カムチャツカ調査
文責:鈴木、三宅
ロシア:カムチャツカ調査前半戦
7月の15日から27日までの約二週間、ロシアのカムチャツカに調査に行ってまいりました。
今回のメンバーは、当実験所から宗原先生、鈴木、三宅の3人、動物講座から菊池君、そして岐阜大から古屋先生の計5人でした。
当日までの準備としては、鈴木と三宅のパスポートが間に合わないかもしれない、ビザが間に合わないかもしれない、もしかしたら行けない?などなど様々なトラブルがありましたが、5人全員が何と出発にこぎつけました。
まずは前半戦として、出発の15日から21日までの状況をわたくし鈴木がお送りします。
15日~16日:出発の日
日本からカムチャツカへは、8月のみ成田から直通が出ているそうです。
というわけで、まずは成田へ向かったわけですが、本州なれしていない道民にとってはなかなか耐え難い湿度と、成田周辺には思いのほか何もないことに驚きを感じつつ、古屋先生と合流後、夕飯の定食、そして激励会的な飲みをしました。
飛行機の時間は9時過ぎであるものの、荷物の量がたいそうなものでして、かなり前に空港へ向かい、受付カウンターが開いた直後に荷物を預けたのですが、まさかのオーバーチャージ100キロ・・・
そりゃあ、ダイビング器材一式が入っているわけですので重くなってしまうのは致し方ありません。
ただ、受付カウンターのおねぇさんが目を丸くしていたのは非常に印象に残っています。
その後、日本最後の昼食をとりいざカムチャツカへ。
飛行機に乗っていた時間は3時間半程度で、北海道から沖縄よりも近いとのことですが、時差が3時間ほどあるので、到着は4時すぎと夕方で、夕飯の買い出しをして終了です。
夕飯はカムチャツカということで、サーモンとロシアのビール、そして小屋先生のおいしいご飯でした。
夕方といえど、高緯度地域、日がなかなか沈みません。
結局日没は10時半でした。
17日:ロシア料理
まずは、お世話になったニーナ教授がいるカムチャツカ工科大学へ向かい、滞在中の打ち合わせ、設備紹介等々を行いロシアの料理を食べてみようとのことでレストランへ。
そこでは、ロシアのパン、ボルシチinマヨネーズ、肉の煮つけ?そしてコンポートという非常に甘い飲み物をいただきました。
18日:日帰り調査
まずは、ロシアの海がどういった場所なのかということを把握するために、日帰りの潜水調査を行いました。
いつものように器材を準備し、ポイントまでゴムボートで連れて行ってもらい、いざ入水
そしてドライスーツにも入水!!
スーツのお尻に穴を空けてしまうという失態をやらかしてしまいました。
しかも、3カ所も・・・
多少寒いくらいならば我慢しますが、残念なことに水温は5度程度。
あえなく、着水から3分足らずで上がってしまいました。
特にひっかけるような突起もなかったので、おそらくスーツの劣化した部分がゴムボートとの摩擦に耐えられなかったのだろうと思われます。
意気消沈し、仕方なく釣りをしながら午後どうしようかなぁと考えているところに助け舟。
同行していた方がドライスーツを貸してくださいました。
本当にありがとうございました。
おかげで、午後潜ることができ、今度はトラブルがないよう慎重に慎重に潜行までこぎつけました。
初めてのロシアの海の感想は、3月ごろの臼尻に近いものがあるなという感じでした。
冷たい&濁っている。
そのような状態なので、場所が分からなくならないようにラインを引いて調査を行いました。
上のダブルパンチに加え魚がいない・・・何も見つけられないまま、20分ほどが過ぎたところで、ふと岩の隙間をのぞいてみると。
ようやくいました、クロメヌケ(北海道だとアオソイと呼ばれています)。
かなり大型の個体が岩陰で群れを作っていました。
とりあえず、一匹捕まえてみたものの、思いのほか大きくてどうしてよいか分からなくなり、焦っているうちに逃げられてしまいました。
結局このダイビングで捕まえたのは、ヨコスジカジカのチビだけでした。
19日:3泊4日風呂なし航海
今回のメインイベントである3泊4日の航海調査が始まりました。
この期間では、カムチャツカ半島、アバチャ湾南部の小さな湾を転々と調査していくというものであります。
前日に破いてしまったドライスーツは応急処置により何とか使える状態にしていざ出発!
