文系部局

○芸術学演習 文学研究科教授  北村 清彦

@授業の目的・内容

この授業の最終的な目的は芸術学に関する卒業論文を執筆することである。そのために二年次より、研究課題の設定、資料の調査・収集・分析、論理の構築、論文作成などを行い、一人に一時間程度の研究成果の発表および質疑応答の機会が与えられるが、一度限りの受講で終わることなく、四年次まで継続して受講し研究を発展させるように指導している。「芸術学」の範囲は、歴史的にも地域的にも広く、また扱う芸術のジャンルも多様多彩であるから、研究発表には文学研究科の「芸術学講座」に所属する教員全員が出席している。学生にとっても自身の研究とは直接関わりのないように思われる他の学生の研究発表を聴講し、討議に参加することによって、新たな発見や関心が呼び起こされることになる。

A授業実施上の取り組み・工夫

この演習で単位を取得するために三つの課題が課されている。

1)自らの研究成果を約三十分程度で発表し、参加者全員からの質疑に応答すること。そのための準備として発表原稿および視聴覚資料をパワーポイント等によって作成しなければならないが、オフィスアワーおよびその他の時間を利用して学生が頻繁に指導を受けに来るようになり、またTAや大学院生に資料の作成法などについて助言を自ら求めるようになった。さらにこの発表での質疑応答をふまえて、学生は毎学期末にレポートを提出し、それらの蓄積によって卒業論文の執筆が無理のないものとなる。

2)学期のうちに数度、学外の美術館などで開催されている展覧会に見学に出かけそのレポートをメールによって提出すること。この展覧会評はTAの協力によって、芸術学講座のホームページ上に「展覧会のツボ」として公開され、既に10年近くのバックナンバーが揃っており、学外の関係者からも好評を得ている。従ってレポートも公開に耐えうるだけの水準のものが求められる。展覧会には授業の一環として見学に出かけることもあるが、学生は主体的かつ定期的に美術館や画廊などに足を運ぶことが期待されている。

3)毎回の授業で発表を担当する学生以外は、その発表に関する議論に参加するが、時間の都合上必ずしも参加者全員が意見を述べることができないので、その時の発表内容や質疑応答、自らの理解あるいは疑問点、感想などをまとめた「ノート」を提出するようにした。これにより発表の聴講がその場限りのものに終わらず、関心は広がりまた持続するようになった。またこの「ノート」は教員が必ず目を通し、各自に必要なコメントを書き添えて返却しており、教師と学生との意思疎通が多少なりともスムースになった。

Bその他

この「芸術学講座」所属の教員・学生が総出となって実施される演習を私たちは「全体ゼミ(全ゼミ)」と称し、また教員が個々に担当している、それぞれ「美学」「文化学」「西洋美術史」「日本美術史」に関する演習を「個別ゼミ(個ゼミ)」と称している。学生には「全ゼミ」と併せて四つの「個ゼミ」を必ず履修するように指導している。このように教員が相互に協力し、開講される科目を有機的に連携させることによって、学生は広範囲に及ぶ芸術学の領域を渉猟できるだけでなく、様々な問題意識、知識、方法論、発表技術に接することができる。このような集団的な教育方法は大学院にまで共通する本学の「芸術学講座」の大きな特徴である。

現在の北大の学生にとって一番大事でありかつ足りない部分は、課題解決の能力以上に、自らの課題を発見する能力であると思われる。そのためには常に多方面へと関心を向けていなければならず、本研究を通じてそのような態度を身につけた学生は、将来どの分野に進むにしろ有為な人材となりうるはずである。


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