−研究成果報告 6th report−

Estimated life span of the Japanese pygmy squid, Idiosepius paradoxus from statolith growth increments

(邦題:平衡石の輪紋からみたヒメイカの寿命)


Noriyosi Sato1, Takashi Kasugai2 and Hiroyuki Munehara3

1 Division of Biosphere Science, Graduate School of Environmental Science, and
3 Usujiri Fisheries Station, Field Science Center for Northern Biosphere, Hokkaido University,
   152 Usujiri, Hakodate, Hokkaido, 041-1613, Japan

2 Port of Nagoya Public Aquarium, 1-3 Minatomachi, Minato-ku, Nagoya 455-0033, Japan

出典:Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom, 2008, 88(2), 391?394

 この論文はヒメイカの寿命について報告したものです。イカは一般的に平衡石という姿勢を制御する石のようなものを目の上にもっています。この石は毎日大きくなり、断面を見ると、その成長分がまるで木の年輪のようなリングを形成します。そのため、リングの数を数えることで、イカの日齢(イカの寿命は短く、だいたいは一日で数えるため)を知ることができます。
 ただ、どの種類のイカも一日一本のリングを作っているかは分かりません。そこで、最初にそれを確認する必要があります。本研究では、飼育開始に特殊な薬品で平衡石にマークを付け、その日から一定期間飼育し、その日数とリングの数が一致するかを確認しました。16個体中6個体で一致を確認できましたが、他の個体は実際よりもリングの数が少ない結果になりました。
 次に、愛知県知多半島沿岸で一年間通して採集したサンプルの日齢を調べました。最大寿命はオスが150日、メスが140日となりましたが、先ほどのリングの確認結果から、日齢を過小評価していることが考えられているため、実際はさらに寿命が長いことが考えられます。今までヒメイカ科のイカは寿命が短く、長くても100日ほどだろうとされてきましたが、この結果から、実際はもっと寿命が長いということが分かりました。
 さらに、体サイズと寿命の一年の移り変わりから、晩秋に生まれ、越冬し大型になって春に産卵する大型世代と、春から夏にかけて生まれ、小型のまますぐに成熟し夏の間に産卵する小型世代が存在することが分かりました。長寿命の個体はすべて大型世代のものでした。
 今まで寿命が調べられてきたヒメイカはオーストラリアのものがほとんどでした。150日ほどの寿命をもつ個体が報告されなかったのは、年中水温が暖かい地方ではすぐに成熟するため寿命が総じて短くなるためかもしれません。

 

Fig1

 ヒメイカの平衡石。イカから取り出した後、輪紋が観察しやすいように、目の細かい紙やすりで削っ。ヒメイカの輪紋は写真のとおり非常に見にくい。スケールバーは15μm。

Fig.3. 体サイズと輪紋数の季節変化
 イカの大きさは一般的に、外套膜(いわゆる筒の部分)の長さで表す。いつも上になっているほうを背側とし、反対に漏斗(水や墨を出す器官)があるほうを腹側とする。背中側(Dorsal)の外套膜(Mantle)の長さ(Length)でDML。Aは採集した月ごとのDMLを、Bは輪紋を表している。
 ちなみに下のアルファベットはそれぞれの月の頭文字で、一番左のNは2004年の11月(November)、一番右は2005年の11月である





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