なのですが、ダイビングの前に一度停泊し、釣り&上陸しました。
釣りでは、前日に逃がした大型のアオソイが爆釣で仕掛けが海底に届く前にすでに魚がついているといった状況でした。
北海道風にいうと、わやでした。
そんなに魚ばかり釣っても仕方がないので、ある程度で切り上げ、上陸です。
陸では、海藻以外、特にめぼしいものは取れなかったのですが、熊の糞だけは見つけました!
・・・新しいものだったので即撤収です。
乗組員さんのご厚意で、撤収ついでに海岸クルージング観光をしてくださいました。
海岸には、エトピリカを含む多くの海鳥が生息し、トドも船のすぐ横まで迫ってきます。
海岸を一通り探索した後はいよいよダイビングです。
しかーし、まだ目が慣れていないせいか前日同様何も見つからない・・・
ただ、一種類だけとてもとても小さいですが、妙に見慣れたこの魚だけが、私の目を引き付けます。
ゴッコ(ホテイウオ)です。
最初は、お!岩にごっこいる。と思った捕まえようとあたりの環境を見回すと、
・・・!!
付着生物かと思っていた物体が(ある意味付着生物ではありますが)、全部ゴッコではありませんか。
最初に見つけた岩だけじゃなく、ほぼすべての岩に無数のゴッコがくっついています。
他には、ウサギアイナメや小型のカジカを捕獲し終了です。
ウサギアイナメの捕獲には約10分を費やし、捕まえた時はよし!と思ったのですが、船に戻ってみると、小屋先生が釣りで大漁ではありませんか・・・しかも、ウサギアイナメではないアイナメ類まで!
20日:沈没船ダイビング
二日目の朝、朝食の時間に目を覚まし、船室に上がってみると、私たちを待ち受けていたのはこの料理。
以前に、「カーチャ(ロシアのおかゆ?)はちょっと日本人には合わないかなぁ」的なニュアンスのことを言われており、ついに来たか!と思ったのですが、どうやらこれは違うらしい・・・
ということで食べてみたのですが、何でしょう・・・?お米なのに妙に甘い・・・
最初は、いけるじゃん!と思っていたのですが、箸を進めるごとに胸やけに近いものを感じ、ギブアップ。
作っていただいて申し訳ないのですが、菊池&三宅は体調不良に陥りました。
そのため、せっかく出てきた食後のハナサキガニも満喫できずに残念。
そんな状態での二日目の一本目は、まず200年前に沈んだらしい沈没船で調査を行いました。
このポイントは、何といっても冷たい!!
1度~2度しかなかったらそりゃあ冷たいですよ・・・
そして、ここでの目玉はこいつ。
ダンゴウオspとハナサキガニでございます。
午後は、ポイントを変えて2本目です。
ここはバレーボール位の岩で構成された地形ですが、やはりいるのはゴッコ、ゴッコ、ゴッコ・・・
ただ、ほかのポイントとは違い、親の卵保護個体やトゲカジカの成魚も見つけました。
21日:第二のトラブル
三日目。
このくらいお風呂に入らないでダイビングを続けていると、髪はごわごわインナースーツは汗臭いでなかなか不快になってきます。
そして追い打ちをかけるように、低気圧の影響か次第にうねりが強くなり・・・これが後にトラブルを引き起こすことになろうとは・・・
というわけで、まずは一本目。
うねりが強かったので、少し深めに深度をとり調査を行ったのですが、深いだけあって寒いそして、暗い・・・
かといって浅場に行くとあっちへこっちへ揺られてしまうので、短期決戦と思い、20分ほど集中してサンプリングを行い、あとは浅目の場所で目に入ったものを捕まえるという戦法をとりました。
その結果、オニカジカとヤギウオという結果に。
ただ、このヤギウオくんが抱卵していたので、数は少なかったですが、成果としてはまぁまぁかと・・・
寒かったぁ~と思いつつ移動開始したのですが、ここで今回の調査最大の生き物が登場!
船員さんの「オルカ!!」の一声に寒さも吹き飛び、トイレで踏ん張っていた三宅をしり目にシャッターを連射。
(三宅撮影)
一度、船のそばで浮上したのですが、ポジション取りが悪くブレブレ・・・
初めての生シャチにテンションは大層上がりました。
シャチを見てからしばらくすると本日の2本目のポイントに到着します。
風向きの関係で、これまでのように湾が使えずこの場所になったのですが・・・なんと外海に面していて、うねりが大きく潮もかなり速かったです。
潜行し調査を開始するも予想通りあっちへこっちへ体が振られ、やりにくいのなんの。
そんな中でも、カジカの稚魚をいくつか採取し、浮上予定地へ40分後に戻ってみると・・・誰もいない・・・?
