先端生命科学研究院五十嵐靖之教授及び名誉教授 野口 徹氏が北海道科学技術賞を受賞されました。
この賞は,科学技術の研究あるいは実践活動を通じて,本道産業の振興,道民生活の向上に寄与された個人又は団体等の功績を讃え,知事表彰として贈呈されるものです。
授賞式は,3月19日(月)に行われました。
先端生命科学研究院 五十嵐靖之教授が,「スフィンゴ脂質の先駆的研究および生命科学研究の北海道拠点形成への貢献」の功績により,北海道科学技術賞を受賞されました。
同氏の功績と略歴を紹介します。 世界のバイオ研究者のほとんどが,病気などのメカニズムは遺伝子とタンパク質が決めていると考え,ゲノム(遺伝子)及びポストゲノム(タンパク質)の研究に携わっているなか,同氏はスフィンゴ脂質に焦点を当て,この物質から生成され,血小板中に蓄積されるスフィンゴシン1−リン酸(S1P)が,刺激等により血液中に放出されることを世界で初めて発見しました。
また,このS1Pが新規の生理活性因子として,細胞同士の結合機能や情報伝達物質として重要な役割を果たしていることなど,多くの生理機能に関わっていることも明らかにしました。
これらの研究により,創薬や機能性食品の開発につなげられたことは,次世代ポストゲノム研究の一翼を担うものとして高く評価されるものです。
さらに同氏は,北海道を生命科学研究の拠点とすべく研究インフラの整備やプロジェクトの立案,研究者ネットワークの形成に貢献し,北海道におけるバイオ産業の活性化を目指すとともに,全国に先駆けて,新しい生命科学教育を目指す「生命科学研究院・先端生命科学研究院」の設立に尽力し,現在,研究院長としてその重責を担っています。
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(略 歴) |
昭和44年3月 |
東京大学理学部生物学科卒業 |
昭和50年3月 |
東京大学大学院博士課程修了(理学博士) |
昭和50年4月 |
群馬大学医学部助手 |
昭和61年10月 |
グルノーブル原子力研究所客員研究員 |
昭和63年4月 |
バイオメンブレン研究所部長 |
平成元年4月 |
ワシントン大学助教授 |
平成5年4月 |
ワシントン大学准教授 |
平成9年4月 |
フレッド・ハッチンソン研究所客員教授 |
平成10年3月 |
北海道大学薬学部教授 |
平成10年4月 |
北海道大学大学院薬学研究科教授に配置換 |
平成18年4月 |
北海道大学大学院先端生命科学研究院教授に配置換 |
〃 |
北海道大学大学院生命科学院長 |
〃 |
北海道大学大学院先端生命科学研究院長 |
〃 |
北海道大学大学院先端生命科学研究院附属次世代ポストゲノム研究センター長 |
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授賞式での五十嵐靖之教授 |
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(生命科学院・先端生命科学研究院)
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本学名誉教授 野口徹氏は,「鋳造工学における新技術開発と地域産業育成への貢献」により,北海道科学技術賞を受賞されました。
同氏は,材料学に関する研究に携わり,鋳造工学,材料強度,破損解析の分野で顕著な成果を挙げられました。特に,従来困難とされていた鋳造材料と鋼との異種材料接合を,鋳造工程で一度に行う「鋳造同時接合法」の理論を確立した功績は高く評価されています。また,この技術を大型トラックの車軸ハウジングへ適用することに世界で初めて成功し,製造工程の大幅な合理化と省エネルギー化を達成しました。この技術は平成16年度大河内賞技術賞を受賞しています。鋳造材料及び材料強度に関する論文及び解説は100編以上におよび,平成15年には日本鋳造工学会の最高学術賞である飯高賞を受賞されました。
以上の研究のほか,材料学と機械工学を融合した新たな破損解析法を確立し,これが労働基準局,警察,裁判所等の公的機関及び民間企業から依頼された機械・構造物の破損事故原因調査に応用され,これまでに150件以上にわたる設計改善の提案を行いました。
また,(財)道央テクノポリス理事,(財)道央産業技術総合振興機構評議員等を歴任し,材料学の立場から北海道の製造業の振興に尽力されました。さらに学会活動では,日本材料学会理事,同会北海道支部長をはじめ,日本機械学会,日本鋳造工学会,日本溶接学会,日本複合材料学会の要職を歴任し,これらを通じて北海道内外の材料学の発展に貢献されました。このように,同氏は「北海道科学技術賞」の受賞に相応しいご活躍をなされました。 |
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(略 歴) |
昭和43年3月 |
北海道大学大学院工学研究科修士課程修了 |
昭和43年4月 |
北海道大学工学部講師 |
昭和45年10月 |
北海道大学工学部助教授 |
平成元年4月 |
北海道大学工学部教授 |
平成9年4月 |
北海道大学大学院工学研究科教授 |
平成17年4月 |
工学系教育研究センター長 |
野口徹名誉教授 |
平成19年4月 |
北海道大学名誉教授 |
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(工学研究科・工学部)
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