お知らせ

北海道大学重症急性呼吸器症候群(SARS)対策

 北海道大学の教職員,学生の海外渡航並びに外国人研究者,留学生等海外からの本学来訪者等が年々増加の方向にあります。海外との交流がますます活発になる中,2003年春に各地で大きな被害をもたらした重症急性呼吸器症候群(SARS)が,今冬にも再発する可能性があると言われています。
 SARSはSevere Acute Respiratory Syndromeの略で,日本では「重症急性呼吸器症候群」と呼ばれ,今春中国広東省に端を発し,香港,北京など中国の他の地域にも拡大し,また,台湾,カナダ,シンガポール,ベトナムなど世界中の幾つかの国でも大きな問題となった新しく発見された感染症です。
 主な症状としては,38度以上の発熱,咳,息切れ,呼吸困難などで,胸部レントゲン写真で肺炎又は呼吸窮迫症候群の所見(スリガラスのような影)が見られます。また,頭痛,悪寒戦慄(寒気とふるえ),食欲不振,全身けん怠感,下痢,意識混濁などの症状が見られることもあります。
 原因となる病原体は,世界保健機関(WHO)により新型のコロナウイルスであると決定され,「SARSコロナウイルス」と名付けられました。(国立感染症研究所感染症情報センターHP参照)
 本学では,世界保健機関(WHO),我が国外務省の海外危険情報に基づき,教職員・学生のSARS感染を防止するとともに,SARSが発症した場合でも被害を最小限に抑えるため,北海道大学重症急性呼吸器症候群(SARS)対応ガイドライン及び北海道大学重症急性呼吸器症候群(SARS)対策本部要項を制定しました。これにより,本学教職員・学生のSARSに関する意識啓発及び安全確保についての認識が共有できればと願っています。

(研究協力部国際企画課)

北海道大学重症急性呼吸器症候群(SARS)対応ガイドライン
平成15年11月19日
総  長  裁  定
1.重症急性呼吸器症候群(SARS)に関する基本的な心構え
  重症急性呼吸器症候群(以下「SARS」という。)の病原体であるSARSコロナウイルスは,SARSにかかっている人から周囲の人へ感染すると考えられ,最も感染の危険性が高いと考えられるのは,SARS患者の看護・介護をしたり,それと同居をしたり,又はその体液や気道分泌物に直接触れたりするなど「SARS患者との濃厚な(密接な)接触があったこと」です。感染経路としては,発症者に咳や肺炎などの呼吸器症状があることから,気道分泌物の飛沫感染が,最も可能性が高いと考えられますが,種々のSARSの集団発生事例を疫学的に検討すると,それ以外の感染経路もありうると考えられます。つまり,飛沫による感染が主たる経路と考えられるものの,手指や物を介した接触感染,糞便からの経口感染,空気感染の可能性なども,完全に否定することはできないということです。ただし,SARSの地域内伝播が疑われる地域から来た人に対する不条理な行動や偏見につながるような対応は,厳に慎む必要があります。
2.SARSの感染予防策
  SARSに関しての最も効果的な予防法は,SARSの地域内伝播が確認あるいは疑われる地域への渡航を避けることです。やむを得ず渡航する場合には,各自が以下を参考に予防に努めてください。
  やむを得ず海外渡航する場合の感染予防策例
  i )出発前に感染予防用品・医用品等を準備する(例:飛沫感染予防効果のあるマスク(外科用マスク),うがい薬,消毒用エタノール,体温計など)。
  ii )不特定多数の人が集まる場所はなるべく避ける。
  iii )空港,機内,人の多く集まる場所ではマスクを着用する。また,手などをこまめに消毒し,うがいをして菌の感染を防ぐ。
  iv )無理な滞在日程をたてず,少しでも疲れたら休息をとる,十分な栄養と睡眠をとることを心がける。
  v )患者の約2m以内での会話で咳やくしゃみなどによる分泌物の飛沫を浴びたり,SARS患者の看護・介護,同居,又はその体液や気道分泌物に直接触れる等の濃厚な接触を避ける。
  vi )現地・出発地・経由地の病院,救急車の呼び方等の情報を確認する。
  vii )テレビ・パソコン・携帯電話等からSARSに関する最新情報を入手し,有効な予防策があれば直ちに実行するようにする。

