工学研究科の大熊毅教授は,「ケトン類の不斉水素化反応の開発」により第3回(平成18年度)日本学術振興会賞を受賞されました。
授賞式は,3月2日(金)に日本学士院において行われました。
日本学術振興会賞は,優れた研究を進めている若手研究者を見い出し,早い段階から顕彰してその研究意欲を高め,独創的,先駆的な研究を支援することにより,我が国の学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させることを目的に平成16年度に創設されたものです。授賞対象者は人文・社会科学及び自然科学の全分野において45歳未満で博士又は博士と同等以上の学術研究能力を有する者のうち,論文等の研究業績により学術上特に優れた成果をあげている研究者とされています。第3回(平成18年度)は全国の若手研究者25名が受賞され,本学では同氏1名の受賞でした。
同氏は,平成8年10月に名古屋大学大学院理学研究科助教授として採用され,本学には平成16年6月に工学研究科教授に就任しています。同氏はこの間,様々な構造をもつケトン類の不斉水素化反応の開拓研究において優れた成果を挙げてきています。
同氏は,独自の発想から光学活性ルテニウム錯体触媒を設計し,単純ケトン類の高速かつ高エナンチオ選択的水素化反応の開拓に世界で初めて成功されました。これが評価され,今回の受賞となりました。一般に平面的な構造をもつケトンを還元すると,いわゆる「右手と左手」の関係にある鏡像異性体をもつ第二級アルコールとなります。その異性体の一方を選択的に合成できれば様々な有用物質合成の原料として利用することができるようになりますが,ケトン類の不斉水素化は,この有用な光学活性アルコール類を合成する最も直接的で無駄のない反応となります。
同氏の研究業績は世界的に認められており,有機合成化学及び有機金属科学の分野において,今後一層の研究の発展が期待されています。 |
| (工学研究科・工学部) |
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