然のつながりや結びつきが強い集落で、お互いが助け合う、影響し合う暮らしを間近に見られたことは、今の学生たちにとって大きな刺激になったと思います」と振り返る。また、「住民の方々には学生を快く受け入れていただきましたが、100年もの間ずっと、平井集落とともに和歌山研究林があり、長年の信頼関係があってこそだと感じました」と話した。学生たちは演習の最終日、住民と町役場の職員を前に、自分たちの感じた山村の課題や学生の長期滞在のあり方について発表した。狩猟体験を通して獣害対策に関心を持ったことを発表した農学部2今年2月、北海道大学和歌山研究林と古座川町が連携し、全学部の1、2年生を対象とした一般教育演習(集中講義)が実施された。これまでにも研究林を中心にした演習は行われていたが、町民の協力により狩猟体験などが新たに加わり、実際の町の暮らしを学生たちがより深く学べる内容となった。学生計18人が4泊5日の日程で参加し、研究林の見学のほか、用水路の清掃や廃屋の片付け、獣害対策など、町の人々の日常の営みそのものを体験した。まった落ち葉や泥を掘り返し、春和歌山研究林がある古座川町平井地区は、棚田や美しい清流が織りなす自然の中に、高齢化と過疎という深刻な現実が静かに広がっている。平井地区の2024年の住民数は69人、平均年齢は73歳という、いわゆる「限界集落」だ。学生たちは、ハッサクの収穫や神社の鳥居の塗り替え、ユズの選定や住民の鶏小屋作りなど、生活にまつわる様々な体験を通して、住民と交流した。演習に参加した水産学部2年の加藤桃香さんは、水田に水を引くための長さ3㎞ほどの水路にた行っても住民の方が必ず声をかけの田植えに向けて水が流れるように掃除をしたことが印象的だったと振り返った。加藤さんは、「学生18人で3日に分けてやりましたが、泥やぬかるみは重く、腰や腕に負担がかかる大変な作業でした。これを古座川町の高齢者の方々がやるのは体力的にも大変で、人手不足は深刻な問題だと実感しました」と話した。また、住民との触れ合いの中で、山村集落の課題だけでなく魅力も感じたという農学部2年の松田幸祐さんは、「人の温かさとご飯のおいしさが忘れられないです。どこへてくれるし、地元の方々がごちそうしてくれた郷土料理やイノシシ鍋は本当においしかったです」と笑顔を見せた。北大全体と自治体との連携を担当し、今回の演習の運営に携わった広報・社会連携本部の中村健吾特任准教授は、「人と人、人と自100年間続く研究林と地域の絆地域連携のフィールドとして学生が体感した「限界集落」平井地区の住民と学生の対話の様子。(提供:和歌山研究林)学生は狩猟体験もした。(提供:和歌山研究林)Litterae Populi Vol.75 06
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