教員の総合的業績評価について(概要)

 

1.経 緯

 平成8年度点検評価委員会(管理運営専門委員会)が,個々の教官の教育業績と貢献,研究業績,社会への貢献,学部及び大学への貢献等を総合的に評価する必要性を提起

 

1) 北海道大学は,平成4年度から教育活動,研究活動の自己点検評価を行ってきた。このなかで,平成4年に研究活動の成果を指標とする評価指標が論じられた。平成6年には研究成果の質や様々な指標が検討され,平成7年には「研究業績のデータベース構築」が検討され,平成8〜9年にデータベース構築,平成10年には研究業績のデータベースのホームページによる公表が行われた。

2) 教育業績評価に関しては,平成4年に,教育の改善のために「学生による教育指導の評価」及び「教官のための教育指導研究会」が提案され,「学生による教育指導の評価」は,平成6年に授業をもつ全教員を対象とする本実施があり,平成7年には「学生による教育指導の評価による教員の意識と行動の変化の評価」が行われた。この流れの中で,研究業績のみならず,教育業績評価の必要性が明確になってきた。

3) 平成7年に教養部が廃止され,学部一貫教育が開始される際に発足した高等教育機能開発総合センター高等教育開発研究部は教育業績評価の研究も任務としており,平成8年度の研究にこれをとりあげ「北海道大学における教育業績の評価法」をまとめ,この成果は点検評価でも取り上げられた。ここでは,教育業績,研究業績,管理運営への貢献を合わせて総合的評価も必要であると述べられた。

4) また,平成8年度の点検評価委員会(管理運営専門委員会)からの検討課題として「教員の総合業績評価と流動化」があげられ,個々の教官の教育業績と貢献,研究業績,社会への貢献,学部及び大学への貢献等を総合的に評価する必要性が提起された。

 

2.目 的

 総合的業績評価の目的は,大学の総合機能の社会の要請に即した改善

 

 大学の点検評価は,大学が,日本,世界の将来を担う社会責任を果たしているかどうかを評価し,社会から求められる教育研究を改善していくことを目的とする。

  評価は,基本的には大学が機関として社会における役割をはたしているかどうかを問うのであるが,その機関の機能は,その構成員の業績と直結している。

 これまで,個々の教員の研究業績は評価されてきたが,それのみでは評価のバランスを欠くため,

@ 教育

A 管理運営

B 社会貢献

の業績についても評価する必要がある。

これらの目的は,大学の総合機能の社会の要請に即した改善にある。

 

3.総合評価のための教育,管理運営,社会貢献業績調査用フォーマット

 業績評価のため,次のフォーマットを提示

 1)多年度調査用フォーマット

 2)単年度調査用フォーマット

 

 一般に,個人の業績は,履歴をもとに検討される。例えば,教員採用では学歴や職歴のほかに,研究歴の最初からの研究業績リストが添えられる。欧米では,大学教員の履歴には,研究業績のみならず,今回検討したような教育業績,管理運営業績,社会貢献業績も同様に記載されている。本来であれば,研究歴に匹敵する年数の教育歴,管理運営歴などが表現されていなければならない。しかし,ここでは現実的側面も踏まえて,次の2つの形式を提示する。

1) 多年度調査用フォーマット

 総合評価のための教育,管理運営,社会貢献業績評価フォーマットには,最近5年間の業績がみえる形式を提示する。

 研究業績評価に偏重している現状においては,教育業績評価を積極的に取り上げていく必要があり,ここに提示する多年度調査用フォーマットにより,教員の総合評価を実施することが求められる。例えば,教員任用の評価にあたって提出される業績リストに,研究業績リストに合わせて使用することが望まれる。

2) 単年度調査用フォーマット

 先行している研究業績評価では1年ごとのデータを提出し,提示している。したがって,今回,全学レベルでまとめていくことの現実性から,研究業績評価と同様に,データベース用としては,1年のデータを提出して表出することで,教育,管理運営,社会貢献業績評価を開始する。

 しかし,1年のみでは総合判定はできない。今後,ホームページに業績リストが組み込まれる際には,5年ほどの業績がみえるようにすべきである。

 

