北海道大学大学文書館では,9月29日(金)に中島九郎関係資料を,10月20日(金)に高岡熊雄関係資料の寄贈を受けました。中島九郎関係資料の寄贈者はご息女の越山澄子さん,高岡熊雄関係資料の寄贈者はご子息夫人の高岡治子さんです。
それぞれ当日は,寄贈者のお宅にて,和やかな雰囲気の中で,資料ごとに丁重なご説明をしていただき,北海道帝国大学で教授として重きをなした中島九郎ならびに高岡熊雄についての興味深いエピソードをお話ししていただきました。
中島九郎は明治43(1910)年に東北帝国大学農科大学を卒業後,そのまま教官となり,長く農政学の教授をつとめました。中島九郎の恩師にあたる高岡熊雄は,明治28(1895)年に札幌農学校を卒業し,ドイツ留学を経て,農政学殖民学講座の担当教授となり,第3代総長もつとめました。
この度,受贈した中島九郎関係資料は,書簡32通,アルバム2冊,受講スケッチ「植物学スケッチ」,直筆原稿「日米問題ノ真相」,大礼服など約70点です。例えば,書簡の中には,昭和2(1927)年12月,米国で在外研究中の松田武雄(農学部助教授)から中島あてに差し出されたものがあり,R.T.Elyなどの米国在住の経済学者の近況や農業経済学の方法論に対する思考などがうかがえ,農業経済学の系譜を明らかにする新たな資料といえます。
高岡熊雄関係資料は,札幌農学校卒業証書,書簡458通,アルバム13冊,直筆原稿「ドイツ内南洋統治史論」,手帳(研究ノート・日記断片)63冊など約780点です。書簡の中では,高岡熊雄の恩師である新渡戸稲造,農学校において1期後輩の大村卓一(のちに満鉄総裁)からのものがともに13通で最多であり,駒井徳三,東郷実,早川鐵治など札幌農学校より継承されてきた農業経済学における人的つながりを読み解くことができます。また,直筆原稿「ドイツ内南洋統治史論」には,論考の典拠資料も備わっており,学術的に貴重です。
今後,これらの受贈資料については,大学文書館において目録を作成し,覆刻・複写を行うなど,学術研究資料として広く活用できるようにいたします。 |
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1934年1月高岡熊雄総長就任祝賀会(前列右4番目より中島九郎,高岡熊雄。中島九郎関係資料) |
新渡戸稲造,大村卓一の高岡熊雄あて書簡(高岡熊雄関係資料) |
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(大学文書館) |
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