litterae_vol.69
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札幌キャンパスから東へおよそ300㎞に位置する厚岸臨海実験所。厚岸町の市街地を離れ、最後は断崖の急な砂利道を700メートルほど下ってたどり着く。目の前には、桟橋と藻場で緑色に輝く海が広がっている。1931年に建設された本館は、外観はモダニズム、内装にはアールデコ風の装飾がみられ、「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選定されるなど、建築意匠にも特徴がある。この地域一帯は2021年に厚岸霧多布昆布森国定公園に指定されている。「手つかずの自然環境が残されているのも、この実験所の魅力の1つです」と話すのは、所長の仲岡雅裕教授。ここでは、こうした恵まれた自然環境を活かし、海洋生態学や生物海洋学を中心とした幅広い研究DOCOMOMO Japan(※1)から寒流系生物を主な研究対象とする我が国唯一の亜寒帯臨海実験所として1931年に設立された厚岸臨海実験所。絶景の観光名所、愛冠(あいかっぷ)岬の断崖下に佇む。国定公園内という恵まれた自然環境の中で海洋生態系の幅広い研究と教育に取り組んでいる。道東の断崖から世界の海を見つめる北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所断崖下に佇むモダン建築と、恵まれた自然環境Litterae Populi Vol.69  10厚岸臨海実験所、右の建物が本館、左は宿泊棟。このほか、実験所内の施設として、約2,000点もの標本を展示している愛冠自然史博物館を有する。いずれも歴史ある施設のため、老朽化が課題となっている。

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