ホスピタリティの醸成

 前号に続いて「正門」横のお話し。
 大学の顔でもある正門付近の使い方は、大学の情報を発信したり、大学グッズを販売したりと、近年、いろいろな大学が創意工夫で取り組んでいるはず。
 一連の流れで、国立大学のT大やK大などでは、大学プロデュースのCafeができた。研究者や研究成果を紹介する場にしようとする狙いは、おそらく「科学の話を気軽な場でわかりやすく伝えよう」とするサイエンスカフェの成功が大きいのだろう。
 1年半前に「北大にCafeがあったら」と思い巡らせ、えるむ本誌で仲間を募ったが、その後、ポコポコと他大学に先行されているようである。
 学生と事務職員レベルの発想は、「もしもしカメよ♪」の世界と同じで、頂点に声が届くまでには地道な活動が必要となる。2番煎じ、3番煎じ…、あるいは、「隅っこでやれ」、「やっても無駄だ」と、けんもほろろに扱われるかもしれないが、北海道大学にはフロンティア精神を尊重してくれる風土が根付いている。そして、学生の教育に熱心な先生たちがたくさんおられる。
どこの大学でもやっている、あんなことも、こんなこともできて、なおかつ、学生を表舞台に出して育てたり、大学情報の発信の場として、コンシエルジュ役を務めてもらったりと、大学広報部門と学生支援部門が「協力」して、キャンパスのランドマーク作りに取り組むことができれば、まさに「北大方式」のユニークな「場」が実現できること請け合いだ。 写真

街をつなげよう
 これまでの実験的Cafeで市民と交流する中、お一人から「大学は出ていかないのか?」と言われたことがある。卵が先か、鶏が先かの話は別として、「郊外に移転しろ」ということらしい。都心にある広大なオープンスペースを逆手にとられるとジャマな存在という印象を持たれてしまうのかもしれないが、事実、北大通りに連なる外壁は、街を遮断しているようにも見える。国の施策である「都市再生プロジェクト」によると、大学と地方公共団体、住民等が連携協働し、まちなかの賑わいの回復など、まちづくりに取り組むよう求められている。もし、外壁の部分が大学のPR機能や大学に関心のなかった人をも引き付ける機能を備えるものに変わったら、開かれた大学としてイメージアップにつながるとともに、周辺地域の活性化にも効果を発揮するかもしれない。

高層マンションからお客様
 北大Cafeプロジェクトでは、8月第2週の休日、百年記念館南側の芝生でオープンCafeを開催。観光シーズン真っ盛りで好天だったせいか、中央ローンやエルムの森周辺は、観光客・市民など、予想を遙かに超える人・人・人で一杯だった。
 今回のCafeは、札幌駅直結で南側にそびえ立つ高層マンションにお住まいの方への市場調査を兼ねた。事前に入居数300戸を超えるマンションへ訪問、管理室の暖かいご理解をいただいて各戸のメールボックスに案内文書を入れさせてもらった。
 おかげで、高層マンションからは、仲睦まじいご夫婦、子どもさんと愛犬を連れた奥様、そしてリタイアされて悠々自適のご主人やご家族など20組位の方に訪れていただいたのを始めとして、いつもながら、たくさんの市民と観光客の方々と交流させていただいた。
 都心にお住まいの方にとっては、利便性の高さを求める反面、自然環境の面では目をつぶる方が多く、そういったマイナス面を補う意味でも、「北大の緑」を求めている方が多いようだ。事実、マンションにお住まいの方とお話した限りでは、キャンパスを散歩されたことのある方ばかりだった。
 アンケートでは、「北大に常設のCafeがあったら?」の問いに、すべての人から「ぜひ利用したい」、または「興味がある」と回答を得た。また、「何処にあったら行きたくなる?」では、「正門付近」が63%、中央ローン付近が38%、「もっと奥まったところでもOK」が13%、「博物館か図書館」は6%という状況(複数回答有)だった。
まだまだデータ数が少ない現状では、確定的な言い方はできないが、採算的には正門からどんどん奥まるごとに不利になる感は否めず、北大通りに面して「Cafe」があった場合は、北大通りを行き来する車両や歩行者の目に留まり、集客面で大きな差が出ると思われる。 写真

あー夏休み
 今年の3日間の夏休みは、暑さに向かって上京。月島もんじゃと大学めぐりを楽しんだ。
 月島は、朝のNHK連ドラの影響だが、月島西仲通り商店街で下町のホスピタリティを味わうことができた。ドラマのテーマの一つが「出会った人が財産」ということで、Cafeプロジェクトの活動のテーマと一致するところ大であった。
 その軽やかな足取りのままに都内の大学を巡り、正門とCafeに注目してみた。
 私立の雄、創立150年のK大の正門は、ごく普通の門構え。前方に大きな校舎があるために、ロケーションもいま二(?)。「幻の門」といわれる東門の方が有名のようだ。近くの建物に3年前にできたという「P-Net Cafe」に行ってみた。宅配ピザなどを展開している会社が出店しているようだが、ここもいたって普通のお店で特にK大生を雇用して、ホスピタリティたっぷりに迎えてくれるような感じではなかった。
 次に、もう一つの雄、W大を訪ねた。ここの正門は「無門の門」と言われ、門柱や門扉がない。HPの情報によると、社会に開かれた大学を象徴しているとの記載があった。正門の近くに「Uni.Cafe125」というお洒落なお店があった。創立125周年の周知活動の一環として6年前にオープンしたとのことで、グッズショップが併設されていた。事前調査では、大学の名が付けられたオリジナルブレンドが180円と知り、感嘆していたが、原油高の影響で220円になったばかりだった(笑)。ここも、学生らしきスタッフは見あたらず、もっと大人の女性が対応してくれた。
 3番目は、これまた東京六大学の一つであるR大学。ツタの絡まる校舎を背景に正門周辺はとても良い感じ。夏休み中ということで、レトロ調で人気のある食堂は、残念ながらお休みだった。
 今回は、3校のみの訪問となった。いずれも超有名な大学であるが、北大に比べて、大学関係者以外の人の数が少ないような気がした。こうしてみると、観光地化された大学は珍しい存在と言えそうだ。

K大学正門
K大学正門
W大学正門
W大学正門
R大学正門
R大学正門

K大学Cafe
K大学Cafe


W大学Cafe
 

常設Cafe設置に賛同いただける方とのネットワークを構築したいと考えています。お名前(仮名可)、区分(一般・学生・教職員)を添えたご意見をお寄せください。なお、提供いただいたご意見等は、本誌で紹介させていただく場合がございます。提供先電子メールアドレス:g-sodan@academic.hokudai.ac.jp

【本企画は、2007年度「もしも、社にスタバを創ったら」の続編です。】



メインメニュー