2024年10月24日
北海道大学
札幌市豊平川さけ科学館
●豊平川低地の湧水地点はサケの産卵床として利用される。
●湧水源となる地下水は冬季に温かく、栄養塩などイオン濃度が高く、溶存酸素濃度が低い。
●地下水の影響下のサケ稚魚は水温と水質汚染両者の影響で最大10%程度小型化する。
北海道大学大学院環境科学院修士課程の山下祥平氏(当時)、同大学大学院地球環境科学研究院の根岸淳二郎教授及び札幌市豊平川さけ科学館の有賀 望学芸員らの研究グループは、石狩川水系豊平川中流において河床から湧出する地下水の水質・水温を観測し、発眼卵を用いた野外と室内実験を組み合わせ、サケ(シロザケ)産卵床への影響を解析しました。その結果、地下水の水温は冬季に約10℃と温かく、硝酸態窒素や硫化物イオンなどの人為起源と推察される溶存物質に富み、溶存酸素が致死的に低い値であることが明らかになりました。。地下水は、野外での個体生残率には大きな影響を与えない一方で、水温と水質汚染の複合的な影響で稚魚は約10%、体長と体重が減少しました。これらの結果により、都市化に伴い地下水が汚染されることで、冬季産卵個体のサケ稚魚が小さくなる可能性が示されました。
本研究の成果により、サケの河川産卵環境の維持・改善における地下水水質保全や汚染・毒性物質の特定の重要性が示され、より良い都市河川の環境管理に一歩近づくことが期待されます。
なお、本研究成果は、2024年10月24日(木)公開のEnvironmental Pollution誌に掲載されました。
論文名:Effects of polluted groundwater on Chum salmon (Oncorhynchus keta) survival and body size(汚濁地下水がサケの生残と体サイズに与える影響)
URL:https://doi.org/10.1016/j.envpol.2024.125101
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