訃報
名誉教授 牛澤 信人(うしざわのぶと) 氏(享年85歳)
名誉教授 牛澤 信人(うしざわのぶと) 氏(享年85歳)

 名誉教授 牛澤信人氏は,平成19年2月9日肺炎のため北海道大学病院にてご逝去されました。ここに,先生の生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。先生は,大正10年9月28日秋田県横手町に生まれ,昭和18年9月北海道帝国大学工学部鉱山工学科を卒業し,同大学大学院特別研究生第一期修了後,同第二期を昭和21年5月に退学して,直ちに本学工学部講師に就任されました。その後,昭和30年4月に同学部助教授,昭和45年6月教授に昇任し,昭和47年3月まで鉱山工学科鉱山学第一講座を,それ以後,資源開発工学科応用地質学講座を担任されました。この間,教育研究を通して同講座の充実に努め,さらに資源開発工学科の発展に貢献されて,昭和60年3月停年により退職されました。同年4月には北海道大学名誉教授の称号が授与されています。
 先生は,本学に奉職以来39年の永きにわたって,工学部においては地質学,鉱床学,土木地質学,資源論,鉱物学および岩石学などを,大学院工学研究科においては,応用地質学特論,資源開発工学特論などを担当され,鉱山地質学と土木地質学の分野における技術者,研究者の育成に尽力されました。また,本学文学部および土木専門部の講師や室蘭工業大学の非常勤講師などを併任し,本学部以外の学生の教育にも尽力されました。
 研究面では,金属および非金属鉱床の性状とその成因,鉱石鉱物に関する研究,そして岩盤の土木地質学的研究ならびに地下水の電気探査に関する研究に従事されました。これらの研究のうち,鉱床学と選鉱学との境界領域に関する研究で顕著な業績をあげられ,昭和37年3月,「層状含銅硫化鉱の鉱質,とくに単体分離に関する研究」と題する論文により,工学博士の学位を授与されています。
 応用地質学講座担任後は,金,銀,銅,鉛,亜鉛などの有用鉱物の賦存状態についての鉱山地質学の研究,また火山灰層や軟弱地盤の地質学的特性に関する土木地質学の研究,さらに石炭・石油・地熱エネルギーおよび鉱物に関する資源論,そして科学技術史の中での鉱業の位置づけや将来のあり方に関しての研究など,広い分野にわたる応用地質学の研究に取り組んでこられました。とくに,鉱山地質学の研究では,浅熱水性銅・鉛・亜鉛鉱床における銀の存在状態や鉱床母岩の変質と粘土鉱物などに関する研究を精力的に推進され,その研究成果は国内外で高い評価を受けられました。また,水銀・ニッケル・コバルト・マンガン・重晶石などの北海道に特徴的に産する鉱石の研究により北海道の鉱業の振興に貢献されています。さらに,札幌市近郊の三角山・手稲・西野における岩石の特性や地下水に関する調査研究および石狩川の砂利資源に関する調査研究に従事され,地域の問題や技術的問題を解決する面でも功績を残しておられます。また,北海道の炭鉱・金属鉱山の鉱業の歴史について,その近代技術史上における役割と意義などを鉱山地質学と鉱山技術の両面から研究され,わが国の鉱業史研究のなかで先駆的な貢献をされています。
 学部内において工学部企画委員会,大学院制度委員会,紀要委員会の委員などを歴任され,大学の管理運営に参画されました。
 学外においては,日本鉱業会の評議員,北海道支部長・常議員,また北海道鉱山学会の役員などを歴任され,学会の発展のために寄与されました。さらに,北海道鉱業振興委員会委員,公害等調整委員会委員,長流川水質汚濁対策協議会専門委員を務められるなど,豊富な経験を生かして北海道の科学技術の発展に尽くされました。
 牛澤先生のこのようなご業績に対し,平成9年勲三等旭日中綬章が授与されました。ここに謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

(工学研究科・工学部)


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