訃報
教授 宮崎 勝巳(みやざきかつみ) 氏(享年61歳)
教授 宮崎 勝巳(みやざきかつみ) 氏(享年61歳)

 北海道大学病院教授 薬剤部長 宮崎勝巳氏は,平成17年3月21日,すい臓がんのため,ご逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,昭和18年10月30日札幌市白石区,菊水に生まれ,同43年北海道大学薬学部薬学科を卒業されました。直ちに大学院にお進みになり,昭和45年薬学研究科修士課程を修了と同時に,同年4月には,医学部附属病院薬剤部に文部技官として採用されました。昭和50年には,「蛍光法によるアンピシリン誘導体の定量法と消化管吸収に関する研究」で薬学博士号を取得されました。いまでこそ,液体クロマトグラフィー等を使用しての化学的定量法が主体となっていますが,当時はバイオアッセイ法が主流でありました。開環したβ-ラクタム環が,塩化第二水銀を触媒として蛍光物質を生じることをヒントに定量法を開発し,当時は世界的にも優れた化学的定量法として注目されました。
 昭和58年4月には助教授 副部長に昇任し,同60年1月より,米国ジョーンズホプキンス大学で1年間留学し,糖脂質の分析・代謝に関する研究を行われました。帰国後,昭和62年には,恩師である現北大名誉教授 有田隆一先生の後を受け,教授 薬剤部長に昇任し,平成10年4月からは北海道大学大学院薬学研究科医療薬学講座薬物動態解析学分野の教授も兼任されておりました。
 同氏は,北海道大学に奉職して以来35年間,北海道大学医学部附属病院(現北海道大学病院),医学部,医学研究科,薬学部,薬学研究科において幾多の学生,大学院生の教育及び研究指導にあたり,かつ,多くの研究者,医療従事者等を養成し,大学研究機関,診療機関をはじめ各界に優秀な人材を送り出しました。
 同氏の研究分野は医薬品の適正使用に関わる基礎的,応用的領域全般にわたっており,特に薬物の微量定量法の開発や生体内動態の機構解明,患者が飲みやすい剤形の院内製剤の開発,注射薬の配合変化の予測法構築などを通じて,生物薬剤学の分野の発展と医療に大きく貢献しております。
 薬物の微量定量法の開発及び生体内動態の機構解明に関する研究は,現在その必要性が大きく取りあげられている個別化医療を実現するために必要な患者個々の薬物血中濃度推移推定のための基礎的知見となっています。また,その成果として,それまでは院内製剤としてのみ供給されてきた稀少(きしょう)疾患に対する薬物の体内動態を明らかにした知見をもとに,市販品として承認を得るに至った医薬品もあります。
 薬剤師の職能と同氏の研究分野を生かした医療への貢献として,院内製剤の開発と注射薬配合変化予測法の構築等があります。院内製剤には難治性疾患の患者のニーズに対し,市販の医薬品では対応できない隙間(すきま)を埋める重要な働きがあります。特に,小児の患者が多い先天性の疾患に対する治療薬のうち,服薬を遵守しなければ死に直結する疾患に対する院内製剤の開発により,多くの患者の救命・救急,生活の質の確保に貢献しました。注射薬の配合変化は医薬品の有効性に関わる大きな問題でありますが,同氏が著者・監修者である『表解 注射薬の配合変化』は昭和54年の初版発刊以来,現在に至るまで多くの医療機関で繁用されています。これらの研究成果は,250編以上の原著論文および総説等にまとめられ,その研究成果は国内外の学会の注目を集めております。その結果,これらの研究業績に対して,平成16年社団法人日本病院薬剤師会病院薬学賞を受賞されました。
 学会活動としては,社団法人日本薬学会評議員,社団法人日本病院薬剤師会理事,日本医療薬学会理事,日本薬物動態学会理事,日本TDM学会理事,日本臨床薬理学会評議員,日本薬剤学会評議員を務め,これらの学会の発展に寄与するとともに,医薬品の適正使用並びに薬剤師の卒後教育等に尽力されました。
 大学の管理運営に関しては,薬剤部長に就任以来,薬事審査委員長として,院内での採用薬品の舵取(かじと)り役を果たし,また,新GCP施行以来,現在ある治験管理センターの設立に大きく貢献されました。
 一方,学外においては平成14年1月から平成15年9月まで科学研究費委員会専門委員(日本学術振興会)として学術振興に貢献するとともに,平成13年から平成16年まで薬剤師試験委員(厚生労働省医薬食品局)として薬剤師教育の向上と資格審査の適正化を図り,我が国の薬学教育・薬剤師教育の指針作成に尽力されました。さらに平成7年から平成8年および平成14年から平成16年まで,北海道地方薬事審議会委員として地域の医療,衛生等の向上に貢献されました。
 また同氏は,薬学教育における病院実習の充実を目的に,北海道薬学病院実習調整機構の創設に尽力され,北海道で全国に先駆けて発足した実習調整機関はその後,全国各地における薬学部学生の病院実習調整機構の模範となりました。この機構を利用した実習形態は,平成18年度から薬学部に導入される6年生学科の長期病院実習を実現するための基盤ともなりました。
 以上のように,同氏は教育と自らの研究推進及び研究指導を通して,医療に直結する薬学の学問分野の発展に大きく貢献されました。また,地域社会の医療,衛生等の向上,さらには質の高い薬剤師養成のための教育システム作りに尽力され,その功績は誠に顕著であります。
 今後ますますのご活躍が期待される中でのご逝去であり,誠に残念であります。心からご冥福をお祈り申し上げます。

(北海道大学病院)


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