夏だ!海だ!スノーケリングだ!
スノーケリング教室&中・高生による臨海実習

文責:田中

 夏と言えば海。海と言えば夏。そう、海という言葉がもっとも似合う季節がやってまいりました。当実験所の夏と言えば、毎年恒例、今年で5回目となるスノーケリング教室です。海に入り、普段ふれあうことの無い海の中の世界を観察・体験しに行こう、という企画です。また、昨年は9月末に行われた中・高生による臨海実習が8月中旬に開催されました。こちらは、海にふれあうことはもちろん、生態学の基礎を学習し、臼尻周辺の生態系を調べるということも行いました。毎年開催されていますが、年々内容が充実していってますので、今年はどんな企画になるのかどきどきです。.


 まずは8月5日に、親子によるスノーケリング教室が行われました。1日のみの企画なので、朝早くからの開校です。海に入る時の注意事項とスノーケリングの正しい行い方を少し勉強した後、器材合わせを行い、早速お風呂でスノーケリングスキルの練習をしました。ウェットスーツに身を包み、浮く練習、スノーケルの中の水を出す(スノーケルクリア)練習、マスクの中の水を出す(マスククリア)練習を行いました。どれもスノーケリングを行う上できちんと覚えなければならない大切なスキルです。でも、みんな上手で、ほとんどすぐにできるようになりました。
 練習が終われば、すぐに海の中へ。あいにくの空模様もなんのその、みんなどんどん海へと入っていきました。海に慣れている子、少し不安な子、プールと海が違うことを実感した子など、様々な顔がありました。最初はちょっと抵抗があった子も徐々に慣れ、気がつけばみんな夢中で海の中を観察していました。午前中は練習だけの予定でしたが、慣れ具合と上達の早さで、入って早々ウニやヒトデを採ってくる子がいました。なんだ〜、みんな上手なのね。

まずはお風呂でのスキル練習。
練習が終わると、みんな続々と海に入ります。



イソガニ採ったどー!
う〜ん、この生き物はどこかな・・と。

 お昼をはさんで、午後の部は海の生き物の観察会です。海の生き物のと言えば魚かと思いますが、目を凝らしてみるとカニ、ヤドカリ、ウニ、ヒトデ、海藻など、たくさんいることがわかります。ほとんど動かないのでなかなか見つけられない子もいましたが、どの辺にいるのかを教えるとそのあたりを探し、次々と「あ、ヤドカリ」、「カニいた!」と声があがりました。
 また、ただ観察して「〇〇がいた」というだけではなく、ちょっとした課題を用意して、もっとよく生き物を観察しました。ヤドカリのハサミは左右で同じ大きさかどうか、アカモクという海藻は水中でなぜ倒れないのかなど、なかなか難しい課題ぞろいです。水面で浮きながら見たり、それではわからないものは実際に捕まえて見たり、みんな真剣に観察しました。なかなか苦戦していましたが、解決すると「へぇ〜!」と感心していました。
 海に入るおもしろさを体験して「楽しかった」、という感想に加えて「〇〇がこんなだと言うのをはじめて知った」とか「もっと海の生き物に興味がわいた」という感想を聞くことができ、参加してくれた親子だけでなく、私たちにとっても有意義な教室になってよかったです。