とりあえず5分待ってみたのですが、誰も来ない!!
あ、はぐれた・・・でもラインは目の前にある。うねりと潮で3人流されたかな?
と悟り、事前にグラントスカルピンから使い方を聞いていた緊急フロートを使おう・・・フロートの糸絡んでるし!!
解くのに5分かかりようやくフロートをあげ浮上すると、もう船に3人いるではないですか!
とりあえずよかった。
でも、ラインは海の底なので回収に向かうも、どこかで引っかかったらしく上がってこない。
・・・もう一度潜行し絡みをとると、ラインがどんどん上へ引き上げられ、自分も一気に浮上してしまう。
上で回収してくれてるのかなと思い、急浮上はよくないのでラインから手を離して浮上すると、船からかなり離れてしまっている。
あれれ?もしかして流されたから回収してるように見えたのかな?
と思ったのもつかの間、どうやらまた底に引っかかったらしく上がってこない。
追い打ちをかけるように船がバック!
船上でラインを持っていた三宅の手からラインがスポンと抜けて再び海の中へ。
そこで、もう一度潜行したのですが、潮が速すぎて、どこかへ流されてしまったのか結局見つけることができませんでした。
あの時、水中で私が回収していればと・・・もっと落ち着いていればと反省です。
これにて、前半は終了です。
引き続き、後半は三宅くんよろしくお願いします。
僕がまだ大学1年だったころ、第二外国語としてロシア語を選択していました。
“北海道ならロシアが1番近いべ!拿捕されたとき使えるべ!”
と、冗談半分で選びましたが、まさか本当に使う日が来るとは…意外と覚えているものですんごい役に立ちました。ハラショー!昔のオレ!
ということでここからは私、三宅が記事を書くだろうと予想してとっていたメモを一部改編してお送りします。
7/22
先日から停泊している鳥の楽園みたいな湾で潜水。
(水温:5℃ 水深:MAX7.6m AVG6.7m 透明度:5m)
イボダンゴ見つける。テンションUP!
(帰国後ナメダンゴとわかる・・・)
さらに、ウサギアイナメを釣り上げ、ロシアでやりたいことの一つ達成!
同じ湾に観光の船がたくさん来る。
水着で飛び込む人たちも。表層水温はちょっと高くて13℃。それでも水風呂より低いですよ。シンジラレナイ。
兄弟岩まで戻り、二本目。何かそれっぽい伝承がありそうだけど聞けずに終わった。
<水温:5℃ 水深MAX11.3m AVG9.4m 透明度:5m>
潮が速いがそれほどでも。砂地もあったがオヒョウには出会えず。
そのまま帰港。
スーパーに買い物へ。意味わかんなくてもほんのちょっとのロシア語とボディランゲージで何とか買い物できるものだ。
キングサーモンの切り身?やアイスなどを購入。
そして、選択しようとしたところ問題が・・・使い方がわからない。
書いてある言葉もわからない。
なんとなくイタリア語っぽいなと思ってたらあたってた。奇跡。
しかし、しれではちゃんと動かせなかった。二時間くらいかかったけど、一応洗濯出来たみたいだ。
7/23
今日は出航準備があるから12時発とのんびりだ。
初日の若い船員さんが再び乗船。自己紹介する。ダルスさんと言うらしい。
ショータと名乗るが、ショータは2人いる。
それを告げると、同じ名前の人とはブラザーになるんだ!と。
ロシアで兄弟が出来ました(笑)
昼飯食って沖に出たら、荒れる、荒れる・・・久しぶりに船酔いになった。
結局アバチャ湾に引き返し、一本目は穏やかなところで・・・ってめっちゃ荒れてるやん!?
