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スラブ研究センター公開講座「ロシアを見た日本人・日本を見たロシア人」が終了

 今年で19回目を迎えたスラブ研究センター公開講座が,5月10日(月)から5月31日(月)までの毎月曜と金曜に,計7回にわたって開かれました。
 今年から来年にかけて,日露戦争開戦100周年,日露両国が国交を樹立した下田条約締結150周年,1945年8月のソ連対日参戦から60年など,日ロ両国の関係史の重要な節目を振り返る機会が多いことから,両国関係史を「人物史」として捉えることを公開講座のねらいとしました。各回の講義での主題となった人物の多くは,両国関係史のうねりの中で,いわば非自発的に,互いの国に至ったり,あるいは,両国関係で役割を果たすことになった人びとです。
講義の展開は,必ずしも時代の流れとは一致しませんでしたが,1918年からのシベリア出兵期にロシア極東の知日家が,出兵した日本軍との関係でたどった複雑な運命について新しい史料も踏まえて紹介する第1回から始まり,「ロシアを見た日本人」としては,江戸時代に漂流してロシアに至った漂着民たち,明治時代から第2次大戦中までの時期にカムチャツカなどロシア領土・領海で漁業・水産加工に従事した人々,1945年から北樺太の収容所生活を体験した人々など。また,「日本を見たロシア人」についても,18世紀半ばに蝦夷地を訪れたロシアの冒険商人たち,最初のロシア遣日使として根室で越冬し,ロシアの文物に日本人が直接触れるきっかけをつくったラクスマン一行,20世紀前半に相次いで来日し,ヴァイオリン教育で,また画家として,日本の芸術に大きな影響を与えたアンナ・ワルワラのブブノワ姉妹など。いずれの場合にも,日ロ関係の正史に名を残すことが少ないものの,それらの人々の体験が日本におけるロシア・イメージに影響を及ぼした人びとが取り上げられました。
 閉講時のアンケートでは,「日本の西端(鹿児島)と東端(根室)からの講師の問題意識が重なり,最新の研究成果を盛り込んで,200年前のできごとを現代につなげて理解できた」,「収容所生活を実際に体験した講師の話が貴重だった」,「ブブノワ姉妹をめぐる家族の歴史に感銘を受けた」など高い評価を得ました。
 なお,各講義の概要は,北海道開発問題研究調査会の雑誌『しゃりばり』に近く連載されます。
原教授の講演に聞き入る受講者たち
原教授の講演に聞き入る受講者たち
(スラブ研究センター)

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