回目の調査から総合評価は徐々に良くなり,ここ数年はほとんどの部局で平衡に達している。ただし,部局間の差異は認められる。教員数が少ない部局があることや,科目によっては評価が低くなる傾向があることなど,いくつかの理由が考えられるが,さらに良い評価が得られるための努力が期待される。
設問別に上位2項目「強くそう思う」と「そう思う」の合計点を算出すると,13「授業の履修目標を達成できた」, 17「自分はこの授業に積極的に参加した」が50%以下である。達成感が低いことや,参加型授業とはなっていない講義が多いことは,学生の学習意欲の低下にもつながるので継続的な努力が必要である。FDなどで,参加型授業の手法をさらに広める努力が必要である。全体として項目毎の評価は全回よりも良くなっている。しかし,上記以外でも上位2項目の合計が60%以下であるものをあげると,5,6,7,8,11,12,14,15の8項目に及び,まだまだ改善の余地のある講義が多いことが推測される。
自由意見は,昨年度と同様,学生が何らかの面で特に優れていると判断している意見が多い授業を抽出し,その意見を紹介することにより,授業を評価する学生の視点や,高い評価を受ける授業の特性を明らかにするよう配慮した。授業名と学生のコメントからだけでは授業の内容が推測できない場合もあるので,シラバスの一部を掲載した。抽出した意見が伝えているのは,学生は教員の総合的授業実行方法(授業への熱意,教育媒体・負担の適正さ)と授業への満足感・授業における達成感を特に重視しているということである。抽出した意見の多くがこれらの点を指摘し,評価していた。
今回,初めての試みとしてアンケートの結果に関する教員からのコメントを募集し,ホームページに掲載する。授業における多様な問題や,アンケート項目,アンケートに対する意見が寄せられている。例えば,調査項目が系統的に構成された講義か演習に対応しており,それに該当していないと評価が低くなることなどが指摘されている。このようなコメントは,今後の調査や教育改革の参考になるものと期待される。
平成17年度から北海道大学は法人化され,評価室が従来の点検評価委員会の業務を引き継いだ。「学生による授業アンケート」については,中期目標・中期計画において,「引き続き実施するとともに,その結果への教員の対応を学生に公開する」ことが明文化されている。このコメント集はその一環である。
さらに,評価室では授業アンケートと成績との関連性を検討するために,平成16年度後期授業において,例数を絞って,個別学生の成績と授業アンケートの数値が対応する記名式アンケートを実施し,分析した。その結果,記名式と無記名式でアンケート評価点において統計的に有意な差はなかった。したがって,無記名式アンケートでアンケートを実施しても有効な結果が得られることが確かめられた。また,高等教育開発機能総合センターでは全学教育についてクラスごとの成績分布と授業アンケートの関係を分析した。この解析では,25から100名の中規模クラスでは,成績と授業評価が正の相関を示すことが明らかとなった。
評価室に設置された「授業評価ワーキンググループ」では次年度(平成18年度後期)に利用できるよう,以上のコメントや解析の結果を参考にして,アンケート項目の再検討を行う予定である。また,次回(平成18年度前期)には,新しい項目として1週間当たりのその科目の自習時間が追加される。単位の実質化が行われているか否かが科目毎に判明することになろう。
学校教育法の改正により,大学は7年に1度認証評価を受けることとなった。認証評価機関の一つである大学評価・学位授与機構が平成16年2月に公開した「大学機関別認証評価」の大学評価基準は11項目で構成され,その9番目は「教育の質の向上及び改善のためのシステム」である。このなかで,大学が学生の意見を的確に聴取し自己点検評価に反映するとともに,【評価結果を教育の質の向上・改善に結びつけ,具体的かつ継続的な方策を講じる】ことが求められている。
本授業アンケートの大きな目的は,結果を各教員にフィードバックすることにより,各教員が自らの授業の課題等を見つけ,授業を改善することにある。本学では早くから全学FDを実施するなど,教育改善に力を入れてきた。各学部でも学問分野に応じたFDを実施するところが増えてきており,医学部,歯学部,水産学部,工学部がほぼ毎年実施している。水産学部の学部FDでは,本授業アンケートで高い評価を受けた者による講義の後に授業改善に関するグループ討論を行うなど授業アンケート結果を組織的に活用する取組も始められている。これらFDの実施だけでなく,TA制度の効果的利用法,e-Learning等の新しい技術を用いた教育業務のサポート体制など,さらなる組織的な教育改善の取り組みに期待したい。