対中国円借款(ODA)による中国重慶市廃棄物処理研修を実施 |
本学では,中国円借款事業の一環として,重慶市の大学教員10名を受入れ,7月10日(月)から8月4日(金)までの4週間に渡り廃棄物処理に関する研修が実施されました。
本研修は,本学が国際協力銀行に提案して調査を委託された「中国内陸部人材育成事業」特別研修コース開発に係る提案型調査を経て,1年半にわたる準備の末に実現したものです。廃棄物処理の分野は,現在都市化が世界一の早さで進んでいるといわれる中国,特に重慶市では大変深刻な問題となっています。分別,収集,埋立,各種資源化技術など,廃棄物処理・管理全般について学ぶことが,同分野の大学教員の資質向上・教育カリキュラム作成に不可欠であり,そして,中国が現在目指している総合的廃棄物処理システム構築のためには,理論と実践の両方を体験できる廃棄物全般を学べるコースを提供する必要があるという背景のもとに研修は実施されました。研修は,本学が作成した「リサイクル・適正処分のための廃棄物工学の基礎知識」(中国語版)教科書を使用した講義(理論)及び関連施設等の見学(実践)を組み合わせ,日本における成功と失敗例の紹介等を交えながら行われました。また,円借款により研修事業が実施されていることを深く理解して頂くために,国際協力銀行による協力のもとに対中国ODA概要の講義も実施されました。無事研修全日程を終え,8月4日(金)に行われた閉講式では研修員全員が晴れ晴れとした顔で岸浪副学長から修了証書を受け取っていました。
加えて,中国と日本の異文化交流を深めることも研修の一環であるととらえ,琴や茶道などの日本文化を体験してもらうことや,温泉宿への滞在,豊平川花火大会見学なども研修の合間に取り入れ,研修員に好評を博しました。
今後この研修の成果が,重慶市の廃棄物処理やリサイクル分野の教育に生かされ,行政面での取り組み支援とつながり,さらに,重慶市,並びに中国の大学と本学との研究連携の深まりにもつながることが期待されます。
大学の理念の一つである社会貢献・国際貢献の新たな取り組みとして,今回の経験を踏まえ,今後も同様の事業を企画・実施していく方針です。
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<研修実施体制>
事業計画・講義・見学:
大学院工学研究科 松藤敏彦教授
大学院農学研究院 松田從三教授
公共政策大学院 吉田文和教授
講義・研修サポート:
大学院工学研究科 広吉直樹助教授
大学院工学研究科 松尾孝之技術専門職員
通訳:
農学研究科博士課程 郭桂芬さん
農学研究科修士課程 張会均さん
(札医大)研究員 劉赫さん
実施全般:
国際企画課,北大北京オフィス,国際戦略本部
<講義名>
・廃棄物法体系・定義−循環型社会の概念−
・廃棄物処理計画(行政)・運営−行政,民間の役割分担−
・ごみ分別・収集輸送−可燃性,資源性による分別−
・処理コスト,経済的手法−環境会計についても−
・埋立地浸出水処理
・資源回収の方法と品目(行政・集団・拠点)−古紙,ガラスびん,缶−
・焼却技術
・焼却灰処理(溶融,安定化,金属回収)
・耐久消費財の資源化−家電,パソコン,タイヤなど−
・資源回収技術(破砕,選別)
・有機性廃棄物の資源化
・農産廃棄物の処理・資源化
・プラスチックの資源化−PETボトル,その他のプラスチック−
・環境影響評価・LCA
・鉱山廃棄物の処理−特に排水処理−
・有害廃棄物の管理
<視察先>
・廃棄物埋立地,浸出水処理施設「山口処理場」
・埋立地跡地利用「モエレ沼公園」
・焼却施設「発寒清掃工場」・大ごみ処理施設「発寒破砕工場」
・産業廃棄物処理施設「公清企業中沼産業廃棄物処理センター」
・家電リサイクル施設「北海道エコリサイクルシステムズ」
・産業廃棄物処理施設「苫小牧ケミカル」
・生ごみバイオガス化施設「北空知衛生センター」
・畜ふんバイオガス化施設「町村農場バイオガスプラント」
・資源選別施設「中沼資源選別センター」
・廃自動車解体破砕施設「マテック」
・畜ふん堆肥化施設「ニセコ堆肥場」・「黒松内町堆肥化施設」
・浄水施設「定山渓ダム」・「白井川浄水場」
・下水処理施設「創成川水処理センター」・「下水道科学館」
・建設廃材リサイクル施設「角山開発」 |
(学術国際部国際企画課) |
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