 スノーケリング教室が無事に終わった次の週末、今度は中学生・高校生対象の臨海実習がありました。スノーケリングによる海の生き物の観察に加えて、見つけた生き物捕まえて、どれくらいの広さのところに何匹いたのかという個体密度と、魚の胃の中を見て、どの種がどの生物を食べているのかという食物連鎖を調べてみようという生態学入門の要素も含んだハイレベルな実習です。
 まずは、海に慣れるためにウェットスーツを着てスノーケリングの練習を行いました。中・高生と言うこともあったのか、スキルの練習はもちろん、海の中でも戸惑いなど無くすいすいと泳いでいました。想像以上にみんな上手なのでびっくりしました。
 スノーケリングに慣れた後、今度は標本採集に出かけました。ひとつは地曳網を使った魚類採集、もうひとつは大きさの決まった方形枠(コドラート)を使った無脊椎動物・海藻採集(つぼ狩り)です。
 地曳網は役割を決めて力を合わせて網を曳きました。これが意外と難しく、速く曳かないと魚に逃げられますが、あまり速いと網が浮き上がってやはり魚に逃げられるという、力加減が必要な採集道具です。そこで、曳き手の他に網が浮かないように見張る役を作り、一致団結して網を曳きました。網を陸まで引き上げた後、体中に海藻やゴミをくっつけながらもくもくと魚を探しました。
 つぼ狩りでは、コドラートを適当な所に投げてそこにいる生き物を全て採集しました。「適当」というところが大事なのですが、狙った場所があるのか「あー、失敗!」という声が聞こえました。気持ちはわかるけど、それでいいんだよー。
 採集した生き物は実験所に持ち帰り、何という生き物が採れたのかを査定し、サイズはどれくらいかを測定しました。また、種ごとに個体数も数えました。魚類は胃を取り出し、切り開いてどんな生き物を食べているのかを見ました。胃の中から生き物のようなものが出てくると、図鑑とにらめっこして「うーん・・・これ?」とどの生き物かを調べました。種の査定やサイズの測り方は大学生が実際の研究で行っている専門的な方法で、ちょっと難しかったと思います。また、作業量も多く、大変そうに調べていましたが、みんなの頑張りの甲斐あって2日かけて無事にデータを取ることができました。みんなお疲れ様!

力を合わせて地曳網を仕掛ける。
「これ魚じゃない?」「え、どれどれ?」

コドラート内の磯の生き物を採る。
これ、何ていう貝かなぁ・・・。

 次の日の朝早く、定置網の船が帰ってきたころにどんな魚が捕れたかを見に行きました。この日はマグロが上がっていたらしく、氷水の中のマグロに興味津々。なかなか見られないチャンスにめぐり合うことができました。朝食を食べた後、スノーケリングでカイメンを採集しに行きました。カイメンは海底の岩肌にくっついているスポンジ状のもので、イソバテングという魚が中に卵を産みつける基質となります。素潜りで4〜5m潜り、手でむしり取ります。基本的に講師が取りに行きましたが、中には自ら取りに行く子もいました。今年はほんとにツワモノ揃いのようです。採った卵は持ち帰り、顕微鏡で観察しました。眼や血管がすでにできており、血が流れる様子を見ると「お〜、すげぇ!」とか「ちょっと気色悪いね・・・」と感動していました。見たものはスケッチをして、眼や血管がどんな感じだったかを記録しました。
 午後に最後の実習、調査結果のまとめをしました。臼尻にはどんな生き物がいるのか、種ごとにどれくらいいるのか、どんな生き物が食う食われるの関係にあるのかなどをまとめ、発表しました。今回の調査から、魚はギンポ類が多く、無脊椎動物はムラサキインコガイとタマキビ、海藻はアカモクとアカバが多いことがわかりました。特にムラサキインコガイの個体数がすごく、臼尻沿岸(幅4km×沖出し20m)にどれくらいいるかを計算したところ1300万個体以上いて、発表と同時に教室内にどよめきが起こりました。多少難しい内容だったと思いますが、こうやって調査をすることでいろいろと推定することができることを知ってもらえればと思いました。

 2週にわたって行われた実習ですがみんなに楽しく参加してもらえたようでした。本当によかったです。中には難しい内容もあり、頭を悩ましていたところもあったかもしれませんが、最後までやり遂げてくれたおかげで私たちも知らなかったことがわかりました。今回の実習を通して海と生き物に興味を持ってもらえたらとてもうれしいです。さらに、もっと勉強していろいろ調べてみたいという人が生まれたらこれほどうれしいことはありません。そんな人が将来出てくることを期待したいと思います。


定置網に掛かったマグロ。でかい!

スノーケリング後のいい顔をパシャリ。
採ってきたイソバテング卵を顕微鏡で観察。




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