3.大学としての取り組み
 1)海外危険情報に対する対応
   世界保健機関(WHO)によるSARSの「地域内伝播が疑われる地域」等の指定などに基づき,外務省から海外危険情報が発出された場合,総長の下に直ちに北海道大学重症急性呼吸器症候群(SARS)対策本部(以下「対策本部」という。)を設置し,全学のSARS感染防止の対策を決定します。また,対策本部は,同情報を踏まえて必要な措置を講ずるものとします(海外危険情報レベル2以上を想定)。

 2)部局等の対応
   各部局等の長は,所属する教職員・学生等の渡航並びに外国人研究者・留学生の受入れ状況を常に把握するとともに,対策本部からの指示・連絡に基づき,適宜対応することとなります。

 3)地域内伝播が確認されている地域からの来学(入国・帰国)者の取扱い
  ア)地域内伝播が確認されている地域及び感染の危険性が高いと思われる地域からの外国人研究者・留学生等入国予定者については,同地域を経由する場合も含め不要不急の受入れは延期又は中止とします。
    緊急かつ必須の国際交流事項があると判断され,やむを得ず受け入れる特別な事由がある場合には,受入れ教官又は連絡担当者(以下「受入れ責任者」という。)は,必ず事前に対策本部に連絡し,対策本部の許可を得た上で受け入れて下さい。その際には来学予定者に対して次の事項について周知徹底を図って下さい。
    なお,本学教職員・学生の帰国予定者についても同様に周知徹底をお願いします。
  イ)やむを得ず受け入れる来学(入国・帰国)予定者に対する連絡事項等
   i )受入れ責任者は,感染防止のため,来学予定者に予め次の事項について承諾願い,別紙1又は2により,対策本部長宛て承諾書を提出させるなど,万全の予防策をとって下さい。
   ・可能な限り入国前10日間以上,SARS感染経路に接近しないこと。
   ・感染地域からの受入れ予定者については,家族や所属機関及び周辺でのSARS発生の有無又は感染が疑われる者がいないことを様式1により確認すること。(万一該当する場合は来学(入国)を遠慮願う必要があります。)
   ・入国時に検疫所から配布される質問票及び健康カードの内容を遵守すること。
   ・日程,連絡先を確認するため,入国後の移動行程を予め報告すること。
   ・入国後10日間は,手洗い,うがいなどの基本的な感染予防策を励行,毎日朝夕2回の体温を測定し,様式2により記録すること。
   ・入国後10日以内に発熱等感染が疑われる自覚症状が出た場合には,必ず申告すること。
   ii )本学教職員,学生の帰国予定者等にあっては,上記連絡事項を遵守するとともに以下の事項を必ず励行するよう周知し,確認願います。
   ・帰国直後の健康状態を保健管理センターへ連絡すること。(水産科学研究科・水産学部は医務室へ)
   ・帰国後10日間は自宅で待機し,健康状態を確認すること。また,毎日朝夕2回の体温を測定し,様式2により記録すること。
    1.人に会うのは最小限にし,濃厚な接触は避けること。
    2.やむを得ず外出する場合にはマスクを着用すること。
    3.38度以上の発熱,咳,呼吸困難の症状が一つでも出た場合は,保健管理センターに電話で連絡すること。
   ・異常がなかった場合には,11日目に保健管理センターへ連絡すること。
  ウ)やむを得ず受け入れる来学(入国・帰国)予定者が決定した場合,受入れ責任者は来学の詳細(日程等)を対策本部に連絡して下さい。対策本部は,連絡に基づき受入れに遺漏のないよう,次の準備を行います。
   ・保健所,医療機関への連絡体制の整備
   ・接触の可能性のある人たちへの事前連絡及び連絡網等の整備
   ・万一の事故の場合の対応体制の整備
   ・最新かつ正確な情報入手経路の確保
   ・来学(入国・帰国)者の所属先等への受入れ準備及び対応についての確認
   ・宿泊先の確保(状況に応じて,10日間以上の厳重な健康観察等に対応できる場所の確保,寮生の場合は代替住居の手配及び食事の手配)の確認
   ・感染予防用品,医用品等の確保の確認
  エ)来学(入国・帰国)時には,受入れ責任者は,事前に連絡した事項等についての確認を行うとともに,次の措置を講じて下さい。
   ・極力公共交通機関等の利用を避け,不特定多数の者と接触する機会を減らす。
   ・入国後10日間の連絡先の確認やできる限りの移動経路等の事後検証が可能な状況を作っておく(移動行程の記録)。
   ・来学(入国・帰国)者の精神的な負担に十分配慮する。

