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生理学とは、身体の基本的な機能と仕組みを解き明かそうとする学問である。特に、ヒトが生きていく上で不可欠な、身体が「常にいつも同じ状態であること」(恒常性という)の機序を明らかにすることを目指している。ヒトの身体は、60兆個ともいわれる細胞で構成されている。これらの細胞ひとつひとつの中で、恒常性はどのように維持されているのだろうか。細胞生理学は、それを明らかにすることを目指す学問である。一度、恒常性のバランスが崩れると、病気の原因になる。例えば、慢性骨髄性白血病という血液のがんでは、血液細胞を作る造血幹細胞にフィラデルフィア染色体と呼ばれる異常な染色体が形成され、タンパク質BCR-ABLが細胞内に出現することで発症する。この病気の治療には薬物療法が有効とされているが、使用する薬剤の有効性は、治療開始後、数ヵ月から1年以上にわたる経過中の慢性骨髄性白血病治療の未来に光を当てる「細胞生理学」を蛍光バイオイメージング技術画期的な研究成果の社会実装に向けてLitterae Populi Vol.70  20AMANO MahoOHBA Yusuke博士(農学)。東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻博士課程修了。2007年に北海道大学大学院先端生命科学研究院特任助教に着任。その後、研究活動を支援する専門職URAに転身し、2019年から大学院医学研究院助教。2020年から現職。医学博士。専門は細胞生理学、実験病理学。北海道大学大学院医学研究科病理系専攻博士課程修了。国立国際医療センター研究所の研究員として基礎医学研究をスタート。大阪大学助手、東京大学助手などを経て、2006年に北海道大学大学院医学研究科助教授に着任。2012年から現職。 大場教授が開発した「蛍光バイオイメージング技術」の事業化を進めている天野講師。二人の取り組みは、2021年3月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「NEDO TCP 最優秀賞」(※)を受賞するなど、社会的に大きな注目を集めている。(※)TCPはTechnology Commercialization Programの略称。起業意識のある研究者などを支援するプログラムで、二人の取り組み「光診断薬Picklesで患者さんの未来を明るく照らす」が最優秀賞を受賞した。北海道大学大学院医学研究院 細胞生理学教室大場 雄介 教授天野 麻穂 講師

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