litterae_vol.69
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を行うコーディネーター役を担っている。共同研究を推進するための予算の獲得や研究環境の整備、さらに共同研究を通じた教育活動により、次代の農林水産工学に適応し得る専門人材を育成している。海外組織との積極的な連携も特筆すべき点だ。ロバスト拠点では様々な研究活動が展開されており、その代表的な取り組みの1つが「ロバスト温室プロジェクト」だ。本学キャンパス内の第一農場に設置された2棟の温室。農学研究院と工学研究院が連携した、部局横断型の象徴的な実験空間だ。ここでは、北海道の気候に対応した熱や光の管理技術、バイオガ募(※3)」と呼ばれる本学でフィルムを温室のビニールに適用スプラントの熱利用、北海道の農産物の特性にあわせた新しい生産方法の検証、施設園芸の生産性向上に貢献する要素技術の開発などを目的に、研究が行われている。「農学と工学が力をあわせれば、こんなことができるのでは?という発想のもとに始まりました」と石井拠点代表。工学研究院の長谷川靖哉教授が開発した光波長変換し、農学研究院の鈴木卓教授が水耕栽培野菜の成長を調べたところ、成長速度が速くなる、有用成分が増加するなどの効果が認められた。これは、将来的に野菜の生産量の増加による収益向上や、有用成分が増加した高機能性野菜の開発につながる可能性を秘めているという。また、通称「ロバスト公の公募型研究助成を実施。部局をまたいだメンバーでの申請を必須とした萌芽的な研究を支援している。採択された課題にはユニークなものが多い。例えば、農学研究院と水産科学研究院の本格的な連携となる「アクアポニックス」を生産基盤として構築する研究課題。「アクアポニックス」は、生産性と環境配慮の両立ができる持続可能な農業技術として、世界中で注目されている。魚の養殖と野菜の栽培を同じ水槽内で行い、魚のふん尿を肥料として野菜が育ち、かつ野菜が水を浄化して魚が成長するという循環型の養殖システムだ。また、有色ビーツがもつ有効成分に着目した研究課題もある。有色ビーツは抗酸化作用が強く、特に寒冷環境で人の身体を温める効果があるという。その有効成分を抽出して分析し、将来的に機能食品としての価値を探るというものだ。「道産のダケカンバという木で野球のバットを作る、という研究課題もあります。そのバットを日本ハムファイターズの選手に使ってもらい、ダケカンバの利用を普及させることはできないか、と考えていらっしゃる先生もいて面白いですよね」と石井拠点代表。基幹総合大学ならではの分野融合研究が盛んに進められている。分野は広いため、7つの分科会を設けて活動を進めている。フィールド対応技術、商品への加工技術、長期鮮度保持技術、消費者嗜好適合型の生産技術、バイオマス資源化・エネルギー利用技術、防災(フィールドのロバスト化)、国際連携と、様々な研究が展開されている。分科会でシンポジウムやセミナーが開催されており、これらは分科会の研究シーズをロロバスト拠点が対象とする各分科会、あるいは複数のユニークな分野融合型研究7つの分科会から展開される多様な活動07  Litterae Populi Vol.69牛のふん尿からバイオガスを発生させ、温室内を温めるエネルギーとして利用している。この仕組みについて説明しているのが石井拠点代表。特集 | 受け継ぐロバスト温室。この中でホウレンソウやパセリなど、光波長変換フィルムによる促成栽培実験などが行われている。

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