litterae_vol.73
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「ポイポーイ」「ポイポーイ」。札幌から北へ約300㎞、北海道最北端に近い幌延町にある北大の天塩研究林で、学生サークル「北大ヒグマ研究グループ(通称、クマ研)」の学生たちの掛け声が響く。山歩きの装備に身を包んだクマ研の学生たちは、声を出しながら背丈ほどに伸びたやぶをかき分けていく。「ポイポーイ」はクマ避けの鈴のような役割で、ヒグマの調査で山に入る際に人間がいることをヒグマに伝えるため、代々クマ研で受け継がれてきた掛け声だ。掛け声の後は、森の生き物の気配に注意深く耳を澄ましながら先へ進む。クマ研は1970年に結成され、道内や札幌近郊などでヒグマの調査をしている。天塩研究林は毎年必ず訪れる調査フィールドだ。決まったルートを歩き、ヒグマの足跡やフン、爪痕や食痕などを探すと同時に、ヒグマの食糧となる果実や木の実を数えて調べる。直接ヒグマに接触するのではなく、山に残されたヒグマの「痕跡」からヒグマの生態を調査する地道な活動だ。クマは雑食のため、フンの内容物は果実や草、昆虫など様々で、内容物で見た目も異なる。クマ研前代表の山本大河さん(法学部3年)は、「見つけたヒグマのフンはすべてサンプルとして持ち帰り、食性を分析するために洗って、内容物をアルコール保存します」と話す。昨夏の調査では、採取したヒグマのフンからは果実の種がほとんど出てこなかった。昨年は全国的に山で果実や木の実ヒグマの「痕跡」をたどり半世紀北大には「北大ヒグマ研究グループ」という、北海道に生息するヒグマの生態について研究している学生サークルがある。ヒグマの痕跡をひたすらたどって約半世紀。地道な活動の先に、見えてきたものとは。クマを感じるLitterae Populi Vol.73  06「クマ研」前代表の山本大河さん(左)と現代表の堺萌絵さん。ヒグマの痕跡を地道に探し続けている。

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