 4)地域内伝播が確認されている地域への渡航者の取扱い
   本学教職員,学生で地域内伝播が確認されている地域及び感染の危険性が高いと思われる地域への渡航予定者,又は外国人研究者・留学生等で一時帰国予定者については,同地域を経由する場合も含め原則として渡航は延期又は中止とします。
   緊急かつ必須の国際交流事項あるいは家族の重病等の特別な事由がある場合には,受入れ責任者に相談して下さい。受入れ責任者は必ず事前に対策本部に連絡し,対策本部の許可を得た上で前記2の予防策等に準じて対処して下さい。

 5)感染の疑いのある者の取扱い
   やむを得ず受け入れる来学者と接触した可能性があり,かつ,38度以上の発熱,咳又は呼吸困難の症状が一つでも出た場合は,保健管理センターに必ず電話で連絡し,指示を受けて下さい(水産科学研究科・水産学部は医務室)。

 6)感染した者又は感染の疑いのある者が確認された場合の対応
   対策本部は,本学関係者にSARSに感染した者又は感染の疑いのある者が確認された場合には,受入れ責任者を通じて感染拡散防止のための措置を講ずるものとします。

4.その他
  参考として現状でのSARSへの対応についての資料を示します。
  なお,正確かつ最新の情報は,各自で収集に努めるようお願いします。

 1)関連ホームページ
   外務省海外安全情報 http://www.pubanzen.mofa.go.jp/
   厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/
   WHO http://www.who.int/csr/sars/en/
   国立感染症研究所・感染症情報センター http://idsc.nih.go.jp/index-j.html
   米国疫病管理・予防センター(CDC) http://www.cdc.gov/ncidod/sars/

 2)SARS(重症急性呼吸器症候群)に関する緊急連絡先(SARS(重症急性呼吸器症候群)対策本部が設置された場合の連絡先)
    北海道大学研究協力部国際企画課
        電話 011−706−2334  FAX 011-706-2095
        E-mail:kouryu@general.hokudai.ac.jp
    北海道大学学務部留学生課
        電話 011−706−2182  FAX 011-706-4874
        E-mail:ryugaku@academic.hokudai.ac.jp

 3)SARS感染の疑いがある者又はSARS感染の疑いがある者を確認した場合の学内相談窓口
   北海道大学保健管理センター内科 電話 011−716−2111(2028)
011−706−3622
   北海道大学病院総合外来内科 電話 011−706−5750
011−706−5751
   北海道大学水産科学研究科・水産学部医務室 電話 0138−40−5554
  ※夜間(17時〜翌日9時),休日及び祝日の対応
   北海道大学病院事務当直 電話 011−706−5610
別紙1 SARS地域内伝播が確認されている地域から入国するための承諾書
別紙2 SARS地域内伝播が確認されている地域から帰国するための承諾書
様式1 SARS問診票(入国・帰国前10日間及び入国・帰国当日用)
様式2 SARS問診票(入国・帰国後10日間用)

参 考

外務省海外危険情報
レベル1「十分注意して下さい」
     当該国(地域)への渡航,滞在に当たって特別な注意が必要であることを示し,危険を避けていただくよう,おすすめするものです。