4.教育業績の評価について

 1)大学の社会における存在意義の第一に教育

 2)教育業績評価をデータ編(A),FD編(B),自己申告編(C)に大別

 

1) 大学の社会における存在意義は,第一に教育にある。

 特に,近年は,困難な時代にあって,平成10年の大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」でも強調されているように,大学の社会的責任,教員の教育責任が重く問われている。教育業績,教育の貢献度は,端的にいえば,学部,大学の教育改善にいかに貢献しているか,及び,地域,日本,世界の高等教育に現実にいかに貢献しているかについての指標,客観データを示すことになる。

2) 教育業績評価を,データ編(A) ,FD編(B),自己申告編(C)に大別する。

 (A) では,教育歴と授業担当について調査する。

 (B)では,今日,教育改善のための最も重視されているファカルティ・ディベロップメント(FD)をとりあげ,教育改善への積極的行動,教員の教育改善への意識改革への参加を調査し,教育システムの改善にむけた行動を,教育貢献として評価する。

 (C)も教育改善への意識と行動を具体的に問う。特に,所属する部局,学科等の教育改善にいかに貢献したかを表す部分は重要である。

 だが,個人の思想,主義,主張をあからさまに比較の場に公表するには慎重をきさなければならないため,内容を公表する単年度調査用フォーマットには,(C)を取り上げないことにする。

3) 教育業績評価は,結局は教育の改善,教員個々の教育資質の改善にフィードバックされる必要がある。そのため,教員側に立った教育業績評価は,授業評価と対比される必要がある。すでに行ってきた学生による授業評価を,ルーチン化し,継続的に行う必要がある。

4) さらに,教育機関において,教育業績評価は,評価をうける内容を知る機会と両立する必要がある。教育や授業法に関する教官の研修(ファカルティ・デベロプメント:FD)が必須となる。幸い,FDは平成10年度に実施された。

 

5.管理運営業績の評価について

 個々の教員の管理運営に対する実績と成果を正当に評価

 

1) 教員の関心が研究に集中する中で,大学や学部の管理運営への関与は二次的なものと考えられてきた。しかし,こうした考えは,以下の点で反省をせまられているといえる。

@ 教育・研究に対する社会のニーズが多様化した現在,それに対応するため教員が学部,大学の管理体制の改善に積極的に取り組むことが求められている。

A 効率的な管理運営がなければ,個別の教育・研究においても十分な成果をあげることができない。

B 個々の教員が管理運営に費やす労力・時間が無視できないものになりつつあり,本来の責務である教育・研究に少なからぬ影響をあたえているのが現状である。

 したがって,管理運営のための努力は,一部のみが負担すべきではなく,すべての教員が公平に負担しなければならない。

2) 以上の理由から,個々の教員の管理運営に対する実績と成果は正当に評価されなければならない。

3) しかしながら,大学の社会的責任に適応するための管理運営のあり方を一義的に定めることは困難であり,それに向けた教員の具体的な貢献を測定し評価するのは,さらに困難である。したがって,当面は教員が就任した委員や実際に分担した役割を,できるだけ数値的なデータとして客観化し,提示することになる。

 

6.社会貢献業績の評価について

 大学教員の社会的な活動を,大学及び教員の社会的責任の一部として評価

 

1) 複雑高度化した現代社会において,高度専門的な教育機関としての大学や専門家としての教員は,これまでの一部の限られた学生を対象とする教育活動や学界中心の研究活動の他に,さまざまの役割をはたすことが期待されている。

 したがって,これらの大学教員の社会的な活動は,本来の職務とは無関係のボランティアとしてではなく,大学及び教員の社会的責任の一部として考えられなければならない。

2) しかし他方で,教員の本来の責務が,大学における教育・研究活動にあり,これらの社会的活動が教育・研究のために使われるべき労力と時間を少なからず犠牲にしてなされる以上,それが無制限でありえないことも明らかである。

