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人獣共通感染症制圧のための研究開発
拠点リーダー写真
space 【拠点リーダー】
高島 郁夫(たかしま いくお)
1947年生れ、1969年北海道大学獣医学部獣医学科卒業、1979年PhD取得(アメリカ合衆国ウイスコンシン大学)。1980年北海道大学獣医学部助教授、1996年北海道大学大学院獣医学研究科教授、現在に至る。これまでJICA集団研修コースのリーダーや日米医学協力研究会の部会長として、また厚生労働省、国立感染症研究所、動物衛生研究所や海外の研究所との共同研究・作業によりウイルス性人獣共通感染症の国家的、国際的な予防対策に関与。

【事業推進メンバー】
喜田 宏/稲波 修/澤 洋文/神谷 正男/有川 二郎
多田 光宏/小沼 操/玉城 英彦/小林 正伸
梅村 孝司/小橋 元/稲葉 睦/菊田 英明
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拠点形成の背景と目的
 近年、世界各地で新興・再興人獣共通感染症が発生し、人類を恐怖に陥れております。人獣共通感染症の病原体は、そのほとんど全てが野生動物に寄生し、存続してきた微生物であります。著しい地球環境の変化が病原巣宿主の生態と行動圏を撹乱し、感染症の多発を招いています。さらに、畜産物、飼料、野生動物やペットの輸入と旅行者の増加に伴って人獣共通感染症が我が国に侵入するリスクはますます高まっています。今や、人獣共通感染症の病原体の生態、病原性、検出技術および制圧対策を研究開発し、危機管理体制を整備するとともに、人獣共通感染症の発生現場でその制圧対策を指揮できる人材を養成することが最重要の国家課題となっています。
 本拠点の目的は獣医学研究科、医学研究科および遺伝子病制御研究所の専門家が結集して、人獣共通感染症の制圧に向けた研究・教育を推進することであります。さらに海外に3つの研究教育拠点を作り、国内外の主要な研究機関と技術と情報の交換を計り、国家課題である人獣共通感染症の制圧にむけた教育と研究を実施します(図1)。まず、BSE、西ナイル熱、インフルエンザ、SARS(新型肺炎)、狂犬病、エキノコックス症、ダニ媒介性脳炎およびハンタウイルス感染症の制圧を目指します。本拠点の将来像は人獣共通感染症国際研究教育センターであります。


図01
図1:本拠点の教育・研究連携

研究拠点形成実施計画
 人獣共通感染症の予防と制圧を目標にSARS、ウエストナイル熱、プリオン病(BSEを含む)、インフルエンザ、エキノコックス症、ダニ媒介性脳炎、狂犬病およびハンタウイルス感染症を対象に以下の研究を実施します(図2)。
(1)診断法の開発:各種感染症の早期診断法としてIgM-ELISA、Immuno-PCRやDNAアレイ法を開発し、動物と人の検体について感度と特異性を検証します。さらにプリオン病の高感度生前診断法を確立します。
(2)ワクチンによる予防法の確立:各感染症のワクチンを開発し、評価します。開発するワクチンは粘膜ワクチン、半生ワクチン、ペプチドワクチンおよびDNAワクチンで、各感染症に最適なものを選択します。
(3)疫学的研究:各感染症について動物と人の血清疫学調査を実施し汚染地を特定します。汚染地において家畜、野生動物、蚊、ダニ等の材料を採集し、病原体を分離して、病原体の自然界における感染環と存続機構を明らかにします。国際サーベーランスシステムを構築し、海外からの疫学情報を収集し、本拠点が収集する情報と合わせて公開します。
(4)リスクアナリシス:上記の疫学情報を参考に、各々の人獣共通感染症発生のリスク評価を行います。国内にすでに存在する感染症については、流行予測、流行拡大阻止、清浄化対策を策定します。侵入が懸念される感染症については侵入経路と侵入の危険度の推定、侵入防止策および侵入時の流行拡大阻止対策などの危機管理体制を構築します。
(5)病原体の遺伝子解析:各病原体の遺伝子の塩基配列を決定し、系統樹解析を行います。この成績をもとに病原体の進化と起源を推定します。
(6)病原性:各病原体の病原性発現のメカニズムを動物実験モデルおよび感染患者材料につき分子免疫学的手法で解析します。ウエストナイル熱、ダニ媒介性脳炎、インフルエンザについては脳炎・脳症の発病機序をハンタウイルス感染症では出血と腎障害の発現機序を解明します。
 以上の成績を総合し、国内外で問題となっている人獣共通感染症の予防と制圧のための対策を講じます。


図02
図2:人獣共通感染症制圧のための研究開発

教育実施計画
(1)人獣共通感染症対策専門家の養成と社会人ブラッシュアップ教育:人獣共通感染症の多発する国から獣医師や専門家を大学院に積極的に受け入れ、日本人の一般入学者と社会人ブラッシュアップ教育コースを含む特別選抜入学者とともに、人獣共通感染症の制圧対策を立案、指揮できる専門家を本拠点においては養成し、世界に供給することを目標とします。これらの専門家は人獣共通感染症の発生現場に赴き、疫学情報の収集、診断および具体的予防対策を実行し、人獣共通感染症からの世界人類の生命を守るため活躍します。さらに彼らが本拠点の構築する国際疫学情報ネットワークに加わり、情報交換することにより、最新かつ正確な人獣共通感染症の疫学情報が入手され、予防対策に有効に活用されます。
(2)国際交流:主要な人獣共通感染症についてアジア・アフリカ各地で感染症サーベーランスのシンポジウムと研修コース(3週間程)を年1回づつ毎年開催するとともに、外国人研修生の所属機関と感染症制圧のための共同研究プロジェクト(5年時限)を実施します。
(3)若手研究者の育成:ポストドクター研究員を年間15名雇用し、COE研究の推進のみならず、大学院教育の充実、若手研究者の育成、ひいては教官人事の流動化につなげます。人獣共通感染症に関連した有望な研究を行っている若手研究者を国際学会で発表させるとともに、海外の大学・研究所へ計画的に派遣し、研究の推進と研究者育成を計ります。
(4)海外からの研修生の受け入れ:JICA,日本獣医師会,WHOなどの国内外の機関が派遣するアジア、アフリカの研修生を引き受け短期間の人獣共通感染症の予防のための研修コースを実施します。