写真展 写真で見るカジカ類の多様性
開催主旨
北太平洋沿岸や深海域また北アメリカおよびユーラシアの陸水などに広く分布する約400種から構成されるカジカ上科魚類(カジカ類)は、生物学的に極めて興味深い魚類である。それは、多様な分布域への進出に成功しただけでなく、形態、生活史、繁殖生態、生殖生理などでも多様性に富むためである。
このことは、カジカ類が水深2800mの海洋から標高約2000mの山岳河川や湖沼まで生息する深い垂直分布をすること、繁殖生態は非交尾型体外受精、交尾型配偶子会合、交尾型体内受精とバラエティーに富み、親による子への保護様式でも、無保護,雄による見張り型保護,雌による卵隠蔽と見張り型保護,さらに体内保育と,高い多様性を有していることからもわかる。
写真展『写真で見るカジカ類の多様性』は、2007年度日本魚類学会年会において開催する『カジカ類の多様性、適応と進化』シンポジウムにあわせて、初めて公開するものである。カジカ類は、種数が多い点で北海道を代表する魚類でもあり、学問的な魅力とともに、カジカ類の素顔を知っていただく機会として、今回の写真展を企画した。
近年静かなブームとして北日本でもダイビング熱が盛んになってきた。その火付け役となった二人の水中写真家、関勝則さん(知床ダイビング企画;羅臼町)と佐藤長明さん(グラントスカルピン;宮城県南三陸町)の惜しみない協力をいただいた。メリハリのある鮮やかな体色と躍動感あふれる作品は、カジカ類の素顔と多様性を存分に表現している。二人の写真家が撮った生態写真に、研究者が撮った貴重な学術的写真も数点加え、写真展『写真で見るカジカ類の多様性』を開催する次第である。
☆予告扁☆
写真展 写真で見るカジカ類の多様性
序 カジカのいる海
第1部 形態の多様性
第2部
繁殖様式の多様性
第3部 生活史
第4部 淡水カジカ
第5部 北米と極東
第6部 最近の話題
北日本の浅海域の主役はカジカ類である。カイメン、イソギンチャク、フジツボ、海藻など付着生物が演出する複雑で色彩鮮やかな海底に同化する。
ウラナイカジカ科コブシカジカ Malacocottus zonurus 撮影 関勝則
クチバシカジカ科クチバシカジカ Rhamphocottus richardosonii。
1科1属1種。北米ワシントン州、アラスカ州とカナダ西岸および日本の関東と東北地方の太平洋岸の水深10m〜数100mの岩礁域に生息する。北海道では見つかっていない。体長5-7cmの小型種で、形態や行動がユニークでダイバーに絶大な人気がある。雄が卵保護し、非交尾型種であることが今年になって明らかになった。英名のgrunt sculpinは、音を出すカジカという意味で、捕まえた時に骨を摺り合わせて発する「グウー」という音に由来する。
宮城県の南三陸町では、冬季に繁殖期があり、全ての個体が卵保護を終える頃には、早く産まれた稚魚が着底を始めるため、1年を通して観察することができる。