宗原 弘幸
     Hiroyuki MNEHARA
      hm@@fsc.hokudai.ac.jp




  専門分野


  魚類生態学・進化生態学



  関連分野


  北方性沿岸魚類、 交尾、 遺伝マーカー



  所属学会


  日本魚類学会 日本動物行動学会 日本進化学会 日本水産学会



  研究内容


1. カジカ上科魚類の繁殖生態と進化

 カジカ上科は、北太平洋では種数でも繁殖生態でも最も多様性が高く、生物学的な意味では、北海道を代表する魚類です。このグループが持つ多様性の起源を明らかにすることと、多様性の創出機構の解明を研究のゴールとして、臼尻実験所周辺からロシア沿海州、千島列島、アリューシャン、カナダなど北太平洋各水域、さらに淡水カジカの聖地、バイカル湖からも標本を収集し、さまざまな手法と視野で解析を進めています。


 研究の詳細は、以下の本に詳しく書きました。 『魚類の繁殖戦略 T』海遊舎(1996), 「非血縁個体による子の保護の進化」 pp134-181. 『魚の自然史』北海道大学図書刊行会(1999), 「カジカ類における交尾行動の進化」 pp. 163-180. 『魚類の社会行動3』,海遊舎(2004), 「シベリアの古代湖で見たカジカの卵 -バイカルカジカたちの種分化機構の謎に迫る-」 pp184-218. 『遺伝子の窓から見た動物たち フィールドと実験室をつないで』、京都大学学術出版会(2006), 「交尾する魚の精子競争と生態進化 ?カジカから学んだこと-」 pp99-115.  いずれも著者割引が可能です。メールなどでご連絡ください。



産卵した雌に交尾をしようとしている雄のニジカジカ
2. 分子マーカーの開発と応用

 近年の生態学、行動学などでは、遺伝子マーカーなしでは、解明できないことがたくさんあります。「この子の親は、だれだ」というのもその一つです。1980年代に手掛けたアロザイム多型、その後ミニサテライトDNA多型、そして1990年代から始めたマイクロサテライトDNA多型は、今では血縁判定には欠かせません標準ツールとなりました。血縁判定法の精度を高め、より簡便に解析できる方法の開発と様々な生物の生態研究への応用を進めています。

 これまでの研究の詳細は、以下の書物に書きました。 『魚のエピソード』,東海大学図書出版会(2001), 「アイナメ類の嫁とりと子育て」pp. 151-168. 『水産学シリーズ 水産生物の性発現と行動生態』,恒星社厚生閣(2003),「血縁と配偶システム」pp.33-47. 『生物の科学 遺伝,別冊16号(動物の社会行動)』,裳華房(2003),「魚類における子の保護行動の進化 ?保護者の性と非血縁個体による保護」,pp100-109. 『生物の科学 遺伝, 60(特集 精子競争)』,NTS(2006). 『遺伝子の窓から見た動物たち フィールドと実験室をつないで』, 京都大学学術出版会(2006), 「交尾する魚の精子競争と生態進化 ?カジカから学んだこと-」 pp99-115.  いずれも著者割引が可能ですので、メールなどでご連絡ください。


2005年に開催した精子競争の国際シンポジウムの記念写真
3. 環境改変に対する沿岸生物の応答

 人間の活動は、直接的にも間接的にも自然環境に強い影響を与えます。たとえば、護岸工事もその一つです。護岸工事により堤防や消波帯が造られると、新しい環境に適応した生物が増加するだけでなく、近縁種間の隔離機構にも影響を与え、アイナメ類では交雑を起こすことが分かってきました。大変だあ。  また、地球規模の温暖化は、地域の生物相を変えていきます。臼尻実験所の海は、親潮と暖流の津軽暖流水が混交するため、一年を通すと、北と南の海洋生物を非常にたくさん見ることができる貴重な海域です。季節的回遊魚と見られていた南方由来の生物は、漂流した水域でどんな一生を送るのか、この過程を追跡することは、現在広い範囲に分布する様々な魚類たちの歴史の解明です。


消波帯の根固め用の採石網袋の結び目は、アイナメの絶好の産卵基質。 行動観察用水中カメラの設置作業。

  業績


1. Mixed-species Brooding between Two Baikal Sculpins, Paracottus kneri and Cottus kessleri: Field Evidence for Intra- and Interspecific Competition for Reproductive Resources. J. Fish. Biol. 60: 981-988. (2002)

2.Sperm storage and motility in the ovary of the marine sculpin Alcichthys alcicornis (Teleostei: Scorpaeniformes), with internal fametic association. J. Exp. Zool. 292: 145-155. (2002)

3.Obstructive role of the dimorphic sperm in a non-copulatory marine sculpin Hemilepidotus gilberti to prevent other males' eusperm from fertilization. Env. Biol. Fish. 64: 419-427. (2002)

4.Territoriality, egg desertion and mating success of a paternal care fish, Hypoptychus dybowskii. Behaviour 138: 85-96. (2001) 5.Microsatellite markers and multiple paternity in a paternal care fish, Hexagrammos otakii. J. Ethol. 18(2): 101-104. (2000)


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