アンカーロープ沿いに先行しようということになり、必死こいてロープに・・・たどり着けず。無駄に体力消耗。
仕方なくその場から潜行。砂泥。濁り酷い。この調査で初めてカレイを見るもオヒョウではない。写真もなし。
<水温:2度 水深:MAX7.0m AVG6.4m 透明度:2m>
二本目はちょっと移動して波裏へ。
多くの観光船が集まっていた。唯一の安全地帯のようだ。
同じく砂泥。潜る前にヌマガレイ二枚釣る。
恐らく、一本目に見たのもこいつだろう。
潜行前に、先生がいろんな道具の入ったバッグ落とす。先生バディはそれを探すためにわかれる。
僕らは調査。観光船がたまっているせいで、カニの殻、カレイの頭と尾鰭が大量に落ちている。
酷い濁りの中でいい目印となった。
でもそれだけ。なんも。また写真なし。
<水温4℃ 水深:MAX5.2m AVG4.5m 透明度:2m>
帰港するも船に止まる。お休み。
7/24
朝起きると・・・でたー!前に出たほんのり甘い、ちょっと体が受け付けない飯が・・・
”残してもいいよー”とダルスにに言われたけど、完食!頑張った!
そして船は再び沖を目指すらしい。これを書いている今もかなりの揺れだ。まだ湾内なのに・・・
急展開。明日も同じような天気だし、今日で調査はおしまいだと。
だから、今日はめいっぱい楽しもう!
・・・と思っていたけどダイビングも中止。最後にみたものがカレイの頭とかなんかいやだ。
そしたら釣りに連れてってくれるそうだ。
しかし、潮が速い。そこにつかない。着いたと思ったら根掛かり・・・仕掛け2つ無くす失態。
なにも釣れず帰路へ。
ダルスとイヴァン(お手伝いの大学生)とお話。
それぞれ、パジェロとレクサス(元ハリアー)に乗っていると。リッチだ!?
ロシアではサバゲーが流行っているらしい。廃ビル1つ貸し切ってやるとか規模がでかすぎる。
スキー、スノボーは7月までやれるそうだが、くまも沢山いるらしい。
肉、魚をあげると大人しく帰っていくそうだ。怖いよ。
調査終了!アパートへ。
雨の中片付け。アパートの中には干すとこ皆無。いろんなものを駆使して頑張る。
こんな感じ。
7/25
雨。
一日中スライド作り。帰国3日後に修論計画発表があるんです・・・(無事終わりました)
午後からはやる気が無くなり、スーパーへ。またキングサーモンを試食させてもらう。
いくら、ウオッカ、ビールを買って晩酌。
明日は晴れるといいな。
7/26
明日は朝早くに出るので実質今日が最終日。
午前中はサンプル処理。ちゃんと仕事もしてるんですよ!
雨があがってくれたので午後から観光できた!
レーニン広場など等。
お昼を頂いたお店で煙草をくれないかと?と聞かれた。まぁ、外見は吸ってそうですよね。自覚しています・・・
お土産屋さんはまたしても皆無。観光地蛇大ですもんね。
そのあとやっぱりいつものスーパーへ。店員さんにも顔を覚えられているようだ。
ピロシキを始めて食べる。特別美味しいものではない。
買い物するも、特にお土産は無く、スモークサーモンやスモークハリバット、かっこいい瓶のウォッカをお土産に購入。
夜は打ち上げみたいな感じに。先生’sでウォッカ2瓶開ける。すごい。
7/27(日)
今日は帰るだけ。
日曜日は大学の人はお休みのせいか見送りはニーナ先生のみ。お世話になった方には挨拶ぐらいはしておきたかった。この場を借りて、
“Спасибо!”
さて、空港でお土産買えないかな?と考えていたけど、出国も入国したところと同じ場所で本当に何もない。
検査、審査もなんにもなく拍子抜け。さすがに90kgオーバーには苦笑されたけど。
そういえばオーバーチャージとられなかったな。あとで連絡来たのだろうか?どうなったんでしょうか、先生?
11:30 飛行機に乗り込む。ここから3時間半のフライトだが、日本時間は3時間遅い。到着は12:00だ。1日27時間、やったね!
そして遂に帰国!日本に帰ってきた喜びでいっぱいだった僕は何も考えずに飛行機から降りてしまった。
…そこはまさに灼熱地獄!溶けるかと思った。
先生の“帰ってきた!お疲れ様ビール”を断るはずもなくいただく。
ただ、最後の最後まで気を抜いてはならないのが今回の旅。
函館便に乗るために羽田空港に移動したそのとき!先生がカバンを背負っていないことに気づく!
“家に帰るまでが遠足です”
最初に聞いたのは幼稚園だったか…
大学院生にもなって、改めてこの言葉の大切さを知りました。
以上カムチャッカ調査でした。
終