| 名誉教授 石川純氏は,2年前より病気療養中のところ,平成17年2月21日午前2時47分,都立豊島病院にて御逝去されました。ここに先生の御生前の御功績を偲び謹んで哀悼の意を表します。
先生は,大正11年10月6日東京都文京区に生まれ,昭和16年東京高等歯科医学校(現東京医科歯科大学歯学部)に入学された後,昭和20年,終戦直後の9月に卒業されました。翌21年東京医科歯科大学医学科に入学,24年3月に卒業された後に1年間のインターン修業後,医師免許も修得されました。昭和25年5月東京医科歯科大学歯学部の桧垣麟三教授の歯科保存学教室に助手として入られ,難治疾患とされていた歯周病への取り組みを始められました。昭和30年4月歯学部講師となり,昭和33年から35年まで我が国の歯科医としては,はじめて,米国フルブライトの奨学金を得て,米国タフツ大学へ留学されました。帰国後昭和36年5月に東京医科歯科大学助教授となられました。昭和42年6月に創設された北海道大学歯学部に昭和43年7月保存学第一講座助教授として赴任されたのち,歯周病学を担当する新講座開設の準備を行われました。昭和45年4月,北海道大学歯学部予防歯科学教授となられた後,昭和46年4月歯科保存学第二講座を正式開設,初代教授となられ,教育,臨床,研究に情熱を傾けられました。昭和53年5月から昭和57年4月までは歯学部長と北海道大学評議員を併任され,歯学部並びに全学の研究と教育の発展に多大の貢献をされました。昭和59年2月から学術審議会専門委員となられ昭和59年12月から放送教育開発センター運営協議員も併任されました。昭和61年4月定年退職とともに北海道大学名誉教授の称号が授与されました。本学退官後も昭和63年から平成2年まで
International Academy of Periodontology (IAP)の会長となられ,歯周病治療および研究の発展に広く活躍されました。
この間,国民病とも言われる歯周病の原因の解明と治療に関する研究に携わられました。研究当初,歯周病の原因は未知の全身因子が深く関与しているとされており,その全身論を解明すべく,ダイランチンの服用に伴う歯肉増殖に着目されて,東大精神科の外来で887人のてんかん患者の口腔を調べて,その発生状況を解析されました。さらに,薬物による歯肉増殖の解明から歯周疾患の原因を探る目的で,ネコをもちいた動物実験モデルを確立されました。昭和33年7月から35年7月までボストン タフツ大学歯周病学教室のグリックマン教授のもとへ留学されて,歯周疾患の治療にはデンタルブラッシングが重要であることを学ばれ,帰国後は,日本では全く認知されていなかったブラッシングの効果を実証する多くの臨床実験を行われました。さらに今西錦司,宮地伝三郎教授の率いる京大のサル研究グループに加わり,飼育ザル309頭の口腔を診査して,食べ物の違いがどれほど口の中の環境汚染を引き起こし,ひいては虫歯や歯周疾患を引き起こすかを調べられ,歯周病がデンタルプラークという局所因子によって引き起こされることを実証されました。
北海道大学歯学部附属病院(現北海道大学病院歯科診療センター)においては,歯周疾患に対する合理的かつ効率的な診療体系の確立に力を注がれました。ブラッシングが何故歯周疾患の予防や治療に効果を挙げうるのかを分析的に解明されて,さらに歯肉マッサージがいかに大切かを実証されました。また,ブラッシングを確実に行わせるために必要なモチベーションに関して,心理学や行動科学の考えを取り入れた実験を行われました。さらに歯周疾患の修飾因子についての研究についても精力的に研究をなされて,特に咬合性外傷や口呼吸と歯周疾患の関係の解明に関する多くの成果をあげられました。
学会活動では,International Association for Dental Research (IADR),American
Academy of Periodontology (AAP),International Academy of Periodontology,日本歯周病学会,日本歯科保存学会,日本補綴学会,基礎歯学会,日本歯科教育学会,日本歯科教育学会,流れの可視化学会,口腔病理学会,日本口腔科学学会,日本精神神経科学学会,口腔衛生学会,プリマーテス(霊長類)研究会,日本小児歯科学会,北海道歯学会の役員として活躍され,特に日本歯周病学会常任理事,日本歯科保存学会理事,International
Academy of Periodontology (IAP) 会長になられて学会運営に深く関わられました。昭和46年9月には第41回日本歯周病学会総会,昭和63年には第3回国際歯周病学会(IAP)を京都で主催されました。このような先生の御功績に対して,平成10年勲二等瑞宝章が授与されました。
ここに謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
(歯学研究科・歯学部)
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