レベル2「渡航の是非を検討して下さい」
     当該国(地域)への渡航に関し,渡航の是非を含めた検討を真剣に行っていただき,渡航される場合には,十分な安全措置を講じていただくことをおすすめするものです。

レベル3「渡航の延期をおすすめします」
     当該国(地域)への渡航は,どのような目的であれ延期されるようおすすめするものです。
     また,現地に滞在している邦人の方々に対しては退避の可能性の検討や準備を促すものです。

レベル4「退避を勧告します」
     現地に滞在している全ての邦人の方々に対して,当該国(地域)から,安全な国(地域)への退避(日本への帰国も含む)を勧告するものです。

平成15年11月19日
 北海道大学重症急性呼吸器症候群(SARS)対策本部要項を次のように定める。
北海道大学総長  中 村 睦 男
北海道大学重症急性呼吸器症候群(SARS)対策本部要項
 (設置)
第1条 北海道大学(医療技術短期大学部を含む。以下「本学」という。)に,外務省から重症急性呼吸器症候群(以下「SARS」という。)に関する海外危険情報が発せられた場合,本学における職員,学生等の意識啓発及び安全確保を図るため,北海道大学重症急性呼吸器症候群(SARS)対策本部(以下「対策本部」という。)を置く。
 (任務)
第2条 対策本部は,次に掲げる任務を遂行するとともに,北海道大学重症急性呼吸器症候群(SARS)対応ガイドライン(平成15年11月19日総長裁定)に基づき,SARS感染対策に関する業務を総括するものとする。
 (1) 感染地域に関する情報の収集及び発信に関すること。
 (2) 感染地域における研究者及び学生に係る受入れ又は派遣(以下「研究者等の受入れ等」という。)の状況の把握に関すること。
 (3) 本学におけるSARS対策の方針(海外渡航及び研究等の受入れ等の自粛要請等)の決定及びその実施に関すること。
 (4) 報道機関への対応及び関係機関への通報に関すること。
 (5) 学生,保護者その他関係者への対応並びに医療機関及び保健所との連携に関すること。
 (6) 部局等との連絡及び調整に関すること。
 (7) その他SARS対策に関すること。
 (組織)
第3条 対策本部は,次に掲げる者をもって組織する。
 (1) 総長
 (2) 副学長
 (3) 留学生センター長
 (4) 保健管理センター所長
 (5) 北海道大学病院長の推薦する当該病院の感染管理室副室長 1名
 (6) 事務局長
 (7) 総務部長
 (8) 研究協力部長
 (9) 経理部長
 (10) 学務部長
 (11) その他総長が必要と認めた者
 (本部長及び副本部長)
第4条 対策本部に,本部長及び副本部長を置く。
2 本部長は,総長をもって充てる。
3 本部長は,対策本部の業務を総括する。
4 副本部長は,総長が指名する副学長をもって充てる。
5 副本部長は,本部長を補佐し,本部長に事故があるときは,その職務を代行する。
 (業務班)
第5条 対策本部に,本学の職員,学生等でSARSに感染した者(感染したおそれのある者を含む。以下同じ。)が確認されたときは,対策本部の任務を遂行するため,次の各号に掲げる業務班を置き,当該各号に掲げる業務を行わせるものとする。
 (1) 総務班 部局等への周知,報道機関への対応及び関係機関(文部科学省,法務省地方入国管理局,北海道,札幌市等)への通報に関すること。
 (2) 情報収集班 SARS関連の情報並びに研究者等の受入れ等に係る情報,移動行程及び健康状況に関すること。
 (3) 家族班 学生,保護者その他関係者からの問い合わせに対する対応方法並びに本学の決定した方針の通知に関すること。
 (4) 医療・渉外班 SARSに感染した者及び感染した者に接触した者の隔離等に係る医療機関及び保健所との連携に関すること。
 (5) 防護班 宿泊先,医薬品等の確認及び確保に関すること。
 (庶務)
第6条 対策本部の庶務は,研究協力部国際企画課において処理する。
   附 則
 この要項は,平成15年11月19日から実施する。

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