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「礼文島と喜界島 北と南の島での研究・教育・地域交流への誘い」が開催されました(アイヌ・先住民研究センター 加藤博文 教授、理学研究院 渡邊剛 講師)

日本最北の離島「礼文島」で発掘調査に挑む、加藤 博文 教授(アイヌ・先住民研究センター)。一方、奄美群島のひとつ「喜界島」でサンゴ礁を研究する、渡邊 剛 講師(大学院理学研究院)。1219日(土)に北と南それぞれの島をフィールドに活動する研究者が、合同でシンポジウムを開催しました。喜界町役場コミュニティーホールおよびオンラインで実施され、計121名(会場:30名、Zoom25名、YouTube66名)が参加しました。


鹿児島市と沖縄本島の間に連なる奄美群島のなかでも最北東部に位置する喜界島
写真提供:山崎 敦子(喜界島サンゴ礁研究所/九州大学)

渡邊講師と加藤教授の共通点。それは、島を単に研究の場として捉えるのではなく、そこで暮らす人々とのつながりや、その地域ならではの教育といった、研究成果以外のプラスアルファを生み出すきっかけを常に意識しながら活動を続けていることです。冒頭、渡邊講師は「南北の離島での活動を報告し合うことで、何か見出せるものがあるのではと思い、今回のシンポジウムを企画しました」と述べました。


講演する加藤教授(左)、渡邊講師(右)
写真提供:堀内 浩水(北海道大学 URAステーション)

南の島でのサンゴ研究、次世代への発信
はじめに、渡邊講師が自身の取り組みを紹介しました。約7,000人が暮らす喜界島は、平坦で大きな河川はなく、島の大半が海底から海面上へ隆起した「隆起サンゴ礁」であることが特徴です。渡邊講師は、過去10万年間のサンゴ礁と地球環境変動の関係に着目して、現地で調査をしています。2014年に設立された、喜界島を拠点とするNPO法人「喜界島サンゴ礁科学研究所」の理事長も務める、渡邊講師。「当研究所では、地球環境変動に対するサンゴの応答を捉え、次世代により多くの記録と知見を伝えていくため、サンゴ礁研究者約70名と連携しながら様々な活動を行っています。さらに、『サンゴ塾』や『MIRAIプロジェクト』といった、サンゴ研究を通じた子ども向けの教育プログラムを、喜界島で定期的に開催しています」と説明しました。


隆起サンゴ礁の調査 2019年2月撮影
写真提供:山崎 敦子(喜界島サンゴ礁研究所/九州大学)


シンポジウム翌日に行われた喜界島の埋蔵文化財センター視察の様子。写真右から2人目が渡邊講師
写真提供:堀内 浩水(北海道大学 URAステーション)

北の島での先住民研究、交流の場の創造
続いて、加藤教授が登壇しました。加藤教授のフィールドである礼文島は、およそ300種類の高山植物が咲く「花の浮島」とも呼ばれ、約2,500人が生活しています。加藤教授は、島の北部にある「礼文町浜中2遺跡」で発掘調査をしています。この遺跡は、縄文文化晩期から近世アイヌ文化期まで、3,000年以上もの歳月のなか人々が暮らしてきた痕跡が連続して見られる、非常に珍しい場所なのです。「毎年夏に、北海道大学はもちろん、海外の大学からも学生や研究者を集め、浜中2遺跡で国際フィールドスクールを開催しています。そして、そこに現地の小中学生にも加わってもらうことで、遺跡を新しいかたちの国際交流の場としています。また、発掘調査を島の方々にも身近に感じていただくために、町民向けの説明会を実施しています」。


礼文町民に出土物を見せる加藤教授 2018年8月撮影


国際フィールドスクールでの浜中2遺跡発掘調査 2018年8月撮影

各島での研究成果
その後、渡邊講師と加藤教授のそれぞれの共同研究者より、最新の研究成果が発表されました。礼文島で調査を進めている蔦谷 匠 助教 (総合研究大学院大学 先導科学研究科)、澤藤 りかい 特別研究員(総合研究大学院大学 先導科学研究科)は、遺跡から出土した骨により明らかになった古代の人々の暮らしや、歯石を用いて食物のDNAを解析する試みについて説明しました。喜界島サンゴ礁科学研究所で活動している山崎 敦子 助教(九州大学)は、サンゴの化石から読み解く環境変化について解説しました。




礼文島と喜界島、それぞれの取り組みを通して
最後に、参加者も交えたディスカッションが行われました。文理融合型の教育・研究を推進していくためのアイディアや、喜界島の住民から研究者に期待することなど、様々な意見が交わされました。渡邊講師は、「加藤先生の礼文島での取り組みは、喜界島で応用できるものもあり、大変参考になりました。また、私は理系で加藤先生は文系ですが、未来を予測するために過去から現在までを正しく理解したいという、研究の核となる部分はよく似ています。文理の枠を超えて、今後なにか一緒にできるのではないかとワクワクしています」と意気込みます。

北の島と南の島、それぞれの地で研究を進めながら、地域連携のかたちを模索してきた、北海道大学のふたりの研究者。今回のシンポジウムから着想し、今後新たなコラボレーションを見せてくれることでしょう。


(総務企画部広報課 学術国際広報担当 菊池優)


礼文島と喜界島 北と南の島での研究・教育・地域交流への誘い

MIRAI プロジェクト:文理融合の地球環境学」
 渡邊 剛(喜界島サンゴ礁科学研究所/北海道大学 大学院理学研究院 講師)

「礼文島国際フィールドスクール構想と文化遺産を軸とした地域連携」
 加藤 博文 (北海道大学 アイヌ・先住民研究センター 教授)

「人骨・動物骨の安定同位体分析から探るオホーツク人の資源利用」
 蔦谷 匠(総合研究大学院大学 先導科学研究科 助教)

「歯石・土壌の古代DNA 解析」
 澤藤 りかい(総合研究大学院大学 先導科学研究科 特別研究員)

「サンゴ化石から得られる環境と群集組成の変遷」
 山崎 敦子(喜界島サンゴ礁科学研究所/九州大学 助教)


意見交換会
登壇者:加藤 博文・渡邊 剛・蔦谷 匠・澤藤 りかい・友田 哲弘(旭川市教育委員会)・上村 真仁(筑紫女学園大学 教授)・鈴木 倫太郎(WWFジャパン)
ファシリテーター:堀内 浩水(北海道大学 URA)、西村 勇也(NPO 法人ミラツク)


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