無脊椎動物 (無脊椎動物の概要)

実験所周辺の潮間帯からは70種ほどが普通に見出されます。このうち生息密度の高いべントス種はそれほど多くありませんが,イワフジツボ,チシマフジツボ,ムラサキインコガイ,ムラサキイガイ,タマキビガイ,コガモガイの6種がよく目につきます。これらの種は異なる底質域にまたがって生息領域を拡大したり,特定の位置に極めて高い密度で群生したり,あるいは転石の下面や陰の部分に生息域を広げるなど,柔軟に環境適応した種です。

岩礁域べントスの示す特長的な分布様式に「タマキビ帯一フジツボ帯一イガイ帯」という順序の帯状構造があります。臼尻においては,タマキビガイが潮間帯中部から上部にかけて岩面凹部に高い密度を占め,この下部にイワフジツボ・チシマフジツボが帯状の分布域を形成し,このすぐ下にムラサキインコガイとムラサキイガイの混合群が岩面を帯状に占拠しています。また,潮汐周期に応じて移動するコガモガイは,干潮時にはほぼ等しい密度で分布します。

一方,潮下帯では,エゾバフンウニ,キタムラサキウニ,ホッカイエビ,ミズダコなど食卓で馴染みの生き物もよく見かけますが,暖海性のサザエや北海道でも日本海側で普通に見られるアワビはいません。これは,冬期の水温がこれらの生物が越冬可能な限界以下に冷やされるためと考えられています。こうした生物相をみると,臼尻町の海は寒流海域であることがわかります。

実験所前の潮間帯

標識をつけたチジミボラ