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【Academic Fantasista 2019】旭川東高校にて出張講義を実施(低温科学研究所 教授 渡部直樹)

宇宙における分子の進化と氷微粒子の役割

太陽系の起源、「分子雲」

旭川東高等学校で、渡部直樹教授が講義を行いました。星と星の間の空間には、大量のガス、そして鉱物微粒子であるチリが漂っています。ガスのほとんどは水素とヘリウムですが、他にも炭素や酸素といった多種多様な分子が含まれています。チリやガスの密度がとくに高い領域は「分子雲」と呼ばれ、摂氏マイナス263℃程度と極低温です。分子雲では、星が誕生する前から分子がつくられており、それらはその後誕生する星の材料になっています。そのため、分子雲は太陽系の起源を探るためにも、重要な領域であると言われています。渡部教授は、実際に宇宙空間を実験装置内で再現することで、極低温下で分子がどのようにつくられ、どのように複雑な形に進化していったのかを解明しようとしています。


渡部教授

極低温下では分子進化は起こりにくい

原子が分子に進化し、その分子がさらに複雑化するためには、原子や分子同士の衝突が必要です。その後、化学反応が起こると分子が進化します。分子雲を漂う原子や分子はガス状、つまり気体です。気体の原子や分子が衝突する頻度は年にたった1回。しかも、極低温の分子曇では熱エネルギーが乏しいため、通常の化学反応は起こりません。気体の原子や分子が宇宙空間で反応を起こすのはとても難しいのです。


氷微粒子のつくられ方

氷微粒子は分子進化を促す場

渡部教授の研究グループは、2008年に分子雲の環境を自作の装置で再現し、分子曇で水がつくられるプロセスを実証することに成功しました。分子雲を漂うチリの表面で、水素と酸素がくっつくことで水になります。さらに、渡部教授は、それが凍った「氷微粒子」が分子進化の鍵であることを明らかにしました。「原子や分子は冷たいものに付着しやすいため、氷微粒子の表面にペタペタとくっつきます。そして、そこで長い間触れ合うことで、極低温下でも化学反応が起こるようになります。つまり、氷微粒子は多種多様な分子を生み出す工場のような役割をしています」。

分子雲で生命のもととなる物質を見つける

今後の研究について渡部教授は、「今、注目しているのはアミノ酸です。宇宙から落ちてくる隕石中にはアミノ酸が見つかっていますが、分子雲ではまだ発見されていません。しかし、研究室で行った実験では、分子雲にもどうやらアミノ酸がありそうだという結果が出ています」と話しました。アミノ酸は、生物の構成成分であるタンパク質がつくられるうえで、重要な役割をしています。分子雲でアミノ酸を見つけるために、チリのアタカマ砂漠に建設された巨大な電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」を使った天体観測や、小惑星探査機「はやぶさ2」でのサンプル採取など、世界中で様々な取り組みが行われています。「分子雲で生物のもととなる物質が見つかる日がくるかもしれません」。


講義後も高校生からたくさんの質問がありました

自身の経験から高校生へアドバイス

渡部教授が研究者を志したのは27歳のころでした。中学高校と文系を選択していましたが、高校2年のときに物理学の楽しさに目覚め、そこから苦手だった数学も真剣に取り組むようになりました。「つまらないものを面白くするには、少し面白いと思えたときに頭の中でお祭り騒ぎをして、自分で自分を盛り上げると効きます。まだ将来なりたいものが決まっていなくても、焦らなくていい。その時々で一生懸命やって、いろいろなものを面白いと思う努力をすることが大切です」と語りました。

受講した高校生からは、「宇宙の研究の最先端を知れて、宇宙の神秘を感じ、とても興味が湧きました」、「勉強するときのモチベーションや考え方も知れたのでよかったです。実践してみようと思います」などの声がありました。

・日 時:令和元年11月29日(金)15:15-16:45
・会 場:北海道旭川東高等学校
・参加者:1,2年生90名

渡部教授は、札幌南高等学校でも講義を行いました。

・日 時:令和元年10月24日(木)14:15-16:05
・会 場:北海道札幌南高等学校
・参加者:1年生61名

(総務企画部広報課 学術国際広報担当 菊池優)

【関連リンク】
北海道大学低温科学研究所 宇宙物質科学・宇宙雪氷学グループ
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