3) 教員の社会貢献の業績評価は,

@ 教員が,社会において果たした実績と成果を,教育・研究業績と同等・同価値のものとして認知し,積極的に位置付ける。

A 専門知識を実際どのように適切に役立て,社会的な要求に頁献したのかを具体的に計測する。

B 活動内容と自己の専門分野との関連を探り,社会的な頁献が専門的な教育・研究にどのようにフィードバックされ,教育・研究の質を高めたかを検証する。

ことにおかれる。

4) しかし,現代社会に多様な価値観や主張が並存することを考えると,ある社会的な活動が社会にどの程度貢献し,それが自己の教育・研究にどの程度フィードバックされたのかを客観的に評価するのは困難である。したがって,当面は様々の視点から評価が可能なように,データの集積と提示にとどめられる。

 

7.教員総合業績評価の今後について

 平成11年度には,単年度調査用フォーマットでデータを収集

 

1) 平成10年度にまとめた教育業績,管理運営業績及び社会貢献業績は,平成11年度に,現在実施されている個々の教員の研究業績データベースに加えて,総合業績評価をすることに備えるものである。

2) 平成11年度には,今回提示した単年度調査用フォーマットで,データを集めることになろう。また,教員から自己申請される教育業績評価は,教育の受け手である学生による授業評価と対になるべきである。学生による授業評価はマークシートなど簡便な方法でデータを集計できる方式を検討し,毎年継続的に実施される必要がある。このフォーマットの検討は,次年度の課題とする。

 

8.付 記

付1 シラバスの点検評価を例示

付2 学生による授業評価の必要性のみ記載

 

 





教育,管理運営,社会貢献業績調査項目(多年度用)

 

属 性 1)学部,専攻・系    2)氏名・かな氏名   3)現職   4)年齢

 

T 教育業績

A .教育の指導に関わる実績

1.教育の経験

2.最近5年の北海道大学における担当科目

3.教育指導の実績

3−2.卒業論文指導

3−3.セミナー

4.授業担当数

5.学生指導(大学院学生の指導を除く。)

6.大学院教育

B.教育改善への積極的行動

1.教育資源としての教科書,及び同等の執筆

2.教育に関するFDへの積極的参加(企画・運営など)

3.教育に関するFDへの受講参加

C.教育改善への積極的行動,努力の記録

1.自分が目標とする教育

2.大学全体・部局(機関)のカリキュラム改善への貢献

3.授業改善への努力

4.大学教員としての教育資質の改善への努力

5.その他

6.シラバス

 

U 管理運営業績

1.全学的な管理運営において果たした役割

2.研究科・学部・研究所・研究センター等の管理運営に果たした役割

3.上記以外に,全学,研究科,学部,専攻,学科,講座等の管理運営において,教育,研究上の改善に積極的に果たしたと思われる役割

 

V 社会貢献業績

1.審議会・委員会等による貢献

2.国家試験委員等による貢献

3.本学以外の機関への派遣・兼任など

4.民間団体・民間組織等を通しての社会貢献

5.学会・学術団体等への貢献

6.診療等による貢献

7.社会人学習等への貢献

8.専門分野に関連して作成した作品(文芸・芸術・建築作品,化石モデル等)

9.以上の他に,専門分野に関連して,積極的に社会貢献したと思われる事項

 

 

 

教育,管理運営,社会貢献業績調査項目(単年度用)

 

所属部局,氏名(かな氏名),現職,年齢

 

T 教育の業績

A .教育の指導に係る業績

1.教育の経験

2.学部教育の実績

3.大学院教育の実績

 

B.教育の改善に係る業績

1.教科書等の執筆

2.FDの企画・運営等

3.FDへの受講参加

 

U 管理運営業績

1.全学的な管理運営の実績

2.所属部局等における管理運営の実績

 

V 社会貢献業績

1.審議会・委員会等の活動

2.国家試験委員等の活動

3.本学以外の機関を通しての社会活動

4.学会・学術団体等の活動

5.附属病院・保健管理センターでの診療

6.社会人学習等への貢献

7.専門分野に関連して作成した作品

8.以上の他に,専門分野に関連して,積極的に社会貢献した事項

 

 

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