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第4回:増田 隆夫 理事・副学長

フィールド研究

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 理事・副学長の増田隆夫です。

 最初に、私の生い立ちから紹介させていただきます。

 私は1957年に岐阜県(現在の瑞穂市)の専業農家の末っ子として生まれました。地元の中学(町立巣南中学校)、高校(県立大垣南高校)に通い、京都大学工学部化学工学科に入学後、同大学大学院修士課程、博士後期課程に進学し(1年半で単位取得退学)、同化学工学科助手、講師、助教授、そして2001年に本学教授(現在の工学研究院応用化学部門)に赴任しました。その後、総合化学院副学院長、工学研究院副研究院長、工学部長・工学研究院長を経て、202010月より寳金総長の下、研究、産学官連携、情報担当の理事を務めております。

 専門は室蘭や苫小牧にある石油精製・石油化学等に代表される化学プロセスの中でも、エネルギーやバイオマスの分野に関してゼオライト等の固体触媒を用いたプロセスを対象にしています。

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 さて、思い返しますと生家では、曾祖母も含めて8人家族の中、幼少期から高校まで両親の背中を見ながら天の川が見える夜遅くまで農作業の手伝いをしていたことを覚えています。北海道の大規模農業とは異なり耕地面積が狭く(当時は2 ha程度)、専業農家として収益を上げるために多くのものを生産していました。春から秋にかけて米、麦、梨、柿、桃の生産を、そして冬から春にかけては温室にて苺を生産する一方、肉用の豚と鶏を育てていました。そのため一年中農作業をしていた記憶があります。中学、高校の時には、学校から家に帰ると家の黒板に"何処何処の田(畑)に来るように"と書いてあり、着替えをしてから指定された田(畑)に行きました。この様な日々でしたので家族一緒に日帰りも含めて旅行をしたことは一度もありません。また、この様な閉鎖的な環境にいたのでこの日々の生活様式が、大げさに言えば日本のスタンダードと思っていました。そして、それが間違いである事を京都での大学生活を送るようになって直ぐに知り、かなりのカルチャーショックを受けたことを覚えています。

 ただ、両親と一緒に農作業が出来たことは良い経験でした。加えて、幼少時より土に触れていたことで多様な病原体に対する免疫が形成されたのか、今まで重い病気にかかって寝込んだ事が無いことに感謝しています。

 生家は先ほど述べました環境でしたので、大学生になったことが当時の村では評判になりました。更に、大学院に進学した時には、近所の人から「大学院って何?」、「よく分からないけど勉強が好きなんだ・・・」と言われ、博士課程に進学するにいたっては「??、ずっと働かないの?将来どうするの?」等々言われました。皆さんの中にも博士課程に進学して似た経験をされた方がいるかもしれません。

 教員になって研究を進める際には、二つの言葉(格言?)を頭の中で繰り返し思い返していました。

 一つ目は『闇夜に飛ぶのは蛍だけでは無い』です。教科書や公表されている研究成果、そして自分の専門分野のみから物事を判断するのではなく、それら知識(蛍光を放つ蛍)以外の因子が目の前の現象に関与している、といった真摯な態度が研究者には必要と考えます。これは、複雑系であるフィールド研究を進める上で、ある特定の研究領域から取り組むのでは無く、分野融合型の研究の必要性とも符合します。

 二つ目は『今日の非常識は明日の常識』です。言葉の通り、世の中を不連続なステージに持ち上げるゲームチェンジングな研究開発を夢見ています。但し、フィールド研究においては"常識となった"と判断する人は、研究者では無く、成果の受益者である一般住民であることを念頭に入れておかなくてはなりません。

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 この様な考えのもと、本学の研究について思うことを述べさせていただきます。寳金総長が述べられているように北海道大学は首都圏の大学と一線を画く地域の基幹総合大学です。そして、その様な大学の研究は、研究者各々の萌芽的研究と、実学としての研究に大きく分けられ、前者の萌芽的研究の成果指標としてのKPITop10%論文等で評価されます。

 後者の実学は企業対研究者の11の従来型の共同研究と、新たな社会システムを地域のコミュニティに導入するフィールド研究の二つに分類できます。一つ目の共同研究推進では、産学連携推進本部において、部局との連携や特許戦略、そしてベンチャー育成の強化を進めています。一方、二つ目のフィールド研究について組織的な取組を強化する必要があると思われます。このフィールド研究は、自治体も含めた複数の産学官と住民が参画したコンソーシアムによって進められます。そして、その成果の評価は対象とする地域において研究成果の恩恵を受ける住民や自治体によってなされます。そのため、フィールド研究は住民も含めたコミュニティの理想的な将来像を描き、バックキャスト的にそれを達成するために必要な研究開発を行うことになります。その研究成果の目標はコミュニティの住民が置かれている状況を良くすること、つまりWell-Beingとなります。このWell-Beingの状況を住民がそれぞれの環境と経験のフィルターを通して、主観である幸福感を感じることになります。住民が幸福感を感じれば(SDGsでいえば、誰ひとり取り残さない)、その研究開発は成功したことになります。

 このフィールド研究は分野融合が必要であり、総合大学である本学では実施可能と考えられます。そして、北海道で実施したフィールド研究の成果を世界の各地域に展開したく思います。そのためにも、2021年6月に内閣府の地域バイオコミュニティとして認定されました"北海道プライムバイオコミュニティ"を一つの拠点として一次生産システム、そして医療系等を中核としてフィールド研究の取組を進めたく関係者と検討を進めています。

 この取組は、寳金総長が出されたメッセージ "「光」は「北」から、「北」から「世界」へ" に符合するものです。

上記のように研究者各々の萌芽的研究が実施しやすい環境の整備と、実学の推進を進めて行きたく考えています。

皆様からのご支援宜しくお願い申し上げます。

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(2021年7月)

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