09 Litterae Populi Vol.71 生体応答解析部門の板倉友香里特任助教は、環境散布を想定した狂犬病経口ワクチンの開発に取り組んでいる。人獣共通感染症である狂犬病は、予防可能な病気である一方、治療薬は存在せず、狂犬病を発症すると死を免れることは難しい。獣医学の分野では、動物側の発症抑制を目指したワクチン研究が進められている。 「欧米では、野生動物に対し、弱毒性ウイルスを用いた経口ワクチンを投与することがあり、有効性が示されています。しかし、インドなどでは人間の生活圏に多くの野犬が共存しており、ワクチンを混ぜたエサを屋外に置いたり、上空から散布したりすると、誤って人体に取り込まれてしまう危険性が北海道大学 ワクチン研究開発拠点 特任助教あるのです。私が研究しているのは、人と動物が共存する環境でも散布できる安全な犬用経口ワクチンの開発です」 学生時代、澤教授の研究室に所属していた板倉特任助教は、自分の研究成果を社会に還元することに意義を感じ、IVReDに就職した。「IVReDは、自分たちの手でワクチンを創り出すという気概にあふれていると思います。先生方の本気度を感じますね。世界トップクラスの先生方から指導を受けられることももちろんですが、他大学や企業の方々と一緒に研究を進められることも貴重な経験です。恵まれた環境の中で、ワクチンや治療薬の開発に取り組み、多くの人々に役立てたいと思います」専門分野が異なる若手研究者たちがIVReDに集い、協力し合う。特集 | 応える板倉 友香里ITAKURA Yukariワクチン開発にかける気概にあふれる環境
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