訃報
名誉教授 佐々木 昭治(ささきしょうじ) 氏(享年77歳)
名誉教授 佐々木 昭治(ささきしょうじ) 氏(享年77歳)

 名誉教授 佐々木昭治氏は,平成16年11月16日ご病気のためご逝去されました。ここに御生前の御功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 先生は,昭和2年6月22日北海道小樽市に生まれ,昭和26年3月北海道大学理学部植物学科を卒業され,同年4月北海道大学大学院に入学,昭和30年3月同大学院を中途退学し,同年4月北海道大学理学部助手に就任されました。その後,昭和49年2月同学部助教授を経て,昭和51年11月北海道大学理学部教授に任ぜられました。平成3年3月同大学を定年退官し,同年4月には北海道大学名誉教授の称号を授与されました。
 この間,先生は北海道大学理学部,理学研究科における生化学,植物生理学および分子生物学の研究と教育,研究指導に尽力され,多くの功績を残されました。
 先生の主要な研究は3つに大別されます。アミノ酸代謝の比較生化学的研究,代謝制御の酵素学的研究,低温適応機構の生理・生化学および分子生物学的研究であります。
 アミノ酸代謝の比較生化学的研究では,多数の菌株を用いて,そのアミノ酸酸化能を異なる温度条件下で比較研究されました。その結果,一般に腐敗細菌に属する細菌は大腸菌などの腸内細菌と比べてどの温度でもアミノ酸酸化能が高いことを明らかにされ,細菌の代謝における適応進化を論じられました。なかでも,アミノ酸のL-ロイシンを速やかに酸化分解する能力を持つプロテウス ブルガリス菌についての研究を進められ,L-ロイシンの分解経路に新しい2つの反応段階が存在することを発見され,Nature誌に公表されました。
 代謝制御の酵素学的研究では,プロテウス ブルガリス菌を用いて発酵,呼吸に関する研究を行われ,コハク酸の発酵産物としての蓄積は,グリオキシル酸回路の酵素が機能している結果であることを明らかにされました。さらに,共通の基質を利用するクエン酸回路とグリオキシル酸回路が,NADP-ピロホスファターゼによって調節される補酵素NADPの濃度によって制御されることを初めて証明されました。
 低温適応機構の生理・生化学および分子生物学的研究では,当該研究に好適な実験材料である好冷菌ヴィブリオを自ら自然より採集されて,その低温下での生理・生化学的特徴を明らかにすべく,タンパク質合成系,エネルギー生成系,低温適応型酵素,細胞膜脂質など広範な分野にわたった研究を推進され,生理現象から分子レベルに至る低温適応生物学研究を指導されました。中でも,生物の中心的代謝経路であるクエン酸回路の主要な酵素であるイソクエン酸脱水素酵素が,タンパク質の構造を異にしたアイソザイムとして共存すること,原核生物および植物細胞の低温適応における主要なメカニズムと考えられている膜脂質不飽和脂肪酸組成の変動について,不飽和脂肪酸の二重結合のシス−トランス異性化反応が関与していること,耐冷菌シュードモナスには,酸素を必要とする脂肪酸不飽和化酵素と,無酸素的に不飽和脂肪酸が合成される経路とが共存していることなどは世界的に重要な知見であります。
 先生は,36年間にわたって北海道大学理学部および理学研究科において学部学生,大学院学生の教育指導にあたられ,多数の人材を社会に送り出されました。また北海道大学,および同理学部の各種委員会委員を歴任し,学内における学生の教育,厚生補導に努力されるとともに,昭和62年から平成元年までの2年間,北海道大学公開講座委員長として社会における今日の大学のあり方を示されました。
 先生は,学外においては日本植物学会,日本植物生理学会,日本生化学会の各学会評議員に就任され,我が国の植物学,生化学の進歩発展に貢献されました。昭和54−55年ならびに昭和58−59年は日本植物学会北海道支部長として北海道における植物学の発展と社会への普及に尽力されるとともに,昭和59年には日本植物学会第49回大会会長として,同大会を主催されました。
 ここに謹んで先生のご冥福をお祈り申し上げます。

(理学研究科・理学部)


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