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特異性から見た非線形構造の数学
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space 【拠点リーダー】
小澤 徹 (おざわ とおる)
1961年11月生まれ。1984年 早稲田大学理工学部卒業(物理学科)。1986年 京都大学大学院理学研究科修士課程修了(数理解析専攻)。京都大学理学博士(1990年)。1988年名古屋大学理学部助手(数学教室)、1990年京都大学助手(数理解析研究所)、1992年 北海道大学理学部講師(数学教室)、1993年同助教授を経て1995年同大学院理学研究科教授(数学専攻)、現在に至る。この間フランス南パリ大学CNRS研究員(理論物理・高エネルギー研究所)、スウェーデン王立科学アカデミー研究員(ミッタクレフラー研究所)、南パリ大学客員教授(数値解析研究所)、ジョンズ・ホプキンス大学客員教授(日米数学研究所)等を歴任。SIAM J. Math. Anal.(米国産業応用数学会)、 MSJ Memoirs(日本数学会)、Differential and Integral Equations、Hokkaido Math. J. 等の編集委員。数理物理学、解析学、特に、場の古典論、非線形偏微分方程式、非線形散乱理論、函数空間論を研究。「非線形シュレディンガー方程式の研究」により1998年日本数学会賞を受賞。

【事業推進メンバー】
儀我 美一/中村 玄/泉屋 周一/神保 秀一/西浦 廉政
林 祥介/利根川吉廣/中村 郁/山下 博/林 実樹廣
吉田 知行/辻井 正人/秦泉寺雅夫/山口 佳三/小野 薫
新井 朝雄/岸本 晶孝/西森 敏之/島田伊知朗
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数学を基点とした理論学問体系の展開
 本21世紀COEプログラムは、数学とその周辺諸科学に存在する非線形構造に焦点を当て、特異性の視点より、数学内部(非線形解析学、数理解析学、接触幾何学、特異点論、代数幾何学、表現論、力学系等)の深化とともに、周辺諸科学(数理物理、数理生物、結晶成長、画像処理、気象学、散逸構造、断層面同定等)の新展開を目指すものである。
 本拠点が取り上げる非線形構造とは、まがった空間のような幾何学的な対象ばかりではなく、入力を2倍にしても結果が2倍とならないといった現象(非線形現象)の背景にある構造である。従って、数学のみならず、自然科学、工学、社会科学等の様々な分野に現れる重要な構造であり、線形の場合に比べて予測が難しいので、その解明が進めば、数学はもちろん他分野への貢献は大きい。
 このような研究によって数学本体がより豊かになり、自然や社会の複雑な様相に対して人類のとるべき行動の基本論理、基本原則を社会に提案することが可能になる。このような形での人類・社会への寄与は数学の重要な特徴・使命であると我々は考えている。


本拠点の重要性
 数学はその普遍的特性から、諸科学のなかで最も基本的な基礎科学であり、科学技術創造立国の実現には、数学の振興がその鍵をにぎる。科学技術の構造変革をもたらした計算機、数理ファイナンス、複雑系等の創造は、数学研究より発している。数学の成果が社会に影響を及ぼすとき、社会は根底から変革する。我が国が今日特に重点4分野で平均レベルでは欧米に遅れをとっている理由の一つは、数学先進国でありながら、他分野から数学本来の高度な論理思考面が忘れられ数学は単に計算や公式適用の技能とみなされ、社会そのものの構造変革の理念として認識されてこなかったためと考えられる。本拠点は非線形構造という様々の分野に共通の重要課題について数学的基礎を築くとともに他分野との連携を一層進展させることを目指す。その結果生まれる新たな数学的問題を基礎から応用まで有機的に体系化することにより、数学自身を豊かにするだけでなく、他分野の根源的な進展をうながしていこうとするものである。

プロジェクトの概要
◆研究目的
 本拠点においてはそれぞれの事業推進担当者が上記の観点から多面的にテーマを選び、特異性に視点を置いて非線形方程式、離散と連続、対称性と構造の方向から研究を進める(図1参照)。主な研究テーマを挙げると次のようになる。
 1.波動場の幾何と解析、2.特異形状を生む拡散効果の非線形解析、3.流体の相分離モデルの数理解析、4.材料科学の2次の非線形材料係数、5.材料科学に現れる特異性の解析、6.散逸系における複雑時空パターン、7.偏微分方程式と微分幾何の特異点論的研究、8.二階の接触幾何学に現れる特異点、9.大域的幾何構造に関わる非線形問題、10.非線形解の幾何学的実現としての大域的モジュライ空間の具体的研究、11.モジュライ理論と可積分系、12.リー群の幾何構造と無限次元表現の特異性。
 研究目的を実現するため、次の3機能(先端研究機能、交流機能、情報文献機能)を形成し、研究活動を有機的に連携させ、組織的な体制を作る(図3参照)。

図1図2
図1図2


◆他分野との連携 (先端研究機能)
1.画像処理、数理生物、材料科学等の応用分野を中心に数学研究者を含めた研究会議の開催。
2.2001年度秋より数学専攻ホームページ上「先端研究のための数学センター」(Mathematical Center for Advanced Study)を立ち上げた。学内の他専攻の研究者が先端研究を推進する上で発生した数学上の課題を受け数学研究者を含め検討する場となった。この活動を定着・発展させる。

◆国内外の拠点との研究交流と若手研究者の育成(交流機能)
1.国際会議、その他様々な研究集会、講演会を開催する。必要に応じて重点テーマを指定した特別年、月、週間を設ける。
2.COE特別研究員を中心に客員部門を作り、共同研究や連続講演を企画する。
3.国内外からポストドクターをCOEポスドク研究員として受け入れる。
4.大学間・学部間協定を積極的に提案し、海外の提携拠点を確保する。
5.大学院学生の海外留学を促進する。

◆文献知的財の整備発信(情報文献機能)
1.情報ネットワーク化:技術参事・技術員を雇用し数学関係図書、学術資料の情報ネットワーク化の基盤整備を行うことで知的財の管理方法を確立する。基盤整備は、確率行列を使用し、効率のよい検索を行っているGoogleのWebサービスと独自に開発する検索システムとを併用し、リンク情報、メタデータ情報から優れたフィルターを構成することによって行う。
2.研究成果出版事業の強化:現在刊行しているHokkaido Mathematical Journalをはじめ、数学関係の国際学術誌の編集に関わる業務を国際レベルで遂行する。またプレプリント集の電子化を図る。
3.本拠点の諸活動を外部に広く明快に伝えるために広報活動をホームぺージの充実を含め強化する